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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第八章:武王が居た国
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1144話・予選区戦

武術大会開催の2日前・・・前夜祭と呼ばれる予選区戦が行われた。

概要は本戦に出場する者を選ぶもので、最終的には10名が選出される。


因みにタトリクス、クシフォス、ズィーナミ、奏怜刃、ギンレイ、ジズオは予選免除枠に居るが、予選10区の内6区から勝ち上がった者と本戦を懸けて戦う事になる。

これは本大会開催日に行われる予定だ。



こうして2日に渡って無観客予選が行われた場所は、武王宮で最も広大な平地を誇る軍訓練用敷地である。

ここは軍単位での訓練が可能で、10予選区1000名を十分に収容し、問題無く2日で予選を終わらすに至った。



そして本戦を懸けて戦う6区が出揃う。


1戦目:タトリクス・カーン 対 クラージュ


2戦目:クシフォス・レクスデクシア 対 タンラン


3戦目:ズィーナミ・リニス 対 タンユ


4戦目:奏怜刃 対 ユチャ


5戦目:ギンレイ 対 インチェン・ワンノン


6戦目:ジズオ 対 フーリー



また予選免除枠との対戦から外れた本戦出場者は、アポラウシウス、グラキエース、ゼノ、ソキウスの4名だ。

これら4名は全くの無名な上、4人中3人が南方出身と言う異例事態に市井は湧き上がった。


何故なら武芸の中枢と言われた武林を差し置き、他の文化圏からの台頭に新たな風を感じたからである。

つまり皆は飽き飽きしていたのだ・・・同じ世界の同じ強者ばかりに。

故に目新しい刺激を得て、湧き上がるのも当然と言えた。





予選の観戦を終え、シェイの宿舎へ戻って来たクシフォス。


彼に、その結果が記された書類を見せられ、

『どうしてこうなった!?』

とタトリクスは居間で頭を抱えた後、テーブルに突っ伏した。



傍に居たアグノスは慌てる。

「えっ?! ど、どうされたのですか?!」



「ハハハッ! 今にも卒倒しそうだな、タトリクス殿」

片やクシフォスは察しているのか、いないのか、他人事のように揶揄い口調である。



「うぅ・・・クラージュが・・・」



突っ伏したまま愚図るタトリクスに、いまいちアグノスは要領を得ない。

「え? え? クラージュ?」



「フフッ・・・実はな、このクラージュってのがセルウスレーグヌムの王女と同じ名前なんだ。で、俺が実際に確認しに行ったら・・・」



クシフォスの話へ、興味津々に身を乗り出すアグノス。

「行ったら?」



「本人だった・・・がははっ! 師に似てクラージュ姫は随分とお転婆だよな!」



「あ・・・そう言えば! 今回みたいに偽装して・・・」

続きを言う寸前に、タトリクスが咄嗟にアグノスの口を手で覆った。



「ちょっと! 秘密なんだから!!」

小声で咎めるタトリクス。



「あ・・・す、すみません」



「ハハハッ・・・バレたところで元が誰か分からんと意味がないからな、そんなに気にする事は無いだろうよ。何にしろ本戦前に師弟対決が実現した訳だな」

他人事を俯瞰から楽しむようなクシフォス。



そんな時、お茶を持ってチュンシーが居間に入って来る。

「何だか対照的な状況ですね・・・」

凹んでいるタトリクスと、愉快そうなクシフォスを見て言っているのだろう。



「ククッ・・・聞いてくれて奥方。タトリクス殿が弟子と大会で当たる事になった。それが止ん事無き地位の人間でなぁ〜〜扱いに困るよなぁ?」



悪ふざけ過ぎるクシフォスを、アグノスが嗜める。

「クシフォス様・・・それ位にして下さい」

『タトリクス様は何時も超絶的で何でも見透かすから、愉快な気持ちは分からないでも無いですが・・・』


そこまで考えて、それを慌てて払拭する。

敬愛する伴侶の落胆する姿を見て、喜ぶ気持ちが湧き上がるなど有ってはならないからだ。



3人にお茶を差し出し、チュンシーは首を傾げた。

「タトリクス様がお弟子さんと大会で? それも止ん事無い立場の方と?」



「一応お忍びみたいだしな、秘密にしてくれよ・・・」

そう念を押したクシフォスは、事情を勝手に話し出してしまう。


タトリクスが以前、セルウスレーグヌム王国で王女アグノスの家庭教師をしていた事。

それに魔術と軍事の顧問もしている事を語ったのだ。



これにチュンシーが驚かない筈も無い。

「ええぇっ!? セルウスレーグヌム王国の王女が、お忍びで大会に出場しているんですか!?!」

しかもタトリクスの弟子なのだから、ある意味で世間は狭い?と言うべきなのか・・・色々と驚愕するばかりだ。


しかしタトリクスが気落ちしている理由が分からなかった。

「お弟子さんに会えるのは嬉しく無いのですか?」



「そらそうだろ・・・大会で当たってボコるのは忍びないってもんだろ?」


「そうですね・・・タトリクス様からすれば優勝しなければなりませんし、幾ら可愛い弟子でも手は抜けませんものね」



クシフォスとアグノスの意見に、「そう言うものか・・・」とチュンシーは無理やり自身を納得させた。

「ふむ・・・」


もし自分が弟子なら実力を見て貰う為に、師匠には全力で立ち合って貰いたい。

逆に師匠の立場なら弟子の全力を見る為にも、自分が全力を出さなくてどうすると考える。

『人の考えとは本当に多種多様ね・・・』



するとタトリクスは未だに愚図りながら呟いた。

「うぅぅ・・・絶対怒られる・・・うぅ・・・」



「「「へ・・・?」」」

クシフォス、アグノス、チュンシーは3人揃って首を傾げた。

"怒られる"の意味が分からなかったのだ。



「だって・・・クラージュ姫を誘わず、勝手に武國に来ちゃったから・・・」



「「「えぇぇっ?!」」」

『『『そこが心配?!?』』』

タトリクスのズレた心配に、唖然とする3人であった。



楽しんで頂けたでしょうか?


もし面白いと感じられましたら、↓↓↓の方で☆☆☆☆☆評価が出来ますので、良かったら評価お願いします。


続きが読みたいと思えましたら、是非ともブックマークして頂ければ幸いです。


また初見の読者様で興味が惹かれましたら、良ければ各章のプロローグも読んで貰いたいです。


なろう作家は読者様の評価、感想、レビュー、ブックマークで成り立っており、して頂ければ非常に励みになります・・・今後とも宜しくお願いします。


〜「封印されし魔王は隠遁を望む」作者・おにくもんでした〜

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