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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1351話・已む無く武威を示す

刹那な章III・政略結婚(8)も更新しております。

そちらも宜しくお願い致します。

「今のは私自身が気配を消しただけだよ」

などと然も大した事の無いように言うプリームス。



これにガリーとリキは目が点になってしまった。

「「……」」



そして我に返ったガリーはプリームスへ詰め寄る。

「ちょっと待って、意味が分からない! 気配を消したからって、姿まで消えるのは有り得ないよ!」



これにはリキも同意だ。

「そうだぞ! ほんの僅かな時間だったが、姿が消えたように俺は見えた!」



『いや…そんな自信満々に言われてもね、』

苦笑いを禁じ得ないプリームス。

「え〜とね、人間は基本的に視覚頼りだけど、潜在下で色々な感覚を使って物事を認識してるの。特に武人は相手の気配や兆しに敏感だから、それを"逸らして"誤認させるのよ」



「逸らせて誤認…」

半ば信じられない様子のリキ。

だが実際に"見えない"のだから、その通りだと受け入れるしか無かった。


ふと思う…この常軌を逸したディーイーの技量は、人間だけで無く他の生物にも有効なのか?と。

仮に有効ならば、自分にとって相当な価値が有ると事になる。

『これは…とんだ拾い物かもな』



一方、ディーイーの説明を頭で理解出来ても、中々に気持ちでは受け入れ難いガリー。

これ程の技術が有れば、神獣の加護など必要では無くなる。

つまり今までの自分は、無意味な力を磨いていた事になるからだ。


『でも…いくら技術が凄くても、攻撃の威力が弱いなら戦いに勝ち得ない』

一見して華奢過ぎるディーイーに、自分を倒せる威力は出せないと思えた。

「次は"威力"を見せて欲しい」



少し思い詰めた様子のガリーを見て、その心中をプリームスは察した。

『まぁ色んな意味で衝撃かもね…』

「うん、分かった。それでガリーが納得するなら、幾らでも見せてあげるよ」



「本当に良いの?」

躊躇いがちにガリーは訊き返した。



「ん? 何が?」

首を傾げるプリームス。

別段、技を披露して困る事など一切ないのだら。



「いや…俺から見たらディーイーの技は奥義の"それ"だよ。そんな簡単に見せて良い物じゃないでしょ?」



『あぁ〜〜そう言う事か…フフッ。この期に及んで他人の心配なんてねぇ…』

「大丈夫、大丈夫。見ただけで盗まれるなら、皆んな超絶者だよ」

プリームスからすれば初級の初級だ。


しかし、その初級の技を最高練度まで高め、昇華させた物が奥義となる。

小難しく複雑な技など一切不要…結局は単純で端的な技が最強なのだ。


故に常人には至難の業と言える。

難度の高い技こそが奥義だと、勝手に思い込んでいる風潮がある為だ。

何より単純で地味な技を突き詰めようなどど、誰が思うだろうか?

そんな者など居る訳が無い。


居るとすれば、常人では無い思考の持ち主…或いは特異な着眼点の持ち主だけ。

それこそが異常…つまる所、超絶者予備軍なのである。



「そ、そう? なら何か実際に威力の有る技を見せて貰おうかな…」

ガリーは半ば半信半疑で言った。



「じゃあ…この辺りの岩で良いか」

そう呟きながらプリームスが選んだのは、砂浜を囲む岩壁だ。

高さは5m程で、もはや厚みは計測不能だ。



「え…?! 岩を殴るの!? 拳を痛めるよ!」

心配になって止めようとするガリー。

あんな真っ白で小さな拳では、岩に負けて血みどろになるのは明白だ。

或いは力が足らなさ過ぎて打撲で済むか?



止めに入ろうとしたガリーを尻目に、プリームスは右手を軽く握った。



直後、ガリーとリキは驚愕する羽目になる。

何と殴りつけた部分を中心に、岸壁が大きく陥没したのだ。

「えっ?!?!!」

「うおっ?!!?」



岩が陥没した範囲は、プリームスの拳を中心に半径1m程…深さは30cmは優に超えていた。



そうして2人に振り返ったプリームスは、岩を殴り付けた右拳を見せる。

相変わらず真っ白くて、傷一つ無い華奢な拳だった。



「……」

「そんなアホな…」

唖然とするガリーと、惚けたように呟くリキ。



『えぇぇ…この程度で驚くの?!』

逆に驚くプリームス。

この程度、永劫の騎士(アイオーン・エクェス)なら難なくやってのける。


『って…身内と一緒にしたら駄目か…』

よくよく考えれば身内は、超絶者ばかりの集まりなのだ。

一般的な水準と比べるのは無理があるだろう。



「ど、どうやって岩壁を陥没させたの? 表面を割る位なら俺にでも出来るけど…これは…」

規格外すぎると言わんばかりのガリー。


リキに至っては思考停止状態だ。

「……」



「う〜ん…簡単に説明すると、効率良く練った気と身体操作で殴り付けた…かな」

細かく説明しても良いのだが、如何せん暑すぎて熱中症になりそうなプリームス。

早く涼みに行きたいところだった。



「そんなんじゃ分からないよ…」

だが余程に威力の核心を知りたいのか、ガリーが泣きつく始末だ。



「えぇぇ……う〜ん…仕方ないなぁ」

お気に入りの相手に懇願されては、中々に嫌とは言えない。


と言う訳で震脚の真髄…反発を利用した大地の力と、気を合わせた事による螺旋を説明した。

謂わゆる螺旋波動と言うやつだ。



これを聞いたガリーからすれば目から鱗である。

「震脚の動力を打撃に利用するのは得意だけど、まさか反発と気を混ぜれるなんて…」



「どう? 色々納得出来た?」



「う、うん…それに参考になったよ。まだまだ俺も足らない物が多いって自覚出来たし」



「そう、なら良かった…」

思ったより謙虚なガリーに、プリームスは安堵した。

その刹那、視界が歪む。



「ディーイー!!」



遠くでガリーに呼ばれている…そんな錯覚をプリームスは感じた。

『あれ…? 私…どうしちゃったんだろ…』




楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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