1406話・まるで笑劇の2人
刹那な章III・政略結婚(22)も更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
ホウジーレンは土下座したままで愕然としていた。
何故なら目の前に居る絶世の美女が、南方の強国である永劫の王国の聖女王だったからだ。
『何て事だ…只者では無いと思っていたが、まさか聖女王だったとは』
自分の無礼な振る舞いに、今更ではあるが後悔するばかりだ。
そんなホウジーレンを前に、ディーイーは溜息をつく。
「はぁ……だから嫌だったのよ。そんなに平伏されては何も話が進まないでしょ」
「で、ですが…私は聖女陛下に無理難題を押し付け、更には造反の収拾まで…」
これでは本当に話が出来ないと思い、仕方無くディーイーは権威を振るう事にした。
「だから、もう良いって! さぁ顔を上げて椅子に座りなさい」
高位の存在に命令されれば従わざるを得ない…それが封建制であり、権威主義社会の性だ。
故に渋々とホウジーレンは立ち上がり席に着いた。
『これで真面な話し合いができれば良いが…』
ディーイーも椅子に座ると、早々に本題を切り出す。
「さて、私に何を期待していたのかしら?」
「……」
萎縮してしまったのか、少し俯いたままで沈黙するホウジーレン。
『やれやれ…これでも駄目か』
そんなに聖女王とは恐れられているのか?…とディーイーは驚くばかりだ。
そして苛立ちが爆発してしまう。
「もうっ…そんなのゴネてるのと変わらないじゃない! シャキッとしろ! シャキッと!!」
このディーイーの怒号は可愛らしい声から発せらる物でしかなく、大して威圧感は無い。
それでも萎縮していたホウジーレンには効果は有ったようだ。
「は、はいぃ!!!」
と返事をすると背筋を正し、真っ直ぐにディーイーを見つめた。
これにディーイーは、威圧的に為らないよう努めて尋ねる。
「じゃあ先程の問いだけど、ちゃんと答えてくれるかしら?」
しかしながら又もや上手く行かない。
今度はディーイーを直視した所為か、その美貌にホウジーレンは見惚れる始末。
「………」
「駄目だこりゃ…」
もう諦めたディーイーは、目の前に並べられた豪勢な食事にありつく事にした。
こうして勝手にディーイーが食事を続ける事10分。
漸くホウジーレンは我に返るのだった。
「再三申し訳ありません!」
「もう謝罪は良いから、早く私の質問に答えてくれる?」
「は、はい…。この島は龍国に属しますが、実際の所は辺境の一領土であり、龍国の支援を全く受けられない状況なのです」
ホウジーレンの話に因ると、本国の龍国とは、東方と大差ない距離が有るらしい。
故に近年は貿易中継地として発展した背景がある。
その反面、海上貿易は発展すればする程、海賊などの外敵に晒されてしまう。
炎龍の存在が無ければ、今ごろ火炎島は海賊に蹂躙されていたとの事だ。
「つまり、何が言いたいの?」
「その…龍国の庇護を得られないなら、自前で何とかするしか有りません。ですから"他国"の協力を得ようと考えていたのです」
「え…もしや、他国って東方の事?!」
頷くホウジーレン。
「左様です。北方四国は牽制し合っていますから、そもそも助けを求める以前の問題なのです。そうなると…」
「消去法で東方が一番の隣国な訳か…」
一応の筋は通っているが、ディーイーは一点だけ腑に落ちない。
「ん…? 待てよ…何で龍国の支援を受けられないんだ?」
「それは本国が半内乱状態にあるからです。ですから辺境の火炎島に、わざわざ武力支援等をする余力は無いのでしょう」
「え…な、内乱?!」
これには驚いてしまうディーイー。
元聖女の使徒だったガリーは、この事に全く言及しなかったからだ。
『う〜ん…知らなかったのか、或いは敢えて私に言わなかったのか…』
どちらにしろ今は確かめる術も無いし、何より問題は其処では無い。
結局、火炎島から助けを求められる立場になる…そこが問題なのだ。
『東方のペクーシス連合王国が永劫の王国の属国と知ったら、またホウジーレン殿は卒倒するかもな…』
それでも黙っている訳にはいかない…どうせ後から露見するのだから。
「ホウジーレン殿…落ち着いて聞いて欲しいのだが、ペクーシス連合王国は我が国の属国なのだよ」
「え……今、何と仰いましたか?」
「だから、ペクーシスは私の傘下なの」
「えぇぇっ!??」
再び椅子をひっくり返したホウジーレンだが、今度は自分も背後に倒れてしまった。
「ちょっ…ホウジーレン殿!? 大丈夫か?!」
「だ、大丈夫です…ご心配無く」
そう返したホウジーレンは、テーブルの端を掴んで起き上がり続けた。
「只、これには誰でも驚いて当然かと思います。と言うか…その話は未だ公にされていないのでは?」
「う、うん…私が家出した時点では公にしてなかったかな。でも武國を傘下にするより、もっと前から東方諸国は属国なのだけどね…」
正直、全く漏れていない事がディーイーは意外に感じる。
それだけグラキエースが敷いた箝口令の効果か、若しくはヘイス大総督の手腕の成せる業なのかも知れない。
「今…何と…?」
真面目な表情で訊き返すホウジーレンに、ディーイーは首を傾げた。
「ん? 家出した時点?」
「いえ…その後です」
「武國の事?」
「武國が…永劫の王国の傘下に加わったのですか?!」
「う、うん……ひょっとして知らなかった?」
「はい……東方、月の国、それにペクーシス連合……これだけでも大陸最大の領土を誇りますよ。なのに武國まで領土に加えるなんて」
そう返したホウジーレンは頭を抱えた。
「え? な、何? どうしたの?!」
「どうしたの…じゃ有りません。大陸最大の国家…その王が単身で旅をしているなんて、何か有ったら如何為さるつもりなのですか」
そこまで言って少し思考すると、眉間にシワを寄せて続ける。
「いや…実際に大怪我をされましたでしょう。貴女は御身の重要性を、もっと認識するべきです!」
「えぇぇ?!」
『わ、私…怒られてるの?!』
先程とは真逆の立場になり、ディーイーは困惑を隠せないのであった。
楽しんで頂けたでしょうか?
もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。
続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。
また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。
なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。
〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




