表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
刹那の章III・政略結婚(短編集)
1407/1769

政略結婚(23)

今週は2話更新になります。


次回「政略結婚」は24年10月11日の午前中に更新予定です。

十分に休息を取った後、クシフォスら討伐隊は古龍トニトルス龍の巣(ドラゴンニードゥス)へ向かった。

本来なら見つけようと思っても、そう簡単には見つからない龍の巣(ドラゴンニードゥス)

ここへ容易に向かえたのは、ひとえにクシフォスの傭兵活動の賜物だった。


そもそも父親エフティーアと同等以上の名声を得る為に傭兵活動をしていたクシフォス。

その計画の内訳にはトニトルス討伐も含まれており、活動を通じて龍の巣(ドラゴンニードゥス)の情報収集も含めていた。



「まさか、こんなに早く役立つ時が来るとはな…」

クシフォスは暗くジメジメした横穴を進みながら、少し自嘲気味に呟く。



「何か言いましたか?」

隣を歩くテユーミアが訊いた。



「いや…何が人生の役に立つか分からないと思ってな」



「そうですね…一寸先の人生は全く分かりませんが、何かに色々と備えて損は無いと言う事でしょう」



そのテユーミアの返しは、人間の行為に無意味さは無い…そう言っているようにクシフォスは聞こえた。

「なら、ここから生きて帰えらねぇとな!」



「はい! 勿論、トニトルス討伐を成功させてです!」

と元気に宣言するテユーミアだが、その後ろを追随する騎士達は対照的に完全な無表情だ。



彼らは守り人一族の精鋭で、魔法騎士と呼ばれる存在だ。

また、その実力が相当なものなのは、傍にいるクシフォスが十二分に感じていた。


しかしながら秘匿戦力の所為か、クシフォスに対して最低必要限の会話しかしてくれない。

つまり全く愛想が無いのである。

『やれやれ…テユーミアが居なかったら気が滅入っていたな』


片やクシフォスの後ろを歩くエスティーギアは、騎士達と打って変わって賑やかだ。

彼女はテユーミアの実姉だが、その社交性?の強さは妹の倍は有るだろう。

正に人間的交流の寒暖差であり、クシフォスとしては気持ちが風邪を引きそうなくらいだった。



「ねぇ、雷龍トニトルスの寝ぐらはまだなのかな?」

皆が黙々と横穴を歩く中、今日10回目を超える同じ質問をエスティーギアがした。



「はぁ……まだ掛かると思うぞ。ギルドから仕入れた情報だと5km程度は有るらしいからな」

面倒臭そうに返すクシフォスも、どれだけ歩いたか既に分からない状態だ。



「ギルドか…それは傭兵時代の伝手かしら?」



「時代って…まだ俺は19だぞ。それに傭兵稼業は継続中だ」



「ふ〜ん…否定しないって事は伝手が有るのね。なら盗賊ギルドか、それとも情報専門に扱う裏ギルドかしら?」



「そんな個人情報を言える訳無いだろ。揶揄ってるのか?」

『全く…運動神経は無い癖に、無駄に元気な女だな』

こんなクシフォスとエスティーギアの遣り取りが、この陰湿な横穴に響く。



そうこうしていると斥候役の魔法騎士が戻って来て、険しい表情で告げた。

「500mほど先に巨大な空洞がありました」



「まさか…見つけたのか?」



クシフォスの問いに頷く魔法騎士。

「はい。今は眠っているようでした」



クシフォスは後方を追随する魔法騎士達へ言った。

「ここから慎重に進む。それと可能な限り移動しながら準備を整えるぞ」



魔法騎士達は静かに頷いた。

一方エスティーギアはニヤニヤと笑みを浮かべる。

「フフッ…やっと試験運用が出来るのね。で、当然に不意打ちするんでしょ?」



「ああ。本音で言えば正面切って戦いたいが、俺1人の問題じゃあねぇからな。トニトルスを倒すつもりで不意打ちする」



「初撃に失敗、若しくは効果が見込めなかった場合は、予定していた作戦通りの配置で動きますね」

とクシフォスへ念を押すテユーミア。

その表情は固く、命を落とすかも知れない緊張感が伝わって来た。



「うむ…だが絶対に無理はするな。勝ち目が無さそうなら即時撤退するからよ」



「はい…ですが、その言葉はクシフォス様にも当て嵌るのですからね」

などと返すテユーミアは、落ち着かなそうにクシフォスの裾を摘んだ。



その仕草が妙に可愛らしく、クシフォスは胸の奥がキュンッとなるのを感じる。

「お、おう」



直後、バシ〜ンっと叩く音がして、少しばかり悶絶するクシフォス。

「ぐうおぇぁ!?」

エスティーギアが尻を思いっ切り蹴飛ばしたのである。

「ちょっ!? 何しやがる!!?」



「いや…ちょっとイラッと来ただけだから気にしないで下さい」

そうエスティーギアは無下に返すと、先んじて歩み告げた。

「何でしたら我々に任せてくれても良いのですよ? 貴方は大事な大公爵家の嫡子なのですから」



今更になって気遣われても気味が悪いと言うものだ。

「何を馬鹿な事を…」

なのでクシフォスは特に真に受ける事なく、ズカズカとエスティーギアを追い越した。

それは恰も尻は自分で拭くと言わんばかりの態度だ。



『本気なんだけどね…』

溜息が漏れそうになるエスティーギア。


自分は未婚であり、特に縁を結んだ者も居ない。

一方、妹のテユーミアは次期大公爵妃なのだ。

この差を鑑みれば、どちらが身を呈するか誰でも判断はつく。


『なら、万が一の時は…』

自分と魔法騎士を総動員してでも、必ず2人を生きて帰さなければ為らない。

そうエスティーギアは心に強く誓い、何食わぬ顔で妹と義弟の後を追うのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ