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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
1204/1771

1145話・武術大会当日-開会式

武國・武術大会開催日。

幸いな事に晴天に恵まれた。


予選6区決勝戦は、午前9時に1戦目から6戦目まで突貫で行われる。

それが終了次第に昼食休憩1時間を挟み、その後に大会本戦の組み合わせが決められる。


"決められる"と言うのは、文字通り"その場"で籤引(くじび)きで決めるのだ。

前もって決めた物を発表しないのは、何かしらの工作に因って対戦組合せが操作されない為である。


その根本的な理由は優勝者、或いは獲得点数の高い陣営が政権を握るからだ。

故に運へ任せる籤引きを選んだのは、ジズオ陣営とズィーナミ陣営の折衷案(せっちゅうあん)と言えた。





「急いで下さ〜い!」

シェイ補佐官が舞台側搬入口で手を振った。

そして手を振られた当人は、タトリクス、アグノス、クシフォスだ。


既に野外闘技場の観覧席は、座席抽選を勝ち残った観客で満席になっている。

そして未だか未だかと、半ば野次に近い歓声が響き渡っていた。



「うへ・・・凄い盛り上がりね、」

タトリクスは早足に通路を進みながら、嫌そうに呟いた。



傍を進むクシフォスが大声で訊き返す。

「んあ〜? 何だって?」

歓声の所為でタトリクスの声が聞こえなかったのである。



「何でも無いです!!」

苛立ちを隠さず、割と強めで大きく言い返すタトリクス。

独り言を訊き返されるものほどウザい事は無い。



すると今度は真後ろを追随するアグノスが反応する。

「何か言いましたか?」



「もう勘弁して・・・」

げんなりするタトリクス。

これ以上、大声を出しては歌唱に悪影響が出かねない。

なので「何も無いよ」と身振りでアグノスへ示した。



「んんん??」

それが全く伝わらず、アグノスは可愛らしく小首を傾げる。



『駄目だこりゃ・・・』

場が悪いのか、或いは間が悪いのか・・・タトリクスは諦めて先を急いだ。



そうして舞台の袖に到着し、3人の姿を見た観客から更に歓声が上がる。



「うわっ!!?」

それが余りにも大き過ぎてタトリクスは耳を手で塞いだ。

『まるで破壊の言霊だわ・・・』


2万人もの観客の声・・・しかも円形闘技場を囲む観客席の為か、四方からの歓声が反響して大きくなったと考えられた。



一方クシフォスとアグノスは全然平気なようで、嬉しそうに観客席に向かって手を振っていた。



クシフォスは言わずもがな脳筋・・・ならば鼓膜も頑丈な筋肉で出来ていて何ら可笑しくは無い。

しかしアグノスは女性相応に華奢で、尚且つ魔術師なのだ。


『違和感が有るくらい頑丈なのよね・・・』

魔力での身体強化も然る事乍ら、素で体の強度が高いのも驚かされるばかりである。



そんなタトリクスを尻目にシェイは舞台近くまで進むと、右手を掲げて合図を出した。

その直後、歓声を掻き消す勢いで重い(どら)の音が響き渡る。



「ちょっ!!」

『うるせぇぇ!!』と叫びそうになるタトリクス。



片や観客席は、何事かと驚いて一瞬で静かになる。



それを見計らったのか、いつの間にか舞台の中央に立っていたズィーナミが高らかに言い放つ。

「観客、大会参加の皆々様方、ここに武林・武術大会の開催を宣言する!」



再び湧き上がる歓声。

再度これを打ち消す風に鑼が鳴らされ、大会の予定がズィーナミより説明された。


そして愈々(いよいよ)、大会開会式の余興を始める為にズィーナミが舞台から降り、代わりにタトリクス、クシフォス、アグノスが上がった。



既に設置されたピアノの前に座るクシフォス。

続きピアノから4mほど離れて置かれた竪琴の前にアグノスが座る。

最後にタトリクスが二人から4m離れた位置に立つ・・・真上から見ると丁度、三人が正三角形になる位置取だ。



「イーコス・コントロール」

タトリクスがソッと無詠唱で魔法を発動させると、3人の中間に柱が出現する。

それは傍に居ないと見えないほど半透明で、直径は50cm、高さは・・・恐らく観客席の最上段よりも高く見えた。


「展開・・・」

更に呟くと、柱から半透明の突起物が伸び、タトリクス、クシフォス、アグノスの傍に達して止まる。



「これで音や声が拡張されるのか・・・初めて見る魔法だな、」

とクシフォスが感心した様子で言った。



これに呆れた口調で返すアグノス。

「それはそうでしょう・・・タトリクス様の固有魔法なんですから」



タトリクスは突起を指して告げた。

「この伸びた突起で音声を拾うの。指向性の収音機能が有るから、邪魔になる周囲の音は拾わないわよ」



「ほほぅ・・・よく分からんが凄いな。で、この柱は?」



「収音した音声を増幅させて、柱の上部や頂点から音を周囲に降らすの。つまり増幅器と放出器が一緒になった物ね」

そう説明した後、タトリクスは溜息をついた。

何故なら、この余興に合わせて急遽"作り出した魔法"で、そこそこ疲れていたからだ。


当初は素の歌声と演奏で行うつもりだったが、思った以上に観客席が広く、尚且つ舞台を囲む形だった。

これでは音声が偏ってしまい、観客席全体に歌唱が伝わらないと分かったのである。

それで仕方なく急遽、魔法を作ったのであった。


それでもタトリクスが保有する既存魔法を少し(いじ)っただけなので、全くの無から作るよりはマシだったが・・・。

『でも新しい魔法って色々不測事態が起きやすいのよね・・・』

それを防ぐ為に神経を使う・・・正直、出来ればやりたく無い。


また聖剣の呪いを考慮して、魔力を可能な限り使わないようにもしている。

このイーコス・コントロールも、それを鑑みて非常に低燃費仕様だ。

加えて障壁魔法も解除しているので、呪いの影響は殆ど無いだろう。


只、一つ危惧する事が有るとすれば、長距離からの狙撃である。

『まぁ、こんな場で浅慮な事はしないか・・・』



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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