1376話・火炎島の闇
刹那な章III・政略結婚(14)も更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
ディーイー…もとい聖女王の宝珠に守って貰う事になったシン。
しかし一つ気になる点が有った。
それは宙に浮く宝珠が、余りにも目立ち過ぎるのだ。
「その…守って頂けるのは有難いのですが、この宝珠が目に見えて浮かんでいるのは…」
言い淀むシンに、ディーイーは小さく笑った。
「フフフッ…まさか、このままな訳無いわ。ちゃんと姿を消せるから心配しないで」
この言葉に反応したのか、4つの宝珠全てが跡形も無く消えてしまう。
「…?!」
「えぇぇ!? 一体どんな仕組みなのですか?!」
驚き過ぎて目を瞬くシンとハクメイ。
『う〜ん…困ったな物質世界の存在力を決して、精霊界へ一時的に存在力を留まらせる…なんて言っても分からないだろうし』
結局、ディーイーの選んだ方法は、難しい事を無理に説明しない…である。
「え〜と…割愛させて…」
これをハクメイは勘繰る始末。
「あ…ひょっとして永劫の王国の秘匿事項なのですね! これだけの魔法技術なら国家機密になるのも納得です!」
「はは…は…ま、まぁそんな感じかな…」
これ以上、ややこしくするのも嫌なので、適当に濁ごすディーイー。
その後、ハクメイが孤立させられる事について、3人で話し合う事にした。
「ハクメイを孤立させる理由が謎だな」
「はい…昔から両親は放任主義でしたから、余り構って貰えませんでした。でも成人してからは、目に見えて孤立するのを実感しています」
そう返すハクメイは、以外にケロリとしている。
「ほほぅ…成人してからか、」
『企てが何にしろ、ハクメイが余り気にして居なくて良かったわ』
すると何か思い当たる節が有るのか、思わせ振りにシンが言った。
「賄賂をバラ撒いているジア家の仕業かと思いますが、目的は意外と単純なものかも知れませんよ」
「単純? シンは何か知ってるの?」
主に問われ、首を横に振るシン。
「いえ…飽く迄も私の憶測です。ですが姫様が孤立して利益を得るのは、ジア家の馬鹿息子かと」
「んん?? どう言う意味?」
嫌悪感を見せながら首を傾げるハクメイ。
自分の私事が、馬鹿息子と繋がる理由が理解出来ない…と言うか、あの男に関与する事に身の毛がよだってしまう。
「馬鹿息子が領督の地位を狙って、姫様との結婚を画策するなら、やはり姫様が孤立するに越した事は無いと思います」
「意味が分からない…」
嫌そうにハクメイは外方を向いた。
「フフフッ…ハクメイは随分とジア・オーフアが嫌いみたいだね」
ディーイーから揶揄い気味に言われ、更にハクメイはムッとした。
「お姉様も分かる筈ですよ! あいつに絡まれたんですから」
「まぁ〜そうね。自分中心に世界が回ってるみたいな奴だったし、あれが好きな人なんて居ないでしょう。それよりもシンさんの意見は一理有るかもね」
シンの考えにディーイーが同調するなら、流石に無下には出来ないハクメイ。
嫌々ながらも真剣に尋ねた。
「奴が得するなんて考えたくも無いですが、お姉様…説明して頂いても宜しいですか?」
「うん…ハクメイと結婚したくても嫌われていたら、そもそもが無理でしょ。ならハクメイを精神的に追い詰めて、誰も助けが無い状態にしてから手を差し伸べる…これなら流石に魔が差しちゃうと思うよ」
「わ、私がオーフアに?! 有り得ません!!」
頑なにハクメイは否定した。
「いや…飽く迄も可能性と仮定の話だから、そんな怒らなくても…」
「怒ってません!!」
「そ、そう?」
『いやいや、怒ってるでしょ。後で機嫌取った方が良さそうね…』
一方シンはと言うと、不機嫌になるハクメイを宥める事無く淡々と話を進める。
「姫様…問題は馬鹿息子だけの画策か、それともジア家当主の思惑も含まれるのかどうかです」
どうやら物事を進めるうえで、主の機嫌云々は余り考慮しない質のようだ。
『なんだか…フェートを思い出すわね』
「フフフッ…」
ディーイーは暫く会っていない身内を思い出す。
そして背丈や容姿は全く違うが、シンとフィートの雰囲気が似ている様に思え笑みが零れた。
「お姉様、何ですか?」
「何か可笑しな事でも…?」
「いや、別に何でも無いです…」
二人に詰め寄られ気圧されるディーイー。
「兎に角、これから姫様を取り巻く環境が、更に悪くなる可能性が有ります。それが私は心配で心配で…」
「シン……」
ディーイーもシンと同じ考えだった。
「うん、私もシンさんと同意見ね。それに馬鹿息子がハクメイに拘らなくなったら…」
これにシンが続く。
「はい…ジア家当主か或いは馬鹿息子が姫様を害して、ロン家の分家から後継者を擁立させるかも知れません」
「えぇぇ?! そんな強硬的な手段を?!」
「何も確証が無い憶測です。でもジア家が領督の地位を狙うなら、御しやすい分家を利用する方が楽なのは明白。最終手段としての可能性は十分に有り得ますよ」
シンの言葉に、ハクメイの表情が蒼白になる。
「そんなの…謀叛だわ…」
頷くディーイー。
「そうね…そもそも封臣家門が主君の地位を狙うのが変なのよ。戦国や動乱の時代でもあるまいし」
「……」
ハクメイは俯いて黙り込んでしまった。
漸く自分の置かれている状況を理解し、そして衝撃を受けてしまったのである。
『まぁ無理も無いわね…両親は当てに為らないし、って…決めつけるのは早計か?』
「今ここで話した事を両親に言ってみたらどう?」
ディーイーの提案に、シンは余り乗り気ではない返事をした。
「そうですね……試す価値は有ります。ですが期待は出来ないかと」
「どうして?」
「領督閣下はジア当主とは親友の間柄でして、とても信用為さっているのです。きっと今の話をすれば気持ちを害されるでしょうから…」
と残念そうにシンは答えた。
「えぇぇ……?!」
『親友しての間柄も利用してるのか?!』
想像以上に用意周到なジア家当主……ここまで来ると相当な執念と闇を感じる。
これには流石のディーイーも呆気に取られるのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




