1353話・ガリーの失脚の訳
刹那な章III・政略結婚(8)も更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
熱射病で動けないディーイーの元へ、リキを連れて来たガリー。
そして"やらかした"と後悔する。
ディーイーは体を冷やす為、下着姿でベッドに横たわっていたからだ。
しかも顔を隠していた仮面まで外している。
『あわわぁっ!! しまった…ディーイーの秘密が!』
ディーイーは素性や容姿を隠したがっていたのに、自分の所為で全てが台無しである。
一方リキはと言うと、ディーイーの扇状的な姿と、その絶世の美貌を目の当たりにして硬直していた。
「……」
これに逸早く気付くディーイー。
『あ〜〜うっかりしてた…』
しかしながら体が思うように動かないので、今更どうしようも無い。
これに慌てたガリーは、直ぐさまプリームスへシーツを被せる。
「ご、こめんよ…気が利かなくって」
単身での冒険者稼業が続いていた為か、他者と共に居る事への配慮が疎かになっていた。
不器用な自分に後悔するばかりだ。
「いや、別に構わないよ…見られて減る物じゃ無いし。それよりリキさん固まっちゃったね…」
「う、うん…まぁ誰でもディーイーの姿を直視して、ああなるのは仕方ないよ。俺も未だにドキドキするし…」
こうしてリキが我に返るのを5分ほど待つ羽目に。
そしてリキの開口一番が、
「…………おぉうっ!? ディーイーさんよ…美人だと思ってたが、想定以上で度肝を抜かれたぞ!!」
これである。
「ハハ…ハ…もう慣れてくれとしか言い様がない」
苦笑するプリームス。
楽観的なプリームスとは違い、ガリーは少しばかり懐疑的だ。
何へかと言うと、プリームスの素顔を見たリキにだ。
「リキさん…ディーイーが絶世の美女だからって、手を出そうなんて思わないでよ。変な事したら俺が許さないから」
本気で慌てるリキ。
「ちょっ! ま、待ってくれ! それは絶対に無い! よく考えてみろよ…素手で岩壁を陥没させるような女に手を出せるか?! 無理に決まってるだろ!」
「ぶはっ! そうだね…か弱い女が好きだもんね、男って…」
思わず吹いてしまうプリームス。
「そう…なら良いのだけど」
少々、ガリーがピリ付いたが、直ぐに和やかな空気になる。
プリームスが根掘り葉掘りと、女性の好みをリキから聞き出そうとしたからだ。
「へぇ〜〜やっぱり男って、お淑やかな女性が好きなんだね。まぁどうでも良いけど」
「おおいっ! 聞いておいて酷いぞディーイーさん! 俺の純情を返せ!」
「純情って…いい歳のオッサンが…」
流石に呆れるプリームス。
そんな2人の遣り取りを見て、ガリーは爆笑する。
「ブハハッ! お腹痛い…」
『やれやれ…十分に和んだし、そろそろかな…』
実は、それとなくリキへ目配せをしていたプリームス。
些細な疑念や諍いで、簡単に協調や協力関係が崩壊する。
そう為らないように、空気だけでも柔らかくしようとしたのだ。
そして敏感に察したリキが応えた寸法である。
「さて、ガリーとリキさんが腕利の仲間を探していた理由…ちゃんと教えて貰えるかな?」
ベッドに横たわり身動き出来ないプリームスだが、その言葉からは妙な威圧感をリキとガリーは感じた。
「お、おう…勿論だ」
「え〜と…どっちから話す?」
「じゃあ、ガリーから詳しく聞かせて」
「うん…前に話した通り、俺は聖女の使徒だった。それで今は失脚して冒険者家業をしてるんだけど…」
ガリーが言うには外様領土に在る迷宮は、難度と危険度の高さで"試練の迷宮"に指定されるらしい。
勿論、この指定をするのは龍国ならば龍王だ。
そして試練の迷宮を閉じる…つまり核を破壊した者は、龍王から莫大な褒賞や地位を与えられる。
また報奨には聖女の使徒への任官も含まれ、これをガリーは狙っているのだった。
「要するに使徒への復帰? 復権か…をしたい訳ね?」
「うん、ディーイーの言う通りだよ」
いまいち理解に苦しむプリームス。
『ふむ…そこまで拘るなら、何で失脚したんだ?』
大事な地位なら、失わないように必死に守る筈だからだ。
仮に自分だったら失った地位や権力など、一切の未練など無い。
その価値観の差がプリームスに不可解さを抱かせた。
「ひょっとして…何で失脚したのか疑問に思ってる?」
このガリーの問いに、リキが反応した。
「それは俺も気になっていた。雷鳴のガリーは聖女の使徒では一番有名だったしな…」
するとガリーは少し気落ちした様子で言った。
「実はね…俺が仕えていた聖女が龍王に反抗して、それが拗れて聖女と俺は失脚したんだ」
「え…マジか?! 知らんかった…」
驚きを隠せないリキ。
「反抗って…一体何をしたの?」
プリームスは不思議に思えた。
王とは民や臣下にとって絶対の存在だ。
それに反抗するなど、余程の事でなければ起きない事態である。
『と言うか逆らって、よく失脚程度で済んだな…』
「聖女が隣の鳳国への工作を拒否した所為だよ。俺も聖女の考えには共感していたし、俺が忠誠を誓ったのは聖女だったから…」
正に一蓮托生。
それ程までにガリーは聖女を慕っていたのだろう。
「成程…で、工作って言うのは、やっぱり他国に迷宮の種を植える事?」
プリームスの問いに、ガリーは歯痒そうに頷いた。
「うん…幾ら国同士の諍いでも、苦しむのは民なんだよ。それに私の仕える聖女は耐えられなかったんだ…」
戦争は外交手段の一つだ。
だが北方4国は、その性質上、従来の戦争形態を実行する事が出来ない。
故に相手領土を減らす工作をせざるを得ないのだろう。
「迷宮が具現化したら、確か周辺地域は汚染されるんだよね。その汚染の所為で神獣の加護が届かなくなる…でも、それだけじゃ無いよね?」
"民が苦しむ"…この言い様にプリームスは疑問を感じたのだ。
神獣の加護が無くなった程度なら、南方や東方などの諸国と変わらないのだから。
「迷宮が具現化して対処が遅れると、迷宮から魔獣が溢れるんだよ。当然、魔獣は周辺の生物や人も襲う。人的な被害は避けられないんだ…」
「不毛過ぎる…」
ガリーの説明を聞き、ついプリームスは本音が漏れるのであった。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




