1385話・超圧縮火炎爆撃
刹那な章III・政略結婚(17)も更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
「これをディーイー殿が成したのか?」
ホウジーレンは半ば信じられず、傍に立つ絶世の美女へ尋ねた。
何と周囲は擂鉢状に陥没し、東屋は完全に吹き飛んで崩壊していたのだ。
「うん…東屋を壊しちゃって申し訳無い」
と答えるディーイーは、苦笑いを浮かべて少しだけ舌を出す。
この仕草は非常に可愛らしいのだが、現状が現状なだけに違和感が半端ない。
「……」
唖然として硬直するボウジーレン。
「お~い! ホウジーレン殿~~大丈夫?」
「え? あ! あぁ…だ、大丈夫だ」
何とか正気を取り戻したホウジーレンは、徐に立ち上がり周囲を見渡す。
『これが華奢な女人の成せる業??!』
やはり未だに信じ難かった。
それを見透かしたようにディーイーは尋ねる。
「やっぱりまだ信じられない?」
「……頭では理解出来ている。しかし…人間とは心がある生き物だ、その心が納得していないようでね」
「フフッ…人間らしくて良いと思うわよ」
”君は人間らしからぬな”…と言いそうになり、ホウジーレンは咄嗟に堪えた。
『やれやれ……剣聖に比肩するのは嘘では無いようだな』
ふと思う…どうして剣聖を引き合いに出したのか?
「まさか…剣聖と立ち合ったことが有るのか?」
「……さぁ? それはホウジーレン殿の想像に任せるわ。兎に角、私の実力を証明出来たと思うのだけど?」
「ふむ……そうだな。因みにだが…本当に狂気の魔法医師と同等の力を持っているのかね?」
ここまで来たら確かめられる物は確かめた…そうホウジーレンは思えた。
それは詰まるところ怖いもの見たさか、或いは純粋な好奇心だったのかも知れない。
「ん? 見たいの?」
「うむ、確かめられる物ならばだが…」
「はぁ……分かったわ。え~っと、下手に魔法を使うと凄い被害が出てしまうから、そうね……海に何か魔法を撃ち込もうかしら」
ディーイーは岬から海を臨み、仕方なく提案を口にした。
本心で言えば余り見世物として魔法を使いたくはない。
何故なら分かり易く派手な魔法は、そもそもが魔力の調整が難しいからだ。
少しでも注ぐ魔力の調整を失敗すれば過剰に効果を見せ、尚且つ攻撃型の魔法なら大惨事に成り兼ねない。
『う~ん……超次元大渦の時みたいな被害は困るし…』
ここは一番得意な火炎系の魔法が良いだろう。
『熱閃だと地味だしなぁ…やっぱり超圧縮火炎爆撃かな』
これにホウジーレンは頷いた。
「ここは居城の裏手に当たるゆえ、船舶の航行は禁止されている。勿論、漁師なども居ないからな、少し派手でも問題無いだろう」
「そうなの? なら遠慮無く海に打ち込むね」
領督の了承を得たディーイーは、意気揚々と岬の先端へ歩み出た。
そうして徐に右手を天へ翳す。
するとディーイーの頭上に、直径10mは有りそうな巨大な火の玉が出現した。
「っ…!!!」
その圧倒的な存在感と熱量に、ホウジーレンは驚愕し後ずさる。
『なっ?! これ程の火球を無詠唱で発現だと?!』
「海水が緩衝材になるから、多分だけど大丈夫…だと思う」
若干の不安を口にしたディーイーは、掲げた右手の拳を握った。
それと同時に巨大な火球は一瞬にして収縮し、直径1m程までの大きさに変化する。
「い、一体何を?!」
「大火球のまま放っても良いのだけど、こうやって圧縮すると放出速度を高められるの。後は直撃時の破壊力が増すのよ」
『破壊力が増す…だと?!』
既に過剰だと思われる火炎魔法。
そこへ更に一手間加える事が、ホウジーレンには信じられなかった。
「さぁ〜て行くよ! 超圧縮火炎爆撃」
やや気の抜けるようなディーイーの掛け声で、1m大に圧縮された火球が放たれた。
標的はディーイーの立つ岬から、500mほど先の海面だ。
これは万が一を想定した距離である。
幾ら海水が緩衝材になるとは言え、超高熱の火球が着弾すれば水蒸気爆発を起こすのは確実だからだ。
また爆発が如何程なのかが、正直ディーイーにも分からない。
そもそも標的が無く、ただ海に放つなど想定外なのだ。
こうして高速で放たれた超圧縮火炎爆撃は、3秒程度で予想着弾点に直撃した。
火球がシュッと海に吸い込まれ、直後に何も起こらずホウジーレンは眉をひそめた。
「んん?」
『まさか不発か?」
だがディーイーは違った。
直ぐさまホウジーレンの前に立ち叫んだのだ。
「魔力硬度が高過ぎた、耳を塞いで!!」
「…!?」
言われるがままに耳を塞いだ時、凄まじい衝撃がホウジーレンを襲う。
『なっ!?!』
そしてディーイーの脇から見えた彼方の海面は消失し、海底が露出していたのだった。
そう…その尋常ならざる水蒸気爆発が、局地的に海を"割った"のである。
そこから直ぐに爆音が到達…耳を塞いでいなければ、鼓膜を破っていただろう。
「はぁ…やれやれだな。どうも中途半端に調子が良くて、力の加減が儘ならないわね」
ディーイーの呟きを聞き、事態が収まったと認識したホウジーレン。
立ち上がり海を見渡して再び驚愕する羽目に。
「こ、これは…!!」
水蒸気爆発を起こした範囲を囲うように、海が広範囲に渡って凍り付いていたのだ。
「いやぁ〜〜あのまま放置したら津波が起きちゃうから、咄嗟に海を氷で固めたのよ。でも衝撃波で居城の窓とか吹っ飛んだかも…申し訳ない」
などと言って頭を搔くディーイー。
「か、構わない…見せてくれてと申し出たのは私なのだから」
これが人間の成せる業なのか…とホウジーレンは半ば唖然とする。
「で、私の力を認めてくれるのかしら?」
「…!」
『そうだ…ハクメイを託す為に…』
試していた事をホウジーレンは思い出す。
また、それが烏滸がましい行為だった事を自覚した。
「これ程の実力…正に狂気の魔法医師に匹敵し、武は剣聖に比肩するだろう。疑ってしまって申し訳ない」
「え? ああ〜〜まぁ認めてくれるなら構わないわよ」
これで取り敢えずは一段落したが、この中途半端な惨状は放置出来ない。
これだけ派手にしてしまうと、生態系への悪影響が"非常に"懸念される。
そう思うと少々落ち着かないディーイーであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




