表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
1355/1771

1296話・ソロルとアグノス

「ではアグノス王妃殿下、私は如何すれば宜しいですか?」

無礼を働いたソロルに代わり、イムレースは恭しく尋ねた。



「そうですね…今からプリームス様が現れた最奥へ行こうと思います。ですから護衛をして貰えませんか?」



アグノスの返答に、イムレースは首を傾げた。

「ん? 元から貴女を護衛するつもりだけど?」

プリームスとの戦いで手一杯となる事を予測し、アグノスの面倒をインシオンがイムレースへ頼んでいたのである。



「もう1つ有ります。私がする事に少し協力して欲しいのです」



露骨に嫌そうな顔をするイムレース。

「前もって言った筈だけど、私は聖女王とは戦わないよ。まぁ彼等が全滅したら話は違うけどね」



アグノスは首を横に振った。

「いいえ…イムレースさんやソロルさんの助言を頂きたいのです。私が正しい選択が出来る様に」



「助言ねぇ…」

そう呟いたイムレースは、意見を求める様にソロルを見やる。

するとソロルは直ぐ頷いた。



それを見たアグノスは嬉しそうにイムレースへ詰め寄る。

「では早速向かいましょう! 護衛はお願いしますね!」



「え…あ〜〜、う〜ん…。って、何するつもりなの?」

思った以上に相手の押しが強く、イムレースは少し困惑してしまう。

『これでも私は交渉人なんだけどなぁ…この子、意外に…』

目的が明確に定まった場合、馬鹿には出来ない行動力を見せる。



「最奥へ進みます。そこでギンレイさんが死に至った理由を探ります」



これにソロルが異議を口にした。

「その必要性を感じない。状況から魔神王諸共に、ギンレイを滅ぼしたのは疑いようが無い」



今度はソロルへ詰め寄るアグノス。

「違います! プリームス様は見初めた相手の命を奪いません!!」



「……理解し難いわね」

ソロルは僅かに気圧される。

本来なら脆弱な人間相手には有り得ない…だが不思議とアグノスへ強く言い返せ無かった。


理解が難しい、或いは理解出来ないのは未知に等しい。

また未知とは生命の根幹に潜在的な恐怖を抱かせる。

『だから気圧されたのか?』

人間の遺伝子に依存しているだけに、その可能性も有る。

だが、それとも何か違うように思えた。


そうして何故か無意識に疑問が口を突く。

「好意を抱いたからと言って、命を脅かす相手を殺せないのは自死と同じでは?」



「人間は己の命を顧みず、何かを解決する事が出来る存在です」



毅然とした強い眼差しで答えるアグノスに、ソロルは目を見張り、そして確信した。

『そうか…私は興味が惹かれたのか』

潜在的な未知への恐怖以前に、ただ単に不思議に思え知りたくなったのだ。

「面白い…もっと詳しく聞かせて貰えるかしら?」



「はい、でも事は急を要する状況です。奥に向かいながら説明しても良いですか?」



「勿論よ。さぁ、お姉様…アグノス王妃殿下を守って差し上げて」



急に態度を変えたソロルに、珍しく呆気に取られるイムレース。

「………ハハッ。まぁ貴女が良いなら別に良いけど、」






 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※






際限無く放たれるプリームスの黒星撃メランアステル

これをインシオンは奥義である天衣無縫・臨で只管ひたすら相殺し、仲間の為に防ぎ続けた。

だが仙力も無尽蔵では無い…いつかは枯渇と疲弊で、その防御手段を失くすのは明白だった。


『一体どれだけ消耗させれば…』

プリームスの動きが止まるのか?

永遠とも思える攻防に、半ば絶望を抱くインシオン。


そんな彼の視界の隅に、コソコソと壁際を進むアグノス達5人の姿が見えた。

『何をしているのだ?!』

突拍子も無い孫の行動で、インシオンは少しばかり動揺する羽目に。

その所為か手元が狂い、危うくプリームスの魔法に被弾しかけてしまう。



一方、そんな事など露知らずのアグノスは、そそくさと進み切り向かいの通路へ到着する。

「よしっ! 気付かれずに来れました!」



「いや…どうだろうね」

無茶な事に付き合わされ、イムレースは半ば呆れる。



「この先には居住可能な空間が在る。それに特に危険な気配も無い……で、さっきの話だけど、」



ソロルに催促されたアグノスは、通路を進みながら話を始めた。

「はい…先ほど私が言いたかったのは自己犠牲の話です。勿論、人間は自分が一番大切ですが、時には自分以外の存在を第一に考える事が有るのですよ」



「ほほう…」

アグノスの横に並び興味深そうにするソロル。



『やれやれ、仕方無いか…』

そんな様子を見たイムレースはソロルの好きにさせる事にした。


1000年もの間、抑制された環境で生き続けて来たソロルは、あらゆる事象を知覚出来る能力が有った…だが只それだけなのだ。

故に人と接触して感じられる物は随分と新鮮に違いない。



「これは飽く迄も私の考えですが…」



アグノスに勿体ぶった言い様をされ、ヤキモキするソロル。

「何? 早く話して!」



「え…あ、はい。え~と…人は一人では生きて行けません…そもそも種の存続は他者が在って成立しますから。これは人間や生命自体の機構と言うべきでしょう」



「つまり自己犠牲は種の存続の為、自身よりも他者を重要視する本能的な機能の1つだと?」



ソロルの意見に、アグノスは首を横に振った。

「それも有り得ますが、それだけだと私は思いたくは有りません」



「んん? ”それも有り得る”? それに”思いたくも無い”? 複合的かつ感情論も含むと?」

ソロルの中で疑問ばかりが膨らむ。



『この人…見た目は人間だけど……』

人間味を感じない妙な違和感をアグノスは覚えた。

「まぁ論理的に言えば、そんな感じになりますが…」



「興味深いな。それで要するにどう言う事なの?」



「え~と…」



アグノスが分かり易いよう、如何に説明するか言い淀んだ時、先に進んでいたクラージュが言った。

「わぁ…本当ですね。居住空間がありますよ!」


楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ