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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1391話・神獣の祝福と加護

刹那な章III・政略結婚(19)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

強硬手段に出たロンヤンを、取り敢えず返り討ち…もとい大人しくさせたディーイー。

しかし自分を害そうとしたロンヤンへ、如何にして落とし前をつけさせるかが問題だ。

『う~む…このまま許しては増長しそうだしな。どうしたものか…』



するとロンヤンが謝罪をし始めた。

「ディーイーよ…すまなかった。他者の意思を蔑ろにし、強要しようとした余の遣り様は倫理に反する行為だ。どうか許して欲しい」



「……」

殊勝な態度のロンヤンに、ディーイーは半ば呆気に取られる。

『龍が人の倫理に配慮するとは…』


だが考えように因っては当然なのかも知れない。

ロンヤンは自然界に生息する龍では無く、人へ加護を施す神獣なのだ。

故に倫理や信義を重んじ、人に対して配慮するのだろう。



反応が無いディーイーを見て、ロンヤンは不安そうに尋ねた。

「やはり…許して貰えぬか?」



「え…? あ、いや…勿論その謝罪は受け入れよう。だだ意外に思っただけだ」



「意外? 余の態度がか?」



「うん。まるで人と変わらないと思ってね」



「……そうか。」



踵を返すディーイー。



「何処へ?」



「自分の部屋に戻るよ。あ〜それから、さっきの話は保留にしておくわ。未来なんて誰にも分からないしね」



そのディーイーの言葉からロンヤンは希望を見出した。

「そうか…それで十分だ、恩に着る」



こうしてディーイーは来た道を戻るが、その最中に色々と疑問が浮かぶ。

その最たる物は、古龍種であり神獣であるロンヤンの存在だ。

何故なら余りにも人間のようで、とても"違う生き物"とは思えないからである。


『以前の世界で神獣級の存在は幾つか見たけど、明らかにロンヤンは異質だわ…』

この世界…特に北方の神獣だからかも知れないが、いまいち釈然としない。


また守護神獣を引退して隠居するのも面白く、更に"後始末"が剣聖の役割だったのだから、実に興味深い事ばかりだ。


『千年以上の歴史が有るようだし、一体何者が作り出した機構なのか…』

神か、又は神に匹敵する頂上の存在か…或いは…。


「いや…今は余計な事は考えずに居よう」

思考に耽ってしまいそうになり、直ぐにディーイーは頭を振って払拭した。

あれこれと首を突っ込むのは悪い癖だ。

そうして因果を複雑にし、結局は自分の首を締めてしまうのだから。






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






ディーイーが自室に戻ると、ハクメイと侍女のシンが出迎えた。

「お姉様! どちらに行かれてたのですか?」

「ディーイー様…せめて書き置きか、言伝ことづてでもして下さいまし」



2人から注意され、ディーイーはシュン…と小さくなった。

「そんな2人して詰め寄らなくても…」



「私の気持ちにもなって下さい。お姉様に万が一の事が有ったら私は…」

と言って半べそ状態になるハクメイ。

どうやら勝手に出歩いた所為で、随分と心配をかけたようだ。



「あぅぅ…ごめんよ、ハクメイ。次からはシンさんの言うようにするから」

ディーイーは慌てて慰める事に。



「じゃぁ一緒にお祭りに行ってくれますか?」



「へ…? お祭り? 何の事?!」



ハクメイは「あっ…」と失念していたとばかりに声を漏らす。



ここでシンが透かさず端的に言った。

「今夜から降臨祭なのです…そう言えばお伝えしていませんでしたね」



「降臨祭? あ…ひょっとして健国際みたいな感じかな?」



「火炎島は国では無く龍国の辺境領土ですから、なので降臨祭です。因みに降臨は炎龍ロンヤンが、この島に降り立った事が起源ですね」

今度は補足するように説明するシン。

捲し立てず、分かり易く順序立てる所は流石である。



「成程…ロンヤンが島に来た祭りか、」



そんなディーイーの呟きに、ハクメイが不思議そうな表情を浮かべた。

「まるで炎龍様と知り合いみたいな言い回しですね」



「え? まさか…そんな訳無いでしょ」

先ほどロンヤンと会ったばかりなので、うっかり慌てそうになるディーイー。

ボロが出る前に逆に話を振る事にした。

「え〜と…ハクメイは炎龍ロンヤンに会った事があるの?」



「私ですか? 確か…物心が付く前に炎龍様と直に会って、祝福を受けている筈かと」

ハクメイ曰く島の人間は、皆生まれた年にロンヤンから祝福を受けるらしい。

因みに祝福とは、直に対面して加護を施す事を指す。



「それって無茶苦茶に手間が掛からない? 子供が生まれる度に加護を施す儀式をするんでしょ?」



ディーイーの問いに、ハクメイは手を小さく横に振った。

「いえいえ! その年の初夏と年の瀬に、1回ずつ纏めて祝福の儀式を行うんです。場所は居城の大広間で催されます」



「へぇ〜〜って、他の四国とかも?」



「え……それは…私には分かり兼ねます…」

答えられなかった自分に落胆したのか、ハクメイは委縮したように小さくなった。



「姫様は箱入り娘ですので、島の外には疎う御座います。ですので私がお答えしましょう」

と直ぐさま割って入るシン。



『今の前振りは要らなかったのでは?』

などと思いつつもディーイーは説明を促した。

「う、うん…じゃあ、どうぞ…」



軽く咳払いをしてシンは説明を始める。

「ご存知かと思いますが…炎龍ロンヤンは元四天神獣で、この島には200年前に降り立ちました。理由は四天を退き晩年を過ごす為です」


そこまで告げたシンは、ディーイーとハクメイを確認して続けた。

勿論、ちゃんと聞いているか確かめたのだ。

「つまり、ロンヤンは全盛期よりも弱体化している訳で、本来なら名簿と血判が有れば、直接会わずとも祝福は事足りるのです」



「ああ〜〜そう言う事か。理解できたよ、シンさん有難う」

平然と納得したディーイーではあるが、内心では驚いていた。

『凄いな…国民全てへ加護を与えるとして、少なく見積もっても数百万人は優に超えるだろ』


普通に考えれば、幾ら神獣でも無理だ。

そうなると何らかの増幅機構で、多分だが神獣の力を補助している可能性が高い。

『面白いな…龍国に着いたら、その辺りも探ってみよう』



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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