1357話・そろそろ月経期間
刹那な章III・政略結婚(9)も更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
少々バタバタしたプリームスだが、問題無く船に乗る事が出来た。
因みに食料などは自前で準備せねば為らない。
旅船側が用意してくれるのは、生活する為の空間と一定の水だけである。
その代わり船賃は、3週間の船旅の割には安い。
いや、格安と言うべきだろう。
理由は貿易貨物の序でに人を運ぶからである。
どうやら元々は豪華客船だったらしく、客室を打ち抜いて拡張し積載空間にしたようだ。
そして打ち抜かれなかった部屋を格安で客へ提供しているのだった。
「思ったより広い部屋だね」
滞在する室内を見回して呟くプリームス。
入って直ぐが居間で、左右の扉の先が寝室になっていたからだ。
「俺はこっちを使う。左側はガリーさんとディーイーさんで使ってくれ」
然も当然のようにリキは言う。
自分達の仲を知られているだけに仕方ないが、プリームスは妙に気恥ずかしい。
「う、うん…分かったよ」
一方、ガリーはと言うと、こちらも然も当然な様子で返す始末だ。
「フフッ…気が利くねリキさんは、」
もはや女としての恥じらいも何も無い。
ふとプリームスは気になった。
同性同士の恋愛や体の関係を、リキは如何に思っているのかと。
「ねぇ、リキさん…私とガリーの関係が嫌じゃないの?」
「えぇぇ…!? これまた繊細な事を急に訊いてくるな…」
半ば呆気に取られるリキ。
「いや…これから長期間を共に行動するからね。仲間が嫌がるなら配慮するのも当然でしょ」
すると少し考えてからリキは答えた。
「ん〜〜別に嫌ではないぞ。南方では知らんが、北方では男色とか割と普通だしな。あんまり偏見は無い」
「おいおい…男色って…」
つい突っ込んでしまうプリームス。
確かに男色も同性の関係ではあるが、自分の性癖と男色を一緒にされては心外だ。
『勘弁して欲しいわ…』
これにガリーが透かさずリキを蹴飛ばす。
「馬鹿言わないで! どうしてここで男色が出てくるのよ!!」
「えぇぇっ!??」
急に尻を蹴り上げられ、困惑するわ痛いわで散々なリキである。
この後、更にガリーから懇懇と説教されてしまうのだった。
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出航して1週間が経った頃、プリームスは下腹部の違和感を覚えた。
『うぅぅ…これは生理か?!』
そろそろとは思っていたが色々と間が悪い。
未だに北方へ向かう船の中であり、メディ.ロギオスの提言を試すには難しい状況だからだ。
その提言とは聖剣の呪いの対応方法である。
この呪いは魔法機構を発現させる事で発症し、魔力を中和して激痛を伴わせる酷いものだ。
下手すれば死に直結する為、プリームスは魔法皆無の生活を強いられていた。
そして対応方法と言うのは、月経期間中に魔力を可能な限り使い切る事が重要らしい。
そうする事で呪いとの"繋がり"を抑えられるとの事だ。
因みに月経時に限っては、呪いは発症しないとロギオスは見解を示している。
『う〜ん…本当に大丈夫なのかな』
稀代の魔法医師である彼の提言は信用に値する。
が、聖剣の呪いが怖いのも事実。
とんでも無く呪いは痛く、本音で言えば恐怖症に近い。
「はぁ…怖がって試さず、後で後悔するのも嫌だしな…」
つい独り言が漏れるプリームス。
「どうしたの? 怖がる? 後悔?」
寝室のベッドでダラダラしていたプリームスへ、ガリーが不思議そうに尋ねた。
時刻は午後の1時。
先ほど2人で食事を終えて、片付けが済んだガリーが戻って来たところだ。
「あ〜〜その…」
話すべきが逡巡するプリームス。
ソッとベッドへ腰を掛けたガリーは、横になっているプリームスの頬へ優しく触れた。
「なに? 俺にも言い難い事?」
船旅が始まって1週間、プリームスとガリーの距離は更に深まっていた。
その所為か今では、互いに恋人のように振る舞っている状態だ。
「う〜ん…私の弱点みたいな物だからね」
態とらしく首を傾げるガリー。
「弱点? 船酔いはするし、体は弱いし…今更1つや2つ弱点が増えて困るの?」
中々に辛辣ない言い様である。
これにはプリームスも反論の余地が無く、自嘲して納得してしまう。
「フフ…確かにそうね」
と言う訳で"聖剣の呪い"は伏せて、偶然受けてしまった呪いだと説明する事にした。
「実はね…」
※
※
※
「ほぇ〜〜そんな呪いが有るんだ? 魔術師にとって致命傷だね…」
一通り説明を聞いたガリーは、心底同情するように言った。
例えるなら冒険者や傭兵が、必需品である剣などの武器が持てないに等しいのだ。
しかも無理に使えば体に激痛が走り、下手をしたら死に至る。
考えただけでもゾッとする話である。
「うん…幸い私には身を守る別の手段が有るし、それに呪いの対処方法も見つかったしね」
「生理の時に魔力を使い切るか……それって一歩間違えればヤバいんじゃない?」
ガリーはプリームスの手を握り、止めて欲しいと暗に訴えた。
今では協力者と言う以前に、もう自分にとって大切な女性となっていたのだ。
そんな存在が命にかかわる事をするなど、見過ごせる筈も無かった。
「魔力枯渇で死ぬ心配をしてるんだね…それなら大丈夫。その辺りの調整は得意だから、ギリギリの所で上手く留めるよ」
『えぇぇ…? 何処からそんな自信が?!』
呆れるガリー。
考えられるとすれば、"そんな経験"を数多くこなしてきた…だろう。
そうで無ければ只の危険予測が出来ない愚か者だ。
「本当に大丈夫だから。でもねぇ…船に乗ってるのが中々に問題で、下手に魔法をブッ放なったら大変な事になるでしょ」
「えぇぇ……心配なのはそこなの?!」
再び呆れてしまうガリー。
『ん…まてよ……』
ブッ放なつ程の魔法とは如何程の物なのか?
この巨大な貨物旅船が、恐らく危険に陥る可能性を言っているのだろうが…俄には信じ難かった。
「え〜と…どんな魔法が使えるの?」
「ん? あぁ〜〜だいたい何でも使えるよ。費用対効果が良いのは…やっぱり禁呪級以上の魔法かなぁ」
「なっ?! 禁呪級以上!??」
そう叫んだ後、ガリーは暫く呆然としてしまうのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




