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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1405話・執拗なホウジーレン

刹那な章III・政略結婚(22)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

「貴女の正体を教えて欲しい」



などど真っ直ぐにホウジーレンから告げられ、ディーイーは逡巡した。

『う〜ん…出来れば私が居た痕跡を残したくは無いのだけど』



暫く沈黙が続き、焦れたのかホウジーレンが切り出してくる。

「貴女の正体を絶対に他言はしない」



その様子から、ディーイーは切実な願いと期待を垣間見た。

『こやつ…私が相応の権威者だと見込んでいるな』

そうなると余計に面倒が増える事になる。

「はぁ……私にも事情が有ってね。残念だが素性は明かせない」



「まさか…国を追われているのか?!」

ホウジーレンはギョッとした。

ディーイー程の者が追われる…それが事実ならば、大元が相当に強大なのは間違いないからだ。



「いや…そうじゃ無い。まぁ端的に言えば家出中で、身内に見つかりたくないんだよ」



「家出……」

まさかの返答に、半ば唖然とするホウジーレン。



『そんな反応になるわよね…』

呆れられているのが分かり、ディーイーは恥ずかしくなってしまう。

「と、兎に角、足が付く様な事はしたくないの」



「ふむ…ならば尚の事、貴女が此処に居た事実を隠す必要があるのでは?」



「何が言いたい?」

『むむむ…何だか雲行きが…』



「貴女が全て打ち明けてくれれば、私を含めた島総出で協力すると言っているのだ」



『この男…』

中々にしたたかだとディーイーは感心する。


つまりホウジーレンは、自分との強い繋がりを確保したいのだろう。

また仮に跳ね除ければ、ディーイーの情報を公に晒すと暗に告げているに等しかった。



「どうだろうか? 決して悪いようにはしない」

執拗な問いかけをホウジーレンは続ける。

この様子から一歩も退かない強い意志が窺えた。



『一体何を企んでいるのやら…』

ここまで自分に固執する理由が、ディーイーには全く分からない。

「例えばだ…私が何者なのか知れて、ホウジーレン殿は如何するつもりなのだ?」



「それは……」

妙に言い淀む。



「ホウジーレン殿…貴方は私の力を当てにしているのか? それとも私の"立場"を見透かして、それを当てにしているのか?」



率直すぎるディーイーの問い…これにホウジーレンは動揺した。

「気を悪くしないで欲しい。私は只……」



「只…なに?」



鋭い眼差しを向けられ、流石のホウジーレンも堪え切れなくなる。

「す、済まない……貴女の言う通り、貴女の力と地位に目が眩んでしまった」



「ほぅ……目が眩んだと…面白い事を言うな。私は自分が何者か語った覚えは無いが?」



「そ、それは……私が勝手に勘繰っただけだ。ディーイー殿が一廉の存在なのは間違いない、ならば相応の地位に在るのも間違い無いと思ったのだ」



「成程…勘繰った私の素性に目が眩んだと。だが私の問いに対して答えになっていないな」



今度こそ観念したのか、ホウジーレンは頭を下げて告げた。

「申し訳無い! 私は貴女の力に救われた…なのに烏滸がましい申し入れだとは分かっている!」



「はぁ……だから何なのよ。回りくどい言い方は止めて欲しいわね」



「う、うむ……もはや火炎島には神獣の加護は無く、この状況で外敵に狙われれば大きな被害が出てしまう。だからこそ貴女の権威に縋りたいのだ」



突拍子も無い事を言われ、ディーイーは目が点になった。

「へ…? ホウジーレン殿…それは物凄く道理が通ってないと思うけど?」



「分かっている!! それでも私は火炎島の統治者として、領民を守る為に手段を選んで居られないのだ! 何卒、理解して頂きたい!」

そう答えたホウジーレンは、血が出るのではないかと思う程にテーブルへ額を打ち付けた。



「ちょっ…頭を下げたからって、どうにかなる物でも無いでしょ。そもそも私に権威が有るって確定もしていないのに、へりくだるだけ無駄と思わないの?」



「思わない! 貴女は只者では無く、一国の王でも私は驚きはしない!!」

自信満々に返すホウジーレン。

もう此処まで来ると、勢いしか無いと言わんばかりだ。



ディーイーは深く溜息をついた。

『やれやれ……拒否しても執拗に付き纏ってきそうだな』


これも中途半端に結んだ因果が原因であり、こうなる事が嫌なら早々に島を離れれば良かったのだ。

要するに自分が蒔いた種であり、また乗り掛かった舟と言う訳だ。

「後悔しても知らないからね」



「今更になって後悔などしない。それよりも貴女との繋がりを失う事に、きっと後悔するだろう」



『自信満々だな…こいつ』

少し辟易へきえきして来たディーイー。

正直、頼られる事には慣れているが、こんな状況では初めてに思えた。

その所為でディーイー自身も困惑し、少し疲れてしまっていた。


そうなると人は自暴自棄…もとい適当になるものである。

「はいはい、そうですか。じゃぁ私が何者か言うわよ?」



「う、うむ!」

固唾を飲むホウジーレン。



「私は南方に拠点を置く軍事国家、永劫の王国アイオーン・ヴァスリオの王なの」



「……。え…?」

ホウジーレンは訊き返した。



「だから私はプリームス。他国からは聖女王なんて呼ばれてるわね…あんまり嬉しく無いけど」



直後、ガターン…と凄い音がした。

ホウジーレンが急に立ち上がり、座っていた椅子が勢いよく後ろへ倒れたのである。



「ホウジーレン殿? 大丈夫?」



「え? あ……その……だ、大丈夫です」

そうボンヤリと答えた後、ホウジーレンは急に我に返って土下座をした。

「こ、これまでの非礼、真に申し訳御座いませんでした!」

しかしながらテーブルに隠れて、その姿は全くディーイーには見えない。



そんな彼の傍へ近付き、ディーイーは苦笑いを浮かべて告げる。

「だから言ったでしょ……後悔するかも知れないって。と言うか、私が聖女王だと信じるの?」



「勿論信じますとも! その噂にたがわぬ美しさ、そして超絶的な武力と魔法力…これを目にして信じられぬ筈が有りません!」

などと床に額を付けたままホウジーレンは答えた。



『あ~あ……完全に委縮してしまったわね…』

ディーイー自身、自国は南方の辺境国としか認識していなかった。

それだけに北方まで国名が轟いていた事に驚きを隠せない。

また此処から真面な話が出来るのか、心配で仕方ないのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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