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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
刹那の章III・政略結婚(短編集)
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政略結婚(24)

次回「政略結婚」は24年10月11日の午前中に更新予定です。

長い岩の横穴を抜け、漸くクシフォスら討伐隊は龍の巣(ドラゴンニードゥス)に到達する。



「思った以上にデカいな…」

『う…しまった!』

横穴から気配を消して様子を窺うクシフォスは、つい本音が漏れ内心で慌てた。


強敵と相対する直前や、困難な任務を前にした時、その程度を口にしないのが常識なのだ。

何故なら"そんな事を言われるまでも無く"、状況が芳しく無いのは皆分かっている為である。

つまり口に出す事で士気が下がらない様に、謂わゆる縁起を担ぐ訳だ。


これは飽く迄も傭兵界隈の話で、テユーミアやエスティーギア、それに追随する魔法騎士等には当て嵌まらないだろう。

それでも傭兵稼業が染みついたクシフォスからすれば、士気が下がらないか心配で為らなかった。



するとテユーミアもコッソリ顔を覗かせ、

「ほ、本当ですね。多分…30mは有りますよ」

と驚いた様子で言った。



「常人には脅威だけれど、私達に問題なのは大きさでは無いわ」

などと続くエスティーギアは、後ろで戦闘準備をしながら妙な緊張感を漂わせている。


そう…只の竜ならば巨体から繰り出される攻撃や、種族別のブレスが脅威になる。

だが古龍級は更に人間と同等以上の高い知性に、既存の魔法から龍魔法まで操るのだ。


ここまで来ると訓練された軍隊でも、被害を覚悟で人海戦術を駆使するしか術が無い。

そして動員される規模は師団前後で、その半数は死傷すると一般的に認識されている。


なのにクシフォス等は分隊規模に過ぎず、直接戦うのはクシフォスとテユーミアと、そこにエスティーギアが試験運用する兵器だけだ。

これでは普通に考えて自殺行為に等しい。


それでもエスティーギアは十分に戦えると確信していた。

自分とテユーミアは人外の存在と戦う使命を帯びて生まれて来た、故に古龍が相手どからと言って遅れをとる筈も無い。

否…遅れをとっては為らないのだ。


『フフッ…対魔神用の決戦兵器、雷龍トニトルスで十二分に試させて貰うわよ』

「2人とも、魔法とブレスに気を付けて。特に龍魔法は人間が使う物とは機構が違うから」



エスティーギアに注意喚起されるが、クシフォスとしては釈然としない。

『龍魔法が何なのか分からんのに、どうやって気を付けるんだよ…』

などと思いつつも大人しく頷く。

「ああ、分かった」

ここで騒いでトニトルスに気付かれば、不意打ちの機会が御破産だからだ。


「…って、何も準備してないじゃねぇか」

後ろで立っているだけのエスティーギアに、つい突っ込んでしまうクシフォス。



「いやいやいや、私は魔術師よ。それに試験運用の兵器も魔力の塊なんだから、下手に起動したらトニトルスに感応されて気付かれるでしょ」



エスティーギアに素早く切り返され、確認するようにクシフォスはテユーミアを見やった。



「は、はい…姉様の言う通りです。でも、もうそれ処では…」

と青ざめた表情で答えるテユーミア。

彼女が見つめる先には、何と鎌首をもたげたトニトルスが居たのだった。



「うおっ!? こっち見てるぞ!! あんたがクドクド講釈垂れるから!」

「クシフォス殿が騒ぐからでしょ!!」

2人で責任の所在を押し付け合うクシフォスとエスティーギア。


一方、随行した魔法騎士らは、流石に不味いと思ったのか急ぎ2人を止めた。

「姫様! ここは一旦ひきましょう」

「そうです! 横穴を下がれば、奴は追ってこれません!」



だが、そんな進言も虚しい結果に至る。

「人間よ…そなたらが近付いている事は分かっていた。そして逃げる事は許さぬ」

そう脳に響く声でトニトルスが言ったのだ。

それは詰まり全てを見透かし、退路は無いと暗に告げている事になる。



『くそっ! どうする!? 下手に下がれば何かしてくる筈。いや…』

クシフォスは逡巡した。

既にトニトルスの術中であり、横穴自体が危険に思われた為だ。


『なら打って出るしか無いよな!』

「テユーミア、行くぞ!」

意を決し背中の大剣を抜いたクシフォスは、そう叫んで前に駆け出した。



これに間髪入れずテユーミアが続く。

『姉様と魔法騎士達に、トニトルスの前と後ろを向けさせては駄目だ!』


只の竜なら問題無いが、古龍級は余りにも巨大で、その一挙手一投足が危険極まり無い。

最も脅威なのが尻尾で繰り出される"払い"だ。

この払う範囲を予測出来ねば、一瞬にして100人は命を落としてしまう。


そこに加えて口から吐かれるブレスだ。

その威力は尋常では無く、炎龍なら岩をも溶かすと言われている。

また雷龍のブレスは落雷に相当するとされ、直撃すれば人間など容易に消し飛ばされるだろう。

だからこそ古龍との戦いは、側面を攻撃するのが定石なのだ。


その為には引きつけ役が必要で、真正面から身を呈しなければ為らない。

その上、古龍が脅威と感じる程の武力も要求される。


『クシフォス様の武力は申し分無いわ。でもブレスが来たら…』

テユーミアは引きつけ役のクシフォスが心配で仕方が無かった。


なら自分が出来る事は?

ブレスが吐けない程に、背後から攻撃を仕掛け続けるしか無いだろう。

そしてトニトルスを倒し、必ず夫と生きて帰るのだ。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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