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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
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1323話・永劫の王国の岐路(2)

「はぁ……答えは決まっていたのですね」

アグノスは諦めた様子で呟いた。



これに一同は固唾を飲む。



一方、ロギオスは相変わらず飄々とする。

「ほほぅ…考えが決まられましたか。では御沙汰を…」



アグノスは全員を見渡し告げた。

「武國を永劫の王国アイオーン・ヴァスリオの属国とします。これにより武國への凡ゆる干渉は、我が国への侵略行為と見なし対処します…尚、異議は受け付けません」



確固たるアグノスの意思表示に、臣下は皆一様に首を垂れた。



「やれやれ…大変な事になったな。これで永劫の王国アイオーン・ヴァスリオは西側に巨大な貿易路を確保した事になる。他国の反発は免れないぞ…」

と心配そうに言ったのは、レクスデクシア大公爵こと武神クシフォスだ。



これへ同調したのが、初代ペクーシス連合王国女王グラキエースで、こちらは余り深刻そうでは無い。

「西側だけでは無い。東方諸国…ペクーシス連合も永劫の王国アイオーン・ヴァスリオの傘下です。今はまだ公開していませんが、きっと公式に発表すれば大事になるでしょうね」



西側だけでなく東側も…しかも広大な領土を有するペクーシス連合王国も属国。

更には元々が混沌の森の一部だった場所なのだ、それも知れれば他国の関心が集中するのは避けられない。



「ふむ…後ろ盾のリヒトゲーニウス王国とも、関係が変わり兼ねんな、」

ボソリと呟くインシオン。



その一言が全てを物語っていた。

自分達が岐路へ立ち選択したように、他国も選択を迫られるのだ。

そして敵になるか味方になるか…今後、具に情勢を監視しなければ、他国の蠢動を許す事となるだろう。



「何を恐る事があるのですか? 我らは地上最強の永劫の騎士(アイオーン・エクェス)ではありませんか。敵対する存在は薙ぎ払えば良いのです」

このロギオスの言葉は当然ではあるが、極論的で倫理観に反するとも言えた。



その所為かアグノスが過敏に反応する。

「武力は最終手段です! 諍いは私だけでは無く、プリームス様が望まれません!」



「これはこれは失礼致しました…アグノス皇后陛下の御心のままに」



会合の間が騒めいた。

アグノスに対するロギオスの敬称が変化したからだ。

もう後には退けない…そんな現状を示す為、ロギオスは敢えて口にしたのは明白だった。



自分の申し出が引き起こした事態に、ジズオは血の気が引く。

分かっていた事ではあるが、想定するのと実感するのでは全く違う。

また同時に思うのだ、自分は大きな借りを返す事が出来るのか?…と。


『いや…もう貸し借りの域では無い。私は…武國は、聖女陛下に一生掛けても返せない恩を受けた』

最早、全てを差し出して報いるしか術は無いと思えた。

「アグノス皇后陛下…このジズオ、全てを懸けて報いる事をお約束致しましょう」



「ジズオ大人…」

会議卓へ首を垂れて平伏するジズオに、戸惑うアグノス。

その上、"皇后陛下"とまで呼ばれてしまえば当然と言うものだ。


それに今まではプリームスの伴侶の1人…そんな意味合いと、同じ位の立場に在るのが忍びなくて"王妃"を名乗っていた。

ここで急に"皇后"になるのは、身の丈に合わない様に思えて仕方がない。

『あうぅ…大変な事になってしまったわ…』



「まぁ良いでは有りませんか、アグノス様。人は立場に因っても成長するものですから…それに初めから物事に相応しい者など、恐らくは一握りしか居ません。気に病む必要は有りませんよ」

珍しくフィートが抑揚を込めた言い様をした。



『うおっ! フィートが他人を慰めた?!』

これを目の当たりにして、口に出そうになるのを咄嗟に堪えたクシフォス。

舎人とねりとしてフィートを自分に仕えさせた経験から、実に考えられない事態と言えた。



そんなクシフォスなど他所に、フィートはアグノスへ進言を続ける。

「内政官の私としては、直ぐにでも行動に移った方が良いかと考えております。南方諸国だけでなく、西方…それに北方の虎王国へは急ぎ、武國の併合を知らせる書簡を送るべきでしょう」



「え……あ! そ、そうですね! イリタビリス外交官!」



アグノスに呼ばれ、直ぐさま任の指名と察したイリタビリス。

「はい! 急ぎジズオ大人と協力して、虎王国へ最優先の書簡を用意し使者を送ります」



「うん…お願いしますね」

そう返したアグノスは寝入ったプリームスを支えながら、疲れた様子でソファーに深く身を預けた。


取り急ぎの案件は処理した…それも只一つだけ。

なのに随分と疲れを感じてしまった。

『プリームス様は、いつも難しい決断を為さっていたんですね…』

己の矮小さと拙さに落胆するばかりだ。



「ふむ…では、そろそろお開きと致しましょうか。両陛下もお疲れのご様子ですし、直ぐにお休みになられた方が良いでしょう」



このロギオスの言葉で、皆は一斉に席を立った。

最高意思決定権を持つ2人がグッタリな状態では、何も進められないからだ。



こうしてアグノスとプリームスは、ソファーに乗せられたまま護衛の魔法騎士等に運ばれて出て行く。

何とも微笑ましく見え、居合わせた面々から笑み【苦笑】が漏れた。


   ※

   ※

   ※

   ※

   ※


「インシオン殿にしては、些か静かだったのでは?」

自分達2人だけになった会合の間で、クシフォスが揶揄する様に言った。



「そうかね? 武神殿こそ、いつもより静かだっただろう?」



「ハハッ…まぁな。俺からすればアグノス王妃…いや、皇后は可愛い姪っ子だ。それが責任を背負う場で、邪魔が出来る訳無いだろう」



「フッ…私も卿と同じだよ。私からすれば可愛い孫ゆえな」



クシフォスはインシオンを見据え、先程とは違い真顔で告げた。

「これからが大変だぞ。恐らく永劫の王国アイオーン・ヴァスリオを中心に大陸は激動する」



「あぁ…分かっている。なら卿は如何する? やはりリヒトゲーニウスに骨を埋めるか?」



「俺は俺の信念と矜持に準ずる。自国が沿わぬなら、沿わぬなりの振る舞いをするさ」



「そうか…」

それだけ返して口と瞳を閉じてしまったインシオン。



何か言いたげに感じだが、クシフォスは席を立ち会合の間を後にした。

今後、何が起こるか危惧し推測した所で、結局は詮無い事なのだ。

先を見据える人の洞察力など、高が知れているのだから。


   ※

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「夢を叶えた刹那 あなたは その先に何を見るの?」


「ひたむきに がむしゃらに追いかけていた 微かな希望」


「一つずつ掴み集めた希望は わたしの夢を照らす光になった」


「苦しみや喜びを抱きしめ 未だ見ぬ明日へ駆け出してゆく」


「だけど寂しい…私 それでも…止めない」


「踏み出す明日へ 胸を張って進むよ」


「叶えたい願いが有るから」


「辛い時も諦めない 夢に願う未来への道」


「胸に誓った願いの先 希望と安らぎが待つよ」




『この歌は……』

その歌声に引き寄せられ、ギンレイは夕焼けの草原へ歩み出す。



「あら…ギンレイ、どうしたの?」

そよ風に美しい銀髪を靡かせたテュシアーが、微笑みながら尋ねた。



「その歌…聴いた事があるの。何だか懐かしく感じて…それに…」



「それに…何?」



「愛しいような…それでいて何故か辛いの…」



テュシアーは優しくギンレイを抱きしめた。

「そう…でも大丈夫、何も心配はいらない。この世界で貴女を傷付ける者は存在しないわ」



「うん……でも何も思い出せないのが不安で」



「いつか思い出す時が来る。それは、きっと辛い記憶かも知れない。それでも私や怜刃が傍に居るから…」



「ずっと居てくれる?」



「勿論よ……貴女が願い続ける限り、永遠にね…」



〜〜第八章:武王が居た国・完〜〜



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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