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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
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1271話・魔神の繭(2)

眼前に鎮座する巨大な真紅の物体…魔神王の繭。

これへ意を決したように攻撃を仕掛けようとするグラキエースとアポラウシウス。


そんな二人をソキウスは慌てて止めた。

「二人とも待って下さい。無闇に繭を攻撃しては労力の無駄ですよ。先ずは3人でしっかりと構造を把握しましょう」



「……確かにそうね」

「ふむ…そうですね」



ソキウスは溜息をつきそうなのを堪え、淡々と説明を始める。

「魔神の繭が見えている部分は、実は一部なんです。それで本体は基本的に地下に埋まっている筈なんですが…」



「これで一部…?!」

聞き間違えだと思い、ついアポラウシウスは聞き返してしまう。



「はい…、グラキエースさんはご存知ですよね?」



ソキウスに問われ、グラキエースは申し訳無さそうに首を横に振った。

「いや、私は主から魔神の繭について聞かされていただけだ。見えている部分が一部だとは知らなかった」



『へぇ〜、プリームスの最側近でも知らない事が有るんだ…』

「下級や中級の魔神で地面に見えている部分は、だいたい人間の拳大くらいです。それで繭は魔神の体の凡そ10倍程度…それが地面に埋まっています」



「10倍……」

「なっ…?!」

半ば唖然とするグラキエースと、目を見張るアポラウシウス。



「因みにですが…今言ったのは羽化直前の話です。魔神は繭に籠りながら、周囲の地形からも魔力を吸い上げて大きくなりますから…」



「つまり魔神王の繭は出来上がったばかりなので、ここから更に大きくなると?」



深刻そうに尋ねるアポラウシウスへ、ソキウスは頷いた。

「はい…絶対では無いですけど」

ソキウス自身も魔神王の繭など初めて見たのだ。

そうなると確証の無い経験則からの推測しか出来ない。



「そうですか…ならば本体は地中。取り敢えず見えている部分を吹き飛ばして、早々に魔神王を倒しましょう」


「うむ…」

アポラウシウスの言葉に同調したグラキエースは、巨大な繭の中心を指し示して続けた。

「私が魔法で印を付ける。その位置へ3人で一斉攻撃を掛けよう。分かっているとは思うが、力を出し渋りしないで欲しい」



「フフッ…勿論、全力で攻撃しますよ。何せタトリクス様を救わねば為りませんからね」


「はい! 出せる最大の技でいきます!」



確固たる二人の協調を得たグラキエースは、徐に右手を上げる。

刹那、魔神王の繭の中央に氷の楔が突き刺さり、それを十字に囲むように繭の表面へ4つの氷柱が迫り出した。

十字氷結クルクスグレーシス


凄まじい冷気が氷の十字架から発し、一瞬にして真紅の繭を凍結させた。

その範囲は凡そ10m四方…目印としては余りに大き過ぎる。

しかし凍結した中心が金剛石の様に輝き、「そこを狙え」と見る者へ直感的に伝えた。



アポラウシウスは目印に向けて、透かさず剣の切っ先をかざす。

すると彼の足元から闇が湧き上がり、先端を鋭利な刃物に模した無数の鎖が飛び出した。

『やれやれ、これを使わざるを得ないとはね…』


宙を舞い上がった闇の鎖は、恰も大蛇のように先端をもたげる。

その数…恐らくは100を下らない。

故に全天を覆うが如く陽光を遮り、3人を黒く染めた。



傍で”それ”を目の当たりにしたソキウスは驚愕しゾッとするが、同時に安堵する…今回ばかりは味方で良かったと。

だからこそ奥の手を晒す意を決した。


それは真人流の奥義だが、今は師匠と言えるイースヒースが改良し新たに生み出した技…大鳳翼・双刃気功掌だ。


ソキウスは両腕を大きく広げ、地面を割り陥没させる程の震脚を起こす。

その刹那、超音速を超えた両腕の一閃が、2つの不可視の刃となって放たれた。

そうして耳をつんざく衝撃波が発生、直後に20m先の繭へ不可視の刃が直撃する。



『お見事!』

アポラウシウスは内心で感嘆した。


ソキウスの放った不可視の刃が、少しも逸れる事なくグラキエースが付けた印の中央に着弾したからだ。

それだけでは無い…頑強だった繭の表面が十字に引き裂かれ、内包物を撒き散らしたのだ。



その傷口へ即座にアポラウシウスは攻撃を見舞った。

百手の暴君(ヘカトンテイル・ティラノス)


百を下らない闇の鎖が鋭い刃の先端を伴い、繭の傷口へ殺到する。

そして傷口へ深く突き刺さった1本は内部を掻き回すように抉り、他の1本は傷を広げるかの如く跳ね回った。

そう…100の鎖はどれ一つ同じ動きをせず、まるで独自の意思を持つ大蛇だ。



『行けるか?』

グラキエースの胸中に微かな希望が湧いた。

先ずは見えている地上部分を完全に破壊する…その為には魔力を惜しんでは居られない。


極大増幅陣(トメーイギストー)

青白い巨大な魔法陣がグラキエースの足元に発現する。

魔法弾(マジックミサイル)

間髪入れず発動した最弱の攻撃魔法は、増幅呪法に因って極大殲滅魔法へ変貌した。



「…!!」

「え…!!」

居合わせた二人は目を見張る。

辺りを真っ白に染め上げる程、無数の魔法弾が宙を覆っていた所為だ。



流星撃(メテオストライク)

グラキエースは静かに告げた。

その瞬間、空を切り裂く金切り音が響き渡り、破壊の雨となった魔法弾が繭に降り注ぐ。



「○☆□?!×△!?」

もう何も聞こえくなってしまった?!…そんな錯覚に捕らわれるソキウス。


否…余りに非現実的な破壊と轟音で、一時的だが聴覚に異常を来したのである。

『プ、プリームス以外に、こんなこと出来る人が居るなんて…』



「……」

一方、アポラウシウスは半ば呆然としていた。

それはグラキエースの実力も然る事乍ら、この超絶者を超える主が居る事実…これこそが驚愕でしかなかった為だ。


また思う。

驚愕の存在であるタトリクス・カーンが危機に瀕している。

それ程に魔神王は強大で危険な相手なのかと…。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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