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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1371話・聖女王の証明

刹那な章III・政略結婚(13)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

「え………」

ハクメイは思考が停止してしまった。

何故なら、ディーイーが南方の軍事大国永劫の王国アイオーン・ヴァスリオの王だと言った為だ。



「お〜い! ハクメイさ〜ん、大丈夫かい?」



少し大きめに声掛けされ、ビクッと我に返るハクメイ。

「は、はい!!」



「本当に大丈夫?」



「は…い……後悔はしませんが、すっごく驚きました…」

未だに信じられないのか、半ば呆然とハクメイは返事をした。



「まぁ、そうだよね…信じられないでしょ?」



「そんな事はありませんよ。噂通り…いえ、その一端を垣間見た感じがします」



『う〜ん…いまいち釈然としていないのかな』

ハクメイの声音から、まだ完全に納得出来ていないように思えた。

なのでディーイーは1つ提案をしてみる。

「じゃぁ何か証明になりそうな事をしてあげる。派手な事じゃ無ければ何でも良いよ」

事実を告げたのに、信用されないのでは此方も納得が行かない。



「え…? 何でもですか?!」



「うん……」

嫌な予感がして少し後悔するディーイー。

『”何でも”は言い過ぎたか…』



するとハクメイは「う~ん…」と熟考してから言った。

「私が噂で聞き及んだのは、聖女王は武も魔術も極地に在ると…ですから、その極地の技を見せて頂けませんか?」



「技か……ここで派手な魔法は使え無いから、武技なら良いよ~」

『と言うか…火炎島からだと永劫の王国アイオーン・ヴァスリオなんて遠い異国なのに、私の事を良く知ってるわね…』

それだけ名を馳せた事になるが、ディーイー(プリームス)としては余り調子に乗っては為らないと思えた。


何事も大きく成れば成る程、羨望以上に妬みが上回る。

そしてそれが危険視と変化し、最終的には敵視へと至るのだ。

だからこそ真実は伏せて、適度に納得の行く”眼に見える事実”のみ公表すれば良い。


『それに力を誇示して己の自尊心を満たすなんて、恥ずかしくて出来ないわ』

強さを他者に知らしめる行為は、謂わば犬が吠えるのと大差ない。

極地に至った自分が今更になって、そんな無様な事が出来る訳も無かった。



これにハクメイは暫く考えた後に告げた。

「……その…ここは御母様の大事な庭園ですので、武技でも威力では無く、技術に特化した技を見せて頂いても?」



「うん、その方が良いよね。誰かが覗き見していたら困るし、見られても分からない技を使うよ」



「え……それでは私も分からないのでは?」



そうハクメイが言うのも当然だが、当人が直に体感すれば話は違う。

ディーイーはニヤリと笑みを浮かべて返した。

「フフッ…じゃぁ私は車椅子から動かないから、ハクメイの好きに攻撃してみて。武器を使っても良いし、素手でも蹴りでも構わないわ」



「えぇぇ…?! 私が動けない御姉様を攻撃するんですか?!」



態とらしく首を傾げて見せるディーイー。

「ん~~? 貴女の聞き及んだ聖女王の力は如何ほどなの? 武の極地って座って動かないと、常人と変わらないのかしら?」



「う……それは…」

ハクメイが噂で耳にした聖女王の武勇は、剣聖を配下に加えた事を起因とする。


北方諸国の頂点に君臨する帝を捨て、西方や南方へ旅立った剣聖。

彼は100年以上もの間、主君に仕える事をしなかった。

その生きた伝説の人物を配下に置く…それ即ち屈服させたに他ならないだろう。


『剣聖は地上最強だわ。その主なら少なくとも…』

同等か、それ以上の武力を誇る筈。

仮に自分が座った剣聖と対峙したなら、一撃どころか触れられる気もしない。

ならば聖女王も…。


ハクメイは意を決した。

「分かりました…では本気でも構いませんか?」



「うん、大丈夫よ。ハクメイが現状で出せる全力で攻撃してみなさい」

と涼しい顔でディーイーは答える。



「はい…」

頷いたハクメイは、ディーイーから3m程の距離を取った。

そして左半身を少し前傾姿勢にする。



『んん…無手でこの構えは』

気配から"八極掌"の構えだと推察するディーイー。

厳密に"この世界の物"としてなら、真八荒拳が正しい。


真八荒拳は無手や武器も扱う武術で、ディーイーが知る範囲でならガリーが使い手だった。

これは直線的な攻撃を主体とするが、非常に速く、また攻撃の威力が尋常でな無い。


『神獣の加護と真八荒拳の威力が合わされば、相当な物になるな…』

下手に受け止めれば、車椅子ごと吹き飛ばされる可能性がある。

それにただ受け止めるだけでは力の証明には為らず、何より面白くない。


『じゃぁ力の扱い方を実践してあげようかしら』

ディーイーは徐に左手を胸元まで上げ、やんわりと人差し指を立てた。



そのディーイーの行動に、ハクメイは挑発だと感じた。

『私の攻撃を指1本で防ぐつもり?!』


だが直ぐにオーフアが小指で制圧された事を思い出す。

『い、いや……侮っては駄目!』

聖女王ディーイー相手に常識は捨てるべきだ。


あの人差し指に全神経を集中させ、相手を車椅子ごと吹き飛ばすつもりで攻撃する。

恐らく”敢えて見せた”指は、こちらの攻撃を誘導させる何かだ。

これへ惑わされず、しかし細心の注意を怠らない。


「行きます!」

そうハクメイが告げた直後、彼女の右足が蹴り出し脚で震脚を起こす。



「お…!」

ガリーにも劣らない速度で突っ込んで来るハクメイに、ディーイーは感嘆の声を漏らす。

『その歳でこの域か…素晴らしい』



両者が至近に迫った時、左前半身(はんみ)だったハクメイの身体が、右前半身となる。

そして慣性に従った右足は、前蹴りの様相を呈した。



『良く鍛錬されて磨かれた技ね…』

増々感心するディーイー。

このハクメイの前蹴りは”攻撃では無い”。

陽動であり、更なる強力な一撃を見舞う為の下準備。



そうするとディーイーが看破した通り、ハクメイの右前蹴りは寸でで踏み下ろされ、凄まじい震脚を伴った。



『フフフッ…これを初見で躱すのは、永劫の騎士(アイオーン・エクェス)でも難しいかもね』

ハクメイが思った以上の強者で、ディーイーの胸中は愉悦に覆われる。


勿論、永劫の騎士(アイオーン・エクェス)が自分の様に座して攻撃を受ける訳が無い。

故に強さの比較で正しくはないが…それでも加護に頼らない、錬成された立派な技と言えた。



「え………??!」

ハクメイは視界に空が映った事へ唖然とする。

確かに自分はディーイーへ、右拳に因る渾身の突きを放った。

なのに何故…?


答えは簡単だ。

恐らく此方の突きを完全に見切られ、躱された挙句に投げられたのだ。

『くっ!! 受け身を!!』

直ぐに状況を把握したハクメイは、身体を捻って見事に両の足で着地した。



「おぉぉ! 流石はハクメイね」



「もうっ! 何が流石ですか!!」

ディーイーから感嘆の声を掛けられるが、態とらしく思えて仕方がないハクメイであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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