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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1397話・降臨祭‐逆心(2)

刹那な章III・政略結婚(20)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

元四天神獣の炎龍ロンヤンの攻撃がホウジーレンを襲った。

それは並みの武人では避ける事も、また防ぐ事も叶わない強烈な物だ。

何故ならロンヤンの全長は30mに及び、その四肢…更には尻尾と咬み付きの攻撃は余りにも大きく、間合いを取り損ねれば一瞬で肉塊と化すからだ。



しかしホウジーレンは城壁の上を飛び回り、ロンヤンの攻撃を巧みに躱した。



これに造反者イーリュウは焦れた。

「ええい! ロンヤンよ、炎で焼き尽くしてしまえ!!」



その命令に従ったのか、頭を引き上げ息を吸い込むロンヤン。



「…!!」

『不味い!!』

只の竜のブレスならいざ知れず、古龍級以上の存在にブレスを浴びさせられれば、人間など一瞬で消し炭にされてしまう。

しかも相手は”炎龍”なのだ…その威力や想像を絶する物だろう。


加えて足場の城壁は崩壊寸前にあった。

それはロンヤンの攻撃を躱し続けた事で、足場だった場所を所構わず破壊された所為だ。


つまり広範囲に放射されるブレスを、ホウジーレンが回避する場所も手段も無くなっていたのだった。

『おのれ…もはや此処までか』



凄まじい火炎ブレスがホウジーレンに直撃した。



「フッ…見事な動きだったが所詮は人間、最後は呆気なかったな」

踵を返し掛けた時、イーリュウは目を見張った。

ロンヤンの放射したブレスが、途中からホウジーレンの居た場所を前に拡散したのだ。

「なっ?!」


そしてイーリュウは更に驚愕する事になる。

何とロンヤンに匹敵する強大な何かが、ホウジーレンの居た場所に出現したからだ。



「もう手段は選ばぬ。ロンヤンを殺し、逆賊全てを消し炭にしてやろう」

そう告げた声は、その巨大な何かから発せられていた。



「ま…まさか……その姿…ホウジーレン領督なのか?!」

イーリュウは半ば呆然と呟く。


その巨大な存在は明かに龍だった。

それもロンヤンと同じく赤い鱗を纏い、イーリュウの目には神獣と大差無い”炎龍”に見えた。



イーリュウが呆然としている間に、龍化したホウジーレンの頭突きがロンヤンの胸に直撃する。

その威力や相当な物で、足場の城壁は完全に崩れホウジーレン諸共にロンヤンは落下した。



「くっ!!」

イーリュウは急ぎ登り塔を抜け、隣の城壁へ移動する。

ここに居ては巻き添えを食い、こちらが命を落として兼ねないからだ。

幸い2体の龍は落下した為、敢えて城壁を攻撃されない限り此処なら安全と考えていた。


だがホウジーレンの龍化を未だに信じれず、困惑するばかりだ。

見たところロンヤンと大差無い膂力を持つように思える。

加えて暴走し自我を消失したロンヤンでは、人間の思考を持ったホウジーレンに対して不利なのは明らかだ。


『これは不味いやも知れぬ…』

確実に龍化したホウジーレンを倒すには、ロンヤンへ細かな指示を出すしか無いだろう。



兎に角イーリュウは、見晴らしの良い場所への移動を試みた。

これは危険な行為だが、ロンヤンが制圧されては何もかもが御破産なのだ。


しかし予想外の展開にイーリュウは足を止める事になる。

ホウジーレンが優勢かと思いきや、実際はロンヤンが押していたのだ。

それは巨大から繰り出される物理的な攻撃だけで無く、火炎ブレスと龍魔法を駆使したもので、とても暴走した龍とは思えない。


「これが…神獣が持つ本来の力なのか?!」

イーリュウは驚愕と同時に、強大な力を得た喜びに震えた。


"元"とは言え、人類の力を遥かに凌ぐ神獣を操れる…果たして古今東西で、これを可能にした者が居るだろうか?

答えは…否だ。

「フフフッ……ハハハッ! これならば火炎島だけ無く、本国の外様領も手に入れられるぞ!」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






一方、海上の小舟に乗るディーイー等は固唾を飲んでいた。

降臨祭の佳境をディーイーの魔法に因り観覧していたのだが、暴走したロンヤンの来襲と言う"まさか"の事態を直視したからだ。



映写板に映し出された惨状に、ハクメイは困惑し半ば言葉を失う。

「そんな……」


また暴走したロンヤンも然る事乍ら、父親ホウジーレンが龍に変身したようにも見え戸惑うばかりだ。

『お父様が…龍に…??!』



しかしディーイーは違っていた。

この状況から全てに合点がいったのだ。

『成程…私を無理に引き止めなかったのは、ロンヤンの暴走に対処する"奥の手"が有ったからか』


それでも多少は驚いていた。

人が龍に…しかも神獣級の古龍に変化するなど、見た事が無かった為だ。


『だが同じ舞台に立っただけで、互角以上に戦えるかは別か…』

恐らくホウジーレンの龍化は付け焼き刃なのだろう。

故に初めの不意打ち以降は、完全にロンヤンが優勢に見えた。



「領督閣下が押されていますね…」

船頭役をしていたシンが冷静な口調で呟いた。



「…!? シン…貴女は知っていたの?!」

余りにも冷静なシンに、ハクメイは詰め寄るように問うた。



「……はい。姫様が生まれた際にホウジーレン様から貴女を託され、全てを打ち明けられました」



「打ち明けた? 何を?!」



シンは諦めた様子で溜息をつき、居住まいを正して話し始めた。

「火炎島領の開闢かいびゃくから、この島の繁栄の対価としてロン家は炎龍ロンヤンに仕えて来ました。その対価の中には、いずれ来るで有ろう暴走の処理も含まれていたのです」



「意味が分からない! それと御父様が龍に成るのと何が関係するの?!」



「多分…ロン家は代々、龍の因子を体へ取り込んだのでしょう。或いはロンヤンの体組織の一部を体へ移植した…」



「はい…ディーイー様の仰る通りです。ですが一度も龍化は成功しなかったのです。ホウジーレン様を除いて…」



事実を前にしても、それが余りに現実離れしていれば受け入れ難くなる。

それが15歳の少女なら尚更だった。

「信じられない…そんな事…」



『自分自身にも龍の因子が存在する事にもなるのだら、それは衝撃よね…』

遠回しに人では無く龍だと告げられたに等しい…そんなハクメイをディーイーはソッと抱きしめた。

「ハクメイ……」



ディーイーの心配を他所に、ハクメイはズレた疑問を口にする。

「なら私は大事な龍の後継だった筈よ。どうして私を蔑ろにしたの?」



「え……自分が龍に成るかも知れないのは怖くないの?!」



「それは驚きましたけど…もし龍に成れるなら、力で御姉様の役に立てるじゃないですか!」

ディーイーの問いに、ハクメイは然も大した事の無い様に答えたのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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