1378話・年長者の役目(2)
刹那な章III・政略結婚(15)も更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
ディーイーに手を引かれたハクメイは、柔らかな布団へ倒れ込む。
そして横を向くと、絶世の美貌が目に飛び込んで来た。
「……」
半ば自失しそうになるのには耐性が付いたが、やはり間近で見ると息を飲んでしまう。
「ハクメイ…貴女が本当に私へ望む事は何?」
余りにも率直な問いに、ハクメイは呆気に取られた。
「……」
そんな少女の頬を撫でながらディーイーは続ける。
「私はね…ハクメイと一緒に居たいと思っているよ」
「え…でも、お姉様には目的が有って、ここを離れなければ為らないでしょう?」
「うん。だから言った筈よ…ハクメイ次第だって」
「…!」
その言葉で漸くハクメイは理解に至る。
自分を求めるなら、この地を捨てよ…そうディーイーが暗に告げていると。
それは同時に、未知の世界へ踏み出す覚悟を問うてもいた。
「この火炎島に未練や執着が有る? 領督の嫡子としての責任は?」
続け様の問いに、ハクメイは首を横に振った
「以前は嫡子としての責任を抱いていました。でも私の代わりは何とでもなると知って、もうどうでも良くなりました」
「ご両親に対しての想いは? 肉親を捨てる決断が出来るの?」
「血を分けた肉親なのに、親らしい事は何一つして貰えませんでした。今思えば親子と言う関係性だけ…今更になって情なんて湧きませんよ」
ディーイーに問われるにつれ、この島や家族に何の感情も無い事をハクメイは自覚した。
また領督の娘としての立場に、固執していたかも知れない自分に落胆する。
それは父の後を継げば、今より良い状況に変わる…そんな淡い希望を抱いていた事だ。
『この歳になるまで何一つ変わらなかったのに、有り得ないわよね…』
まるで脳裏にかかった霞が、一気に晴れたような感じがした。
「そう…なら私と一緒に旅でもしてみる?」
「え……」
予想もしなかったディーイーの提案に、ハクメイは驚きで固まってしまう。
確かに期待はしていた。
だがそれは、ディーイーが島に残る事だったのだ。
「フフッ…そんなに驚く事かしら? もう島には未練なんて無いのでしょう?」
「確かに…そうですね。でも…」
周囲が許す筈が無い。
自分にはロン家の嫡子として利用する価値があり、特に封臣下家門は黙っていないだろう。
「でも…?」
「お姉様…分かってらっしゃる筈では? そんな簡単に柵からは抜け出せませんよ…」
「ハクメイ次第だって言ったでしょ。貴女が本気なら私は幾らでも力を貸すわ…その意味を良く考えて」
「まさか…」
ハクメイは目を見張った。
聖女王としての強大な力で、自分を救い出そうと言うのか?
「私が何もかも薙ぎ払ってあげるよ…ハクメイが望むならね」
ゾッとするハクメイ。
常人ならば成し得る訳が無い。
しかし超絶的な存在である聖女王は違う…つまり、その言葉が只の冗談では無いと言っているに等しい。
「そ、そんな……私は壊したい訳では無いのです。ただ……」
「現状を変えたい? 抜け出したい?」
「はい……」
「じゃぁ、ここから抜け出す手伝いをしてあげる。もし邪魔をする者が居れば、可能な限り穏便に対処するわ。でも害そうとするなら手段を選ばない……それで構わない?」
「有難う御座います……お姉様……」
嬉しくてハクメイは泣きそうになる。
強大な軍事国家の女王が、自分の為だけに動いてくれる…こんな奇跡のような事があるだろうか?
否……そもそもの邂逅自体が奇跡だったのだ。
「差し当たっては、愚図っちゃったハクメイの機嫌を取らなきゃね」
「え…? それはどう言う意味……」
次の瞬間、ハクメイはディーイーに跨られてビックリする。
「え?! 一体何を?!」
「ハクメイは私とイチャイチャしたいんでしょ?」
「えぇぇぇ?!」
ディーイーの唇が優しくハクメイの首筋に触れた。
「ぁぅぅ……」
抗えずに声だけが漏れるハクメイ。
正直、期待していなかった訳では無かった。
故に何時も妄想していたのである…敬愛する”お姉様”との睦事を。
けれども畏れ多く、また自ら強請るなど淑女として恥ずかしくて為らなかった。
「ほら、嫌なら抵抗する筈なのに、されるがままって…正直に言ってくれれば幾らでも”してあげた”のよ」
余りに率直な言い様をされ、ハクメイは恥ずかしくて両手で顔を覆う。
「うぅぅ…」
『こんなんじゃ下品な女だと思われちゃう』
そんなハクメイの気も知らず、ディーイーは至極ご満悦のノリノリだ。
「ウフフ……可愛いわね。ちゃんと優しくしてあげるから」
『あぁぁ…ぁぁ……私…どうなっちゃうの……』
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真っ裸なディーイーは仰向けになり呆然とする。
可愛がっていた立場が、いつの間にか逆転していた所為だ。
当初は好き放題に弄っていたディーイー。
と言ってもハクメイが気持ち良くなるよう、繊細な配慮は忘れない。
しかし怪我で体力が戻っていない状態では、直ぐにバテてしまう。
これにハクメイは、その機を逃すまいと体勢を入れ替えてきたのだ。
加えて聡く飲み込みが早い為、容易にコツを掴む事に。
そうして結果的に可愛がる筈が、可愛がられる羽目になったのだった。
「お姉様、如何でしたか? 私…上手に出来ましたか?」
隣に横たわるハクメイは、目をキラキラさせながら尋ねる。
因みにディーイーと同じく真っ裸で、睦事前と違い恥ずかしさは微塵も無い。
「え…うん…上手だったよ。ほんとに初めてなの?」
「初めてです…」
ここでハクメイは漸く冷静になったのか、嬉しさ半分、恥ずかしさ半分でモジモジとしながら答えた。
「そ、そうなのね…」
『うは…これは…』
色んな意味で凄い逸材を見つけたと、半ば唖然とするディーイーであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




