表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
1427/1769

1334話・決意と門出

刹那の章III・政略結婚(4)を更新しました。

そちらもよろしくお願い致します。

「試しに1人で旅でもしてみようかしら」

プリームスは少し吹っ切れた様子で言った。



まさかの反応に驚き、そして落胆するアポラウシウス。

「1人…ですか。左様ですね…」

このプリームスの反応は喜ばしき事だが、その行動の中に自分が含まれていないと察したからだ。



「一応、消化していない目的も有るし、丁度良かったのかもね…」



「遠くへ行かれるのですか?」



「そうね……まだ言った事の無い地域よ」



アポラウシウスの胸中を不安が覆う。

幾ら超常的な存在とは言え、プリームスが容易に壊れてしまう儚い身体と言う事を知っていた。


このまま本当に一人で行かせて良いのだろうか?

彼女を良く知る誰かが面倒を見るべきでは?

そして、それが自分では駄目なのか?…そんな疑問が脳裏でグルグルと回った。



不思議そうに首を傾げるプリームス。

「どうした…?」



「い、いえ……1人くらい随行が必要なのではと思いまして、」

怖々(おずおず)と答えるアポラウシウス。



プリームスは僅かに自嘲する。

「フッ……そうね。でもこのまま守られてばかりでは、いつまで経っても聖剣の呪いや因果の負属性から逃れられないわ。そろそろ本気で対策を考えないと」



アポラウシウスは武國の一件で、プリームスが暴走する体質であり呪いを受けた身である事を知った。

正に聖女王プリームスが持つ、最も秘匿性が高い真実を知ったのである。

これは言うまでも無く弱点であり、上手く利用すれば付け込む事も可能かも知れない。


だが…アポラウイウスは”したくなかった”。

何故ならプリームスの信を得たい、また必要とされたい思いで一杯だった為だ。

これは詰まる所、魅了されたと言っても過言では無い。

だからと言って強引に己の欲望を示せば、全てを失う事になるだろう。


故にアポラウシウスは自身を殺し、当たり障りなく返した。

「そう聖女陛下がお考えなら、只の知り合いな私では何も口出しは出来ませんね」



「只の知り合いか……卿らしくもない」



「そうですか? 所謂あれですよ、妥協と配慮…円滑に人間関係を維持する座右の銘です」

などとアポラウシウスは言い飄々とした仕草を見せた。



「フッ…成程。では私も新たに座右の銘を設けなければね、」



「ほほぅ…どのような?」



「……」

プリームスは己の過去を振り返る。

魔王になる遥か以前は気が赴くまま、また興味が惹かれる物を知る為に、満足が行くまで邁進していたように思えた。


しかし仲間や頼って来る者達が増えるにつれ、自然と自分より他者を優先する様になってしまった。

『そう言えば…アポラウシウスが言うように、妥協と配慮ばかりだったのかもな』


折角、以前の世界から決別し、新たな人生を得たのだ。

ここで再び似通った人生を送るのは、滑稽極まり無い。

何より当初は隠遁したいと考えていたのだから。

『自分勝手に生きるのも悪くないか…』

「その日暮らしの気ままな旅……取り敢えずは"自由"かな」



「座右の銘が"自由"…ですか。宜しいのでは」

プリームスの返答に、アポラウシウスは当然だと納得がいった。

そもそも何者にも阻害されない強大な力を持ち、その人格は自由奔放に生きる"資格"が十分に有ると思えた。



「本当にそう思うかい?」



「勿論です。誰かが異議を唱えるなら、私が責任を以って考えを改めてさせるか、処理して見せましょう」



「ちょっ!? 余計な事はしないでよ?!」

本当に行動へ移しそうで血の気が引くプリームス。



「フフフッ…冗談ですよ」

そう微笑みながら返したアポラウシウスは、プリームスの傍へ跪き続けた。

「しばしのお別れになるのですね。でしたら、これをお持ち下さい」



「これは…」

アポラウシウスがプリームスへ差し出した物は、赤黒い指輪だった。

『強力な魔法付加を感じる…何かの魔導具か?』



「龍血結晶を加工して作った指輪です。仲間の認識票としてソキウス…いえ、イリタビリスさんへ渡した品と同じ物ですよ」

だがイリタビリスに渡した理由とは異なっていた。



意図が理解出来ない所為でプリームスは怪訝で為らない。

万が一、何らかの呪物に相当する物なら、その効果に依って酷い目に遭うのは明白だ。

「私でも解析が困難な魔法付加を施しているな。これを私に持たせて何を企んでいるんだ?」



珍しく慌てるアポラウシウス。

「あ…! いえ…不躾に失礼しました。これには私の固有魔法が付加してあるのです。勿論、聖女陛下を害するものでは有りません」



「ふ〜ん……」

いまいちプリームスは信用できず、刺さるような訝しみの目をアポラウシウスへ向けた。



「はぁ……」

アポラウシウスは溜息が漏れる。

『これも日頃のツケか…』


列国に死神の名を轟かせ、最凶最悪と称された盗賊ギルドの長…その自分が他者へ何かを贈るなど、怪しまれて当然と言えた。


居住まいを正してアポラウシウスは指輪を差し出した。

「聖女陛下に万が一の危機が訪れた場合、この指輪を壊して下さい。必ず貴女をお助けします」



アポラウシウスの言葉に、プリームスは聞き返した。

「壊す? 私を助ける?」

確かに指輪からは危険そうな魔力の波動を感じない…しかし離れた場所から助けるなど俄には信じ難かった。



諦めた様子で立ち上がるアポラウシウス。

「私を信じられないのは仕方有りませんね」

そして恭しく首を垂れて続けた。

「飽く迄も万が一の備えです。信じられないのなら、御守りとして肌身離さずお持ち下さい」



『うぅぅ…しつこい…』

しかしながら悪意は全く感じず、プリームスとしては無下にも出来なかった。

「分かった分かった…有り難く頂くよ」

結局は折れてしまうのである。


これこそ正に妥協と配慮?

別にアポラウシウスと関係を深めたい訳では無いが、相手の気遣いを蹴るのは倫理的に如何なものかと思えたのだ。



「お受け取り頂き有難う御座います」

嬉しそうな声音で礼を口にするアポラウシウス。



片やプリームスは釈然としない様子で相槌を打つのであった。

「う、うん…」



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ