1327話・第9章:プロローグ・役職再配置(3)
刹那の章III・政略結婚(1)と(2)を更新しております。
そちらも宜しくお願い致します。
げんなりするテユーミアを他所に、スキエンティアは通達を続ける。
「次にピスティさんですが、今まで通りに箱舟の侍女長をお願いします。これは今後、拡大する可能性が有るので心得ておいて下さい」
これに恭しく一礼で返すピスティ。
その後は魔法騎士団の団長であるロンヒが、永劫の騎士に昇格される。
これで名実共にロンヒは、超絶者の末席と言う評価を得る事となった。
更にペレキス共和国から半ば亡命したメガロフィアは、その用兵家としての能力を評価され永劫の騎士昇格となる。
詰まる所フィートと同じく、武力のみでは無い評価で永劫の騎士の地位を得られる事を示していた。
また最初の属国である月の国は、商業都市国家として月の民に因る統治が継続される。
そして列国で最大の領土を誇る上、永劫の王国の属国となったペクーシス連合王国は、ペクーシス連合公国と名を変える。
理由は中央を聖女王の直轄地とし、他4公国を公王が統治するからだ。
これに当たりプリームスの名代としてペクーシス連合を統治していたシンセーロ・ヘイス公王は、永劫の騎士となり正式に大総督へ就任する。
また実娘のティミドは永劫の騎士の地位はそのまま、大総督補佐官を担う事になった。
因みに東方最強の武人…女王の断罪人とこバドズィーナミアも永劫の騎士に昇格し、ペクーシス連合公国・治安維持軍司令へ就任する運に。
こうして粗方の通達や報告が終わると、恨めしそうにアーロミーアがプリームスの背後から現れた。
「私は何も言われてないんですけど……」
アーロミーアは元魔神…厳密には魔神王の使者であり、プリームスの遺伝子情報を得てプリームスと瓜二つになった存在だ。
現在はエスプランドルの迷宮の一件以来、プリームスの影武者を務めていた。
「アーロミーアさんは現状維持でお願いします。一応は永劫の騎士ですが、貴女の存在自体が最重要秘匿事項なので公に出来ません」
などとキッパリと告げるスキエンティア。
「要するに表舞台には立てないのよね……何だか寂しいわ」
「そうですか? プリームス様の代役として十二分に表舞台に立っている筈ですが?」
「うぅ……」
返す言葉が無いアーロミーア。
実際にスキエンティアの言う通り月の民の一件、また東方諸国や武國の件ではプリームスが密かに出向いていた為、影武者が必要だった。
それだけでもアーロミーアは随分と表舞台でプリームスを装っていたのである。
「特に異論はない様ですね。ではアーロミーアさんは現状維持で…」
そう告げた後、スキエンティアは皆を見渡して続けた。
「さて、最も重要な事を皆さんに言っておかねば為りません」
先程までノラリクラリしていたアーロミーアも、いつも飄々としているメディ.ロギオスも居住まいを正す。
ここまでスキエンティアに改まられると、居合わせた面々に緊張が走ってしまうのは当然だった。
「我ら永劫の王国は、この大陸で最も広大な領土を有すに至りました。こうなると最早、帝国と言うしか有りません。そこで国家の名を改め永劫の帝国と致します」
このスキエンティアの言葉を聞いた面々は、「大仰な」と言う表情も居れば、「妥当だ、当然だ」と肯定の表情も居た。
だが否定や異議を唱える者は一人も居なかった。
しかし、此処に来てプリームスが露骨に嫌な顔をする。
『うへぇ……て、帝国?!』
帝国の定義とは複数の国家を纏める連合体だが、実際の所は皇帝を頂点にした独裁国家だ。
その根底には侵略に因って版図を広げた経緯が有り、非常に印象が悪い。
つまり帝国と聞いただけで、他国を侵略し兼ねない攻撃的な国だと思われる可能性が有るのだ。
そもそもプリームスは他国を侵略する気など毛頭なく、出来れば隠遁して自堕落に暮らしたい。
なのに帝国が誕生してしまえば、その望みが吹き飛ぶのも明白だった。
更にスキエンティアは爆弾発言を続ける。
「国家の改名に際して、プリームス様の君主号を変更しなければ為りません。そこで私からの提案なのですが、聖女王の王を”皇”へ変更しては如何でしょうか?」
「聖女皇陛下…か、成程…」
インシオンが合点がいった様に呟いた。
「呼び方は変わりませんので、変更に際しての混乱は最小限に出来るでしょうねぇ」
と同調する風にメディ.ロギオスが続く。
『何が混乱は最小限だ!! 人の気も知らないで!!』
と怒鳴りそうになるプリームスだが、乗り気な面々を目の当りにして、その気も削がれてしまう。
その最たる者が伴侶のアグノスと娘のアソオスだった。
「まぁ~~それは良いですね」
「うん! 何だか字面が格好良いです!」
「因みにアグノス様は聖后陛下で、アソオス様は皇女殿下となります。如何ですか?」
更なるスキエンティアの追撃にプリームスは悶絶し掛け、アグノスとアソオスは満面の笑みだ。
「○▽◇×○……」
「はい、私は異論有りませんよ」
「僕も!」
「承諾も頂いた事ですし、この旨で事を進めましょう。皆さんも問題有りませんね?」
念を押すスキエンティアに、ロンヒが口を開いた。
「スキエンティア宰相…ペクーシスが永劫の王国…いえ、永劫の帝国の属国であると公表するのですか?」
然も当然のように頷くスキエンティア。
「はい。何か危惧する事でも?」
「その…今や永劫の帝国は武國、月の国、ペクーシス連合公国を属国にし、他国からすれば看過出来ない状況なのでは?」
怖々と答えるロンヒへ、スキエンティアは抑揚無く問い質す。
「つまり?」
「え…その……つまり小官が申したいのは、永劫の帝国を経済的、また軍事的に危険視するのではないかと、」
このロンヒの危惧は当然とも言えた。
「成程…ロンヒ殿の言いたい事は分かりました。ですが、結局は印象の問題なのですよ」
そう返したスキエンティアは、淡々と説明を始めた。
永劫の帝国は侵略に因って属国を増やした訳では無い。
飽く迄も仕方無しに、ある意味でなし崩しに属国を認めたと言わざるを得ないのだ。
要するに頼られた故に保護しただけにすぎず、他国から危険視される理由は皆無なのである。
このスキエンティアの理屈に一同は納得するが、完全に危惧を払拭出来ない様子を見せた。
「う〜む…どう言った経緯で3国が属国になったのか、それを列国へ説明しなければ為らんな…」
面倒そうにインシオンが呟いた。
「左様…先ずは列国への説明です。まぁ印象操作と言えば分かり易いでしょう」
「フンっ!」
プリームスは勢い良く席から立ち上がった。
もう我慢出来なくなったのである。
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〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜




