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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
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1228話・決勝戦‐ギンレイ 対 タトリクス(2)

開幕、2人は3mの距離まで接近し突如動かなくなった。

この瞬間、虚と実に因る攻防が1度だけ行われた…が、それを観客が理解出来る訳も無い。


それでもズィーナミやクラージュ、それにジズオなどの超絶者級は即座に理解して驚愕する。

それが余りに高度過ぎる一合だったからだ。


そして、もう一人…闘技場中央を間近に臨める、搬入口に居た存在も驚きを隠せないでいた。

そう、今大会きっての番狂わせな存在──ゼノだ。

丁度、クラージュ達が居る場所の反対側へ密かに来ていたのである。

「ハハッ…面白いな。本当に武王が相応しそう2人だね…」




観客が騒めいた。

止まっていた2人が動き出したのだ。


否…厳密にはタトリクスが右手のレイピアを軽く掲げ、それに対してギンレイが一歩後退しただけ…。

緊張感のある空気…或いは決勝戦だからか?

些細な行動が、その一挙一動を皆は注目せざるを得ない。



しかし実際は些細では無かった。

ギンレイが一歩引いたのは警戒をしたからである。


極端な話、タトリクスは無挙動、無気配で奥義級の技を放つ事が可能な筈。

レイピアを軽く掲げた行動自体、それは実を伴う…逆を返せば態と見せて、それを”虚”とした可能性も有るのだ。

要するに反応して”実”に因る迎撃に出てしまえば、隙を晒して奥義に因る反撃を食らいかねない。

また、その奥義が”烈風”ならば、下手をすれば即死は免れないだろう。



ギンレイの背筋に悪寒が走った。

もし誘いに乗っていたら…そう思うと怖くて仕方が無い。



するとタトリクスが言った。

「フフフッ……慎重で我慢強くて良い判断ね。でも互いに動かないままでは面白くないでしょう?」



「何が言いたいのですか?」



「殺しはしないよ。それに可能な限り怪我もさせないから、心配しなくても良い。だから小手先の技なんかじゃ無くて、ちゃんと打ち合わない?」



まさかのタトリクスからの提案に、ギンレイは驚き逡巡する。

「え…?!」

『気配を消して、虚と実の駆け引きが小手先の技だと言うの?!!』



そんなギンレイを察して、タトリクスは補足するように言った。

「確かに虚と実を使い分ける事は奥義とも言える。でも一方的に相手を無力化する技でもあるの。力の差を歴然にし戦闘意欲を削ぐ…或いは察知されずに暗殺する為にね。そんな事、私達の間に必要かしら?」



「…!」

ハッとするギンレイ。

自分は武王に成る使命…否、宿命がある。

それを示す為に障害となる(タトリクス)を倒さなければ為らない。


『そうか…タトリクス様が望む物で示さないと意味が無いのか』

きっとタトリクスが本気を出せば、自分など足元にも及ばないのは明白。

なのに態々相手をしてくれているのは、確固たる意志を試しているからだろう。


「そうですね…タトリクス様の仰る通りです」

そう答えたギンレイは、剣を正眼に構えて続けた。

「では、タトリクス様の胸をお借りします」



「フフッ…それで良い。なら気兼ね無く打ち込めるわね」

タトリクスはレイピアを僅かに掲げたまま踏み込んだ。



その速度は遅い…しかし何が繰り出されるか分からない為、ギンレイは構えたまま不用意に動けない。

『これは…柔軟な即応が試されるわね』


それでも此方の構えは正眼…切先が相手を牽制し、相対する者もまた柔軟な攻撃が試される。

だが、それが意味を成すのは互角以下の相手。

タトリクスには通用しないかも知れない。



レイピアの切先が徐にギンレイの切先へ触れた。



「うっ!!?」

正に衝撃でしかなかった。

互いの切先が触れただけなのに、ギンレイの体勢が前方へ崩れたのだ。


『不味い!! 力んだり抵抗しては駄目だ!!』

ギンレイは崩れさせる謎の慣性に逆らわず、それに対して膝を曲げて対応する。


そうする事で前に倒れるのを、直下への"膝崩れ"に変えたのである。

これによりギンレイは体勢を崩す事無く、只その場へ軽く屈伸しただけになった。



「おおっ!!」

思わず声が漏れるタトリクス。

『普通なら剣を手放すか、一層のこと前へ飛び込みそうなものだけど…』

ギンレイが最適解を選んだので驚いてしまった。


元より優れた素質が有ったのだろうが、傭兵として暮らす中、更に危険予測や対応へ鋭敏になったのかも知れない。


こうなるとタトリクスは嬉しくなってしまう。

「ハハッ! 打てば響くとは、この事を言うのね。ここまで良く成長したわ」



笑顔で返すギンレイ。

「フフッ…有難う御座います」

されど内心では焦るのを必死に抑えていた。


理由は想像以上に上手く動けて、自分でも驚いていたからだ。

これが培った経験で対処出来たのか?、それとも今になって急に覚醒したのか?

どちらにしろ分からないので、再現性が低い可能性がある。



「さぁ〜どんどん行くわよ!」

タトリクスは意気揚々と踏み込む。



『くっ! と、兎に角、落ち着け!』

そうギンレイは自分へ言い聞かせる。

緊張の所為か心臓の鼓動が速くなり、それをタトリクスに悟られそうで心配で為らない。

すると余計に緊張してしまう悪循環へ陥る。



再びタトリクスがレイピアを振るった。



やはり先程と同じく速くは無い…が、切先に触れれば崩されるのは確かだ。

『なら避けるか?』

取り敢えず避けて反撃に転じれば、一番安全には違いない。


しかし回避する直前、ギンレイは違和感を感じた。

何故に緩慢な速度なのか?

また何故に崩しなのか?


そうして袈裟斬りを下がって回避し、ギンレイは目を見張る。

然も平然そうな表情をしながらも、タトリクスの額には珠の様な汗が浮いていたのだった。


「た、タトリクス様…」

つい心配になって呼びかけてしまう。



「ん? 何?」

何事も無いように首を傾げるタトリクス。

されど良く見れば額だけで無く、首筋や胸元にも汗の筋が光って見えるのであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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