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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
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1239話・露見するタトリクスの偽装

「まさか…まさか……タトリクス様が…聖女王なのか?!」

半ば呆然とした様子のズィーナミは、誰にともなく呟いた。



これに殆ど煽り口調で返すクシフォス。

「ハハハッ! やっと気付いたか」



居合わせた面々は、フィートを除き皆して頭を抱える事態に。



「もうっ! 今バラしてどうするの! これだから脳筋は…」

こう言う奴だと分かっていながら、夫を止められなかった自分が悔やまれるテユーミア。


そして居た堪れないのはアグノスである。

『うぅ…きっと追求されちゃう!』


一方クラージュはと言うと、不味いとは思うが所詮は他人事だった。

「まぁまぁ露見してしまった物は仕方ないですよ。それよりも今どうするかでは?」



「う、うむ……って、クラージュ姫も知っていたのか?!」



ズィーナミに詰め寄られ、慌てるクラージュ。

「えっ?! その…あぅぅ…」

『うわぁ…藪蛇だった…』



「うははっ! 皆は知ってるぞ、武國の人間以外はな!」

ここぞとばかりにクシフォスはバラす…もはや愉快犯である。



「そうか…そう言う事か! タトリクスの名は、聖女王がお忍びで動く為のものだったのだな!」



このズィーナミの言葉に、クシフォスは少し畏まった様子で返す。

「まぁ、そんな所だ。だけどな、これはここだけの秘密だからな!」



「今更か!!」

透かさずテユーミアの中段蹴りがクシフォスの尻に放たれる。



バコ〜ンッと鈍い音を立てた後、悲鳴を上げるクシフォス。

「ぐわぁっ!!?」

結果、無様に前のめりで床へ倒れる始末だ。



それを茶番とばかりに、抑揚の無い声が続く。

「タトリクス様が聖女陛下で、何が不味いのですか?」

フィートである。



「え……だって、欺いていた事になりますから、」

まさかの疑問提示に、アグノスが言い淀み気味に答えた。



「誰だって秘密の1つや2つは有ります。その秘密を"欺いた"などど受け取るのは些か浅慮かと」



『うわ…詭弁だ!』

と声に出しそうになるが、何とかアグノスは堪えた。

「た、確かにフィートさんの意見も一理ありますね…」



しかし杞憂だったようだ。

ズィーナミは随分と狼狽している様子を見せたのだ。

「そんな……まさか聖女王と知らずに儂は…」


見ていて気の毒になるくらいズィーナミの手が震えていた。

されど、それも当然かも知れない。


なにせタトリクスとの初顔合わせは、半ば拉致に近かったのだから。

加えて武力に因る押し問答に、武王候補へ無理やり推挙…否、武王候補にしてしまったのだ。

これらは一国の王に対し、有るまじき無礼と言わざるを得ない。



「タトリクス様は…いえ、プリームス陛下は、その程度で御怒りにはなりませんよ。只…まぁ呆れていらっしゃるでしょうね」

テユーミアは苦笑いを浮かべながら言った。



この慰め?の言葉も老人には届かなかったようだ。

「儂は何て事を……」

などと呟いたズィーナミは、その場へ膝から崩れてしまった。



「ど、どうしたんだ…ズィーナミ爺さん?!」

これに今度はクシフォスが取り乱し始める。



「いや…クシフォス様がそうさせたんでしょ」

透かさず突っ込むクラージュ。



そしてテユーミアは内心で溜息を漏らした。

『はぁ…やれやれね。幸い下級魔神の召喚が止まったから良かったけど、』

多勢の魔神を相手にしている最中なら、ズィーナミの前後不覚は目も当てられ無かった所だ。



フィートが徐にズィーナミの傍へ屈み込んだ。

「リニス大人…貴方はタトリクス様に忠誠を誓ったと伺いました。なら尚更にタトリクス様が何者かなど、些末な事では有りませんか?」



「そ、それは…」



答えあぐねるズィーナミを、更にフィートは問い詰める。

「何故、直ぐに答えられないのです? ひょっとして永劫の王国(アイオーン・ヴァスリオ)に鞍替えする事を後ろめたく思っておられるのですか?」



「……」

返す言葉が無く頭を抱えるズィーナミ。

今更になって捧げた忠誠を反故に出来る訳も無く、またする気も毛頭無い。

正に偶然…或いは運命の悪戯と思えた。

『兎に角、割り切るしかあるまいか…』


だが、どうしても割り切るには難しい事が有った。

『武國を救う行為が、武國を滅亡させる事に繋がるとは…』

矛盾する現状がズィーナミを悩ませていたのだ。


魔神王を倒せば、武國は存在意義を無くす筈。

何故なら魔神王を封じる為、"意図的に作られた国"だろうだからだ。

そうなれば国を維持する大義が失われ、ほぼ確実に利権を巡り内戦に発展する。


そこに都合良く忠誠を誓った対象が、聖女王プリームスだった。

これではズィーナミが、早々に諍いから抜けた裏切り者と言われ兼ねない。



するとフィートは、恰もズィーナミを見透かした風に言った。

「聖女陛下は全てを見通されています。リニス大人が危惧される事など、とうに配慮されて居られるでしょう」



「なっ!? まさか…存在意義を失う武國の面倒まで見ると?!!」



僅かな間の後、フィートは答えた。

「……その程度、聖女陛下にとっては然したる負担には成り得ません」



これにクシフォスとアグノスが、フィートの異変に気付く。

『何だ? 今の間は…?』

『んん? 変な間が…』



一方、テユーミアは違った…表には出さないが、胸中では随分と慌てていた。

『ちょっ?! そんな勝手に言質を与えるなんてっ!!』

プリームスが領土の拡大を喜ぶ筈が無く、きっと後々になって面倒事になるのは目に見えている為だ。



「そうか……ならば儂も気兼ね無くタトリクス様に仕えられる」

ズィーナミはホッと胸を撫で下ろした様子で告げた。



こうしてタトリクスが知らぬ所で、武國が永劫の王国(アイオーン・ヴァスリオ)の傘下に下る話が半ば決まってしまうのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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