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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
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1173話・昼食休憩(2)

クシフォス以外が蕎麦を啜る中、タトリクスが徐に言った。

「さて、リニス長官…武王宮の地下に広がる古代遺跡、それとデン陛下がどう関係しているのか語って貰いましょうか」



10人程が利用出来る個室は長方形で、食堂のような開放感は全く無い。

まるで密談などがし易いように誂えられた空間だ。

只、圧迫感を無くす設計なのか随分と天井が高い。


その個室の大部分を占めるのが、長い会議卓の如き黒檀のテーブルである。

その上座にタトリクスが座り、その右隣に世話役をいち早く買って出たクラージュが座る。

そしてタトリクスの左隣へアグノスが座った。


因みにクシフォスは一番注文した料理が多く、ガタイも大き過ぎるので入り口に近いテーブルの隅っこに座らされる。


またテーブルを挟んでタトリクスの対面に座ったのがズィーナミで、今から尋問でも受けるかの如き青ざめた表情を浮かべていた。

「……」



「ん? 話してくれないの?」

少し苛立ちを見せるタトリクス。



これにズィーナミは慌てる。

「い、いえ! お話させて頂きます! ですが何から話せばと思いまして…」



『昼食休憩が終わったら本戦なのに、肝心な所でグダグダして…これだから男は!』

叱責しそうになるがグッと堪えて、タトリクスは落ち着いた口調で告げた。

「では私の質問に答えて頂戴。それなら話し易いでしょう?」



「はい、なんなりと…」

ズィーナミは覚悟した様子で頭を下げる。



このやり取りの間、傍に座るアグノスとクラージュは気が気でない。

身内には甘々過ぎるくらいのタトリクスだが、それ以外には厳しいのだ。

それが信義に欠ける事なら尚更である。

『うぅ…何事も無く済めば良いけど、』

『ズィーナミ様…変な事を言ってタトリクス様を怒らせないで下さいよ…』



「先ずは武王宮の地下に在る古代遺跡…あれの正体は何なの?」



率直過ぎるタトリクスの問いに、ズィーナミは息を飲む。

「……!」

だが逡巡しては居られない。

直ぐに気持ちを切り替えて知っている事を答えた。

「あの古代遺跡は、武國が誕生する以前から存在する物…そしてその正体は必ず訪れるであろう大厄災から、人々を守る為の避難施設なのです」



「大厄災? 避難施設?」

いまいち漠然としていて要領を得ない。

それでもタトリクスは凡その見当が付く。

『この大陸、或いは武林島の人間が大厄災と呼ぶもの…』

1000年前の大転倒に似た何かか、人間以外の存在からの脅威が考えられた。


また一番可能性が高いのは後者の人外の脅威…エスプランドルの迷宮と状況が似ている事から、魔神の侵攻が推測される。

違う点は武林の遺跡が"人間の避難所"であって、魔神を封じる物では無い事だろう。


『う〜ん…私の推測を口に出すのは躊躇われるなぁ…』

何故そんな事を知っているのか突っ込まれると、説明がややこしくなるし面倒だ。

何よりエスプランドルの迷宮の秘密は、リヒトゲーニウス王国と永劫の王国(アイオーン・ヴァスリオ)の機密なのである。



あれこれタトリクスが考えていると、ズィーナミが説明を続けた。

「大厄災の詳細は自分には分かりません。それでも確実に分かっているのは、武國が滅びるだけでは済まないと言う事です。そしてその引き金となるのがデン陛下の崩御…これは確かです」



「なっ…?!!」

流石のタトリクスも驚愕した。

誰か1人の命に因って厄災が防がれているなど、初めて聞いたからだ。


『……いや、エスプランドルの地下世界で魔神の侵攻を防いでいたのは…』

剣聖インシオンたった1人だった。

しかも100年もの間だ。

そう考えれば1人の命で武國が守られているのは、絶対に嘘とは言い切れない。



『ん?? でも妙よね…』

「デン陛下の前は? 武王が代替わりする時に何も無かったの?」

歴代の武王が崩御するたびに、武國が大厄災の危機に瀕した事になる。

そんな柵を抱えて、果たして武國が存続出来るだろうか?



「それは…確か150年前にデン陛下が武王を継承したのですが、その頃の自分は武國には居ませんでしたので、当時の状況は把握しておりません」



役立たずと言いそうになったタトリクス。

しかしズィーナミが随分と申し訳無さそうな顔をしているので、我慢してやる事にした。

「そう…じゃあ怜刃さんに訊くか、力尽くでジズオ大人の口を割らすしかないわね」



「それは難しいかも知れません。自分は生粋の武國人ではありませんし、六武大将になったのも最近です。ですから最重要秘匿事項は全て知らされていません。しかし…」

ズィーナミ曰く、ジズオは長年に渡りデンを支え、奏家は代々武國の中枢を担って来た家門だそうだ。

そして最重要秘匿事項を知ってはいるだろうが、呪術念書なりの契約が為されて他言出来ないらしい。



漸く合点がいったタトリクス。

「ふむ…成程。それで…」

怜刃は地下の古代遺跡に関して何も言及しなかった…否、出来なかったのかも知れない。



「私がお役に立てれば良いのですが…立場上、内政干渉になるので…」

「ですね…」

他人事なのに不安そうに、また申し訳無さそうに呟くアグノスとクラージュ。



「ん〜〜2人とも気にしなくて良いから。多分、何とかなると思うし」

と可愛い2人の気遣いを無下にしない為、タトリクスは笑顔で言った。



するとガツガツと食べていたクシフォスが、

「そうだぞ、部外者が幾ら心配したところで何にもならんしな! それに何時も通り、タトリクス殿なら上手くやるさ」

などと正に他人事の如く言う始末。



「クシフォス殿…貴方も協力してるのだから当事者なんですよ。分かってます?」

自覚を促す為に釘を刺すタトリクス。


そもそもクシフォスは外国人でありながら、六大大人の称号を武王から贈られた存在なのだ。

それは詰まりクシフォスが武國の政治に干渉しようが、内政干渉にあたらないのである。



「え? あ……う〜む」

分かっているのか、いないのか…クシフォスは妙な相槌を打って再びガツガツと料理を食べ始めた。



『もう…ズィーナミにしろクシフォス殿にしろ、なんかイライラするわね』

絶対最後までクシフォスを付き合わせてやる…そう心に誓うタトリクスであった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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