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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
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1318話・永劫と武國の秘密会合(2)

「許可…ですか?」

ジズオは怪訝そうに返した。

何故なら聖女王が、その立場にも拘らず下手に出たからだ。



「うん…私の一存で判断しても構わないのだけど、万が一の事を鑑みれば、ジズオ大人が知っていて尚且つ()()していた方が良いと思うの。勿論、許可出来ないなら他の方法を考えなくちゃいけないけど…」

随分と思わせ振りな言い様のプリームス。



これにジズオは安易に返答出来る訳が無い。

「え……そう仰られましても、何の事なのか分かりませんので…」



「フフッ…当然だよね。先ずは見て欲しいんだ」

そう返したプリームスは、傍に控えていたフィートへ目配せをした。



「承知しました…直ぐに、」

フィートは頷くと足早に入り口から出て行き、直ぐに戻って来た。

そして彼女の背後には、木箱を片腕で抱えた白衣の男が続く。


そうして白衣の男は、プリームスの前へソッと木箱を置き告げた。

「私はメディ.ロギオスです。お見知りおきを…」



『メディ.ロギオス…?!』

ジズオは非常に嫌な予感がした。


若干の見た目の違いは有るが、醸し出す雰囲気が列国に脅威認定された狂気の魔法医師(ルナメディクス)に酷似していたのだ。

しかもメディ.()()()()と名乗った…関係が有るのは明らかだろう。



それをロギオスは敏感に察しジズオへ告げる。

「ジズオ大人…貴女の危惧する処は理解出来ます。私は……痛いっ!?」

全て言い切る前にプリームスが蹴飛ばしたのだ。



「この者は卿の推測通り()()()()-()()()()()だ。色々有ってね…私が手懐けた訳だよ」



このプリームスの発言にジズオは当然驚愕するが、居合わせた面々も唖然とした。

何故ならメディ.ロギオスは複製体で、決してトゥレラ-ロギオスでは無いのだから。

また魔法医師の存在は伏せられており、言わば彼は裏の永劫の騎士(アイオーン・エクェス)…正に極秘戦力なのだった。



何より無駄な混乱や敵対心を抱かせない為、せっかくの機密事項だと言うのに、これでは台無しである。

などと思い心配になったアグノスは、ソッとプリームスへ囁いた。

「宜しいのですか…?」



「うん…いつかはトゥレラ-ロギオスを知っている者に露見するし、先ずは近場で試して見ようと思ってね」



「そうプリームス様が仰るなら私は構いませんが…」

伴侶の冷徹さにアグノスは半ば圧倒される。

つまる所それは、御し得ぬなら口封じしてしまえ…と言っているに等しいからだ。



「トゥレラ-ロギオス……」

一方、ジズオは驚きを隠せないでいた。

大陸中でも最強と称される剣聖を有し、更には列国に脅威認定された狂気の魔法医師(ルナメディクス)まで臣下に加えているのだ。

明らかに常軌を逸した集団…否、戦力が過剰すぎる軍事国家と思えてならなかった。



「聖女陛下…宜しいですか?」

ロギオスが少し焦れたのか、これからの行為に承諾を求めた。



「ん? あぁ〜〜うん、お願い」



「では…」

ロギオスは会議卓に置いた木箱の上部を開く。

すると中には拳大の黒い球体が2個収納されていた。



「これは…?」

奇妙な物体を見せられたジズオは、言葉にし難い不安を覚える。


その球体から微かに感じる魔力…自分の目利きに間違いが無ければ、魔神核の可能性が高い。

加えて死滅した物では無く、まだ十分に存在力を維持しているようにも見えた。



「これは魔神王アニムスとギンレイ、それに奏怜刃の魔神核です」



「ま、魔神王の魔神核だと?!!」

然も大した事が無い風に告げるロギオスに、声を張り上げて聞き返してしまうジズオ。


更には魔神王を倒す為、依代である自分諸共に自死を選んだギンレイ…その魔神核が滅びずに存在する。

驚かない方が変だろう。



「はい…今まで秘匿していましたが、魔神王アニムスは存在力の一部を分離していたのです」



「分離…」

それが何を意味するかジズオは即座に理解する。

だが不可解な点も有る…存在は3つなのに、魔神核が2つしか見当たらない。


考えられるとすれば…。

「まさか…ギンレイさんと魔神王の存在力が癒着…いや、融合してしまった?!」



「ご明察通りです。流石は元魔教主…禁忌の世界には精通されているようで、中々に察しが宜しいですね」



このロギオスの言い様は、明らかに揶揄する風だ。

だが相手が相手だけにジズオは言い返せない…と言うか、出来れば余り相手をしたく無い。

「……」



そんな2人の遣り取りを余所に、プリームスは少し居住まいを正しジズオへ言った。

「この魔神核はメディ.ロギオスの処置で延命状態にあるが、このままでは何れ存在力を無くし消滅する。そこで私は2つの魔神核を()()()()()()()()()、恒久的に死滅しないよう処置するつもりなの」



「……! そんな事をすれば…」

目を見張るジズオ。

万が一にプリームスの制御を失えば、魔神核が野放しになる可能性が有る。

そうすれば何かの拍子に生物の肉体を奪い、魔神として復活し兼ねない。



「うん……ジズオ大人の危惧する所は分かる。でもね私が試そうとしている空間は、物質世界では無いんだ。まぁ魔神核自体が物質なのか精神体なのか、或いはその両方なのか怪しんだけどね」



「んん?! つまり我ら人間が暮らす世界に、万が一が有っても影響が出にくい空間で処置…と言う事ですか?」



「そうだね…端的に言えば、ジズオ大人の言った感じだよ。只、何も保証出来ない…そこを考慮して答えて欲しいんだ」



人間を滅ぼそうとする魔神の王。

そして魔神王に魂を売り、人間を裏切った奏怜刃。

この二者が死滅せず形はどうあれ生き永らえるのは、武王デンを敬愛していたジズオからすれば堪えがたい苦痛だ。


されど、その苦痛や不満を盾に、聖女王へ異を唱える権利が果たして自分に有るだろうか?

『無いわね……結局、私は何も出来なかったのだから』

そんな自分から許可を得ようとしているのは、聖女王が信義に厚く倫理観の強い為人だからだ。


ジズオは深く深呼吸をした後、プリームスへ尋ねる。

「聖女陛下は何の為に、そのような事を為さるのですか? やはりギンレイさんを失いたく無いからでしょうか?」



この問いに、居合わせた面々が僅かに騒めいた。

これは明かに公私混同を指摘する発言に聞こえるからであった。


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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