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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
刹那の章III・政略結婚(短編集)
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政略結婚(5)

刹那の章III・政略結婚は週一の割り込みで更新していきます。

宜しくお願いします。

昨日会ったばかりの相手と”模擬戦”をする事になったテユーミア。

しかも密約に因って婚姻する仲の相手とだ。


その相手とはレクスデクシア大公爵の嫡男…クシフォスである。

彼は人並み外れた体格を有し、それに見合った数々の噂をテユーミアは耳にしていた。


日頃は大公爵の後継として全く準備をして居らず、ブラブラと着の身着のまま傭兵稼業している為体ていたらく

その実、小隊で処理する様な魔物を一人で狩ったり、ある時は大規模な盗賊団を一人で壊滅させたりと武勇伝に事欠かない。

そうした実績が影響したのか、レクスデクシア大公爵の後継では無く、次期”武神”と称されるようになった。



テユーミアは5m先に佇む巨躯クシフォスを見据える。

『この人は大公閣下の後を継ぎたくないように見える。なら、どうしてこんな中途半端な事を?』

疑問ばかりが脳裏を過る。


噂通り武芸や冒険にしか興味が無いなら、一層の事、この地から出奔すれば良いのだ。

だが実際は留まり、ノラリクラリと生活している風に見える。

矛盾ばかりだ。



身動きせずに様子を窺うテユーミアに、クシフォスは腕を組んだまま鷹揚に尋ねた。

「何だ…掛かって来ないのか? 心配せんでも、そっちに合わせて武器無しで相手してやるぞ」



「フッ…左様ですか。ですが私は強いですよ。貴方は約束通りに、私の願いを1つ聞いて貰う羽目になるでしょうね」



不敵なテユーミアの返しは挑発には成り得ず、クシフォスを逆に喜ばせた。

「ハハハッ!! 面白い…気に入ったぞ! 最近は少し退屈していた所だしな、テユーミア姫の思惑通りになる方が小気味よい」



『この人……』

自分がクシフォスを値踏みするのと同じく、クシフォスも此方の為人を探っていたのだ。

そして模擬戦の結果がどう転ぼうが、クシフォスは何も意に介していない。

テユーミアの中で不可解さと同時に興味が膨らむ。



「さぁ、いつでも良いぞ、掛かって来い」

このクシフォスの言葉は煽りでも挑発でも無い。

早く立ち合いがしたくて堪らない情動が含まれていた。



『そうか……この人は根っからの武人なんだわ。なら…』

同じ武人として拳で語り合えば良いのだ。

「行きます!」

テユーミアはソッと一歩踏み出した。



『おっ…!』

感心するクシフォス。

テユーミアの動きに無駄が無く、そして隙も皆無だったからだ。


只の一歩…それは鞘から刃を抜き放ったに等しく、不用意に近付けば此方が痛手を食うのは明かだった。

だからと言って手を拱いて居れば、これもまた痛い先制攻撃を許す事になる。


『ん~~本気かどうか、先ずは試すか…』

しかしながら幾ら強者と言えど、こちらを忖度して手加減して来る可能性もある。

それでは面白くない…ならば確認してから本気を出させば良いだけだ。



『…迎撃しないつもり?!』

微動だにしないクシフォスに、テユーミアは困惑する。

互いの距離は3mを切った…このままなら次の一歩で攻撃が届いてしまう。



仕方なしにテユーミアは次の一歩を踏み出した。



それでもクシフォスは微動だにしない。



『仕方ない……魔力は使わず純粋な打撃のみで、』

無手の技術は達人を越え、既に超人の域に在るテユーミア。

人間相手なら身体能力と技術で、十分過ぎる威力を相手に与える自信が有った。


大怪我をさせない為、狙うは太腿への下段蹴り。

如何に巨躯で筋肉隆々でも、脚は身体を支える弱点。

そこへ浸透系の蹴りを入れれば、クシフォスでも立って居られないだろう。



限りなく兆しが無い下段蹴りが、クシフォスの左太腿を狙った。



「おっと…!」



「え?!」

テユーミアは驚愕する。


対魔神用の魔力は使わなかったものの、技術に速度、そして威力は人間が受け止められる水準では無かった。

なのにクシフォスは左手で軽々と受け止めたのだった。



「ほぅ……中々に良い蹴りだな。それも態と気を使って脚を狙っただろ」



図星を突かれて口ごもるテユーミア。

「え……その……」



「はぁ……俺が大公の息子だからって本気を出せないのは分かる。だがな~~俺は全然面白くない。先ずは俺から力を見せるべきだったかもな…」

そう告げたクシフォスは右拳を高らかに振り上げた。



「な、何を?!」

テユーミアは困惑する。

クシフォスの行動には攻撃の意思が感じられず、尚且つ隙だらけだった所為だ。



「ふんっ!」

直後、地面を力任せに殴りつけるクシフォス。



「わっぷっ!!?」

思わず素っ頓狂な声をテユーミアは漏らしてしまう。

クシフォスが殴りつけた地面が陥没し、爆散させるように土を飛び散らかせたからだった。

『ちょ?! う、嘘でしょ?!』


俄には信じ難い光景…地面は直系2m程、深さ50cm程の陥没を起こしていた。

正に中級の爆裂魔法を放ったような威力だ。

これは生身の人間が、拳で地面を殴った結果だとは到底思えない。



「うへ……土埃まみれだな。すまんすまん…」

然も大した事の無い風に、クシフォスは自身の服をはたきながら言う。



「………え? あ、はい……私は大丈夫です」

こうしてテユーミアは己の考えの甘さを改めるのであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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