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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第九章:北方四神伝・I
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1328話・配慮と擦れ違い

刹那の章III・政略結婚(1)と(2)も更新しております。

そちらも宜しくお願いします。

「フンっ!」

プリームスは機嫌が悪そうに席から立ち上がった。



「「プ、プリームス様?!」」

突然の事に戸惑うアグノスとアソオス。



居合わせた面々も目を丸くする。

しかしプリームスの様子から憤慨に似た情動を感じ、只事では無いと察した。



これにスキエンティアは慌てる事無く尋ねる。

「プリームス様、何方へ? まだ定例会議は終了していませんが」



「……何処でも良いだろ」

『何もかも勝手に決めて良く言う』



グラキエースとスキエンティアの遣り取りもピリピリしたが、それ以上の一触即発感が艦橋内を満たした。

だがアッサリと事態は終息する。

プリームスが何も言わずに艦橋を出て行ってしまったからだ。



その後を侍女長のピスティが急いで追う。

『一体何がプリームス様のご不興を…?!』


様々な疑問や不安がピスティの胸中を覆うが、自分の使命は主君プリームスの世話と護衛だ。

何が起ころうと手は抜けない。



司令区画の通路を暫く進むと、プリームスは甲板へ出て足を止めた。



「プリームス様…如何されたのですか?」

不安が溢れ出し、それがピスティの口を衝く。



その美しい銀髪を微風に靡かせ、プリームスは静かに答えた。

「スキエンティアの配慮は理解出来る。だが、それが私の望む物で無ければ、私がお座なりにされているのと何ら変わらん」



「プリームス様は国が大きくなる事へ御不満が有るのですね?」



ピスティの問いは当たってもいるが、それが核心とは言い難い。

「そもそも国を作った事が失敗だった。私は王になんて成りたく無かったのに…」



「…!」

これはピスティにとって爆弾発言だった。

自分がプリームスと出会った時には、既に永劫の王国アイオーン・ヴァスリオは国として十分に認識していた為だ。


『そんな……じゃあ今までプリームス様は嫌々に君主として…』

これでは自分達の存在意義を失ったかに思えてしまう。



「でもね…今居る皆んなに出会えて良かったと感じるの。もう皆んなは私の大切な家族だから…」



そのプリームスの吐露で、ピスティの危惧や絶望が浄化された気がした。

「プリームス様…」

それでも問題の核心が解消された訳では無い。

『これからどうすれば…』



「……」

「………」

2人して甲板で途方に暮れてしまう。



「へっぶしっ!!」

突然、プリームスがクシャミをした。



「あらあら…鼻水が出てしまいましたよ。さぁ中へ戻りましょう…天気が良いとは言え、まだ海風は寒う御座いますから」

ピスティはハンカチでプリームスの鼻を拭いながら言った。


『フフッ…こうしていと本当に少女のようね』

中身が350歳ではあるが、見た目は15歳なのだ。

この差異が堪らなく可愛らしく、また愛おしく思えた。



甲板への出入り口が静かに開く音がした。



「スキエンティア宰相…」

プリームスの不興の起因となった存在が現れ、戸惑うピスティ。

このまま2人を突き合わせては、更に事態が悪化しそうに思えたのだ。



片やプリームスは本当に寒いのか、恰も風除けの如くピスティに抱き付いた状態である。



「プリームス様…どうされたのですか?」



「本当に分からないの?」

スキエンティアの問いに、プリームスは不機嫌そうに返した。



「はい…仰って頂かねば分かりません」



「国が大きくなれば必ず諍いが舞い込む。私は静かに…気ままに暮らしたいだけなのに。これじゃ何もかも台無しよ」



困惑するスキエンティア。

「し、しかし、領土が拡大するのをプリームス様ご自身が受け入れたでは有りませんか。それを私は円滑に統治出来るよう処理しただけなのですよ」



傍で聞いていたビスティは、両者の言い分が正しく思えたと同時に、まるで子供の喧嘩にも感じた。

どちらか折れれば簡単に収拾がつくからだ。


だが直ぐに考えを改めた。

恐らく今まで主君プリームスは、皆に合わせて()()()()()のだろう。

だからこそ溜まりな溜まった不満や鬱憤が、ここに来て爆発したのかも知れない。


『いや…本当に爆発したなら、この程度では済まないか』

兎に角、大事に為らぬよう此処で瓦斯ガス抜きをするべきだ。



「あ、あのぅ……この際、互いに内に秘めた思いを伝えるのは如何ですか? 私が思うに気遣いや配慮をした故に、本心を伝え合えていないのでは?」



ピスティの提案に2人は暫く黙り込んだ後、スキエンティアが先に口を開いた。

「確かにピスティさんの言う通りですね。プリームス様は如何ですか?」



『はぁ…300歳も年下の女子に諭されるとはな』

同意を求められ、プリームスは素直に頷く。

「うん…分かったわ」



2人の間に立ったピスティは、両者を交互に見やって尋ねた。

「え〜と…どちらから話しますか?」

正直、"超"超絶者の2人に挟まれて怖くて仕方が無い。



するとスキエンティアが律儀に挙手をする。

「私から思いや言い分を申しましょう」



ビスティはプリームスへ視線を送り確認を取る。

これにプリームスは無言で頷いた。



こうして妙な緊張感の中、スキエンティアが秘めた思いを口にし始める。

「プリームス様が安心して過ごせる世を作りたい…そう予々(かねがね)思っておりました。その為には絶対的な統治に因る秩序が必要なのです。故に私は帝国の誕生を知らしめるつもりで居ます」


容易に難癖や介入が出来ない存在…そう思わせれば、半恒久的な安寧は難しく無い。

否…自分ならば可能だとスキエンティアは自負していた。



「そんな事…誰が頼んだ?」



「……」

「…!」

辛辣なプリームスの返しに、スキエンティアだけで無くピスティも絶句したのだった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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