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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第四章:魔術師学園
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110話・下級学部の問題児

プリームスはバリエンテ達に案内され学園敷地内を北へ進んだ。

野外演習場と室内演習場の横をすり抜け更に北へ進む。


「む? 演習場は案内してくれないのかね?」

と訝しむプリームス。



困った表情でバリエンテは答える。

「さっきも言ったと思うが・・・今は学部外活動で野外、室内共に団体が使用している。俺達は目を付けられてるからな、顔を出せば絶対喧嘩になるだろう?」



状況が良く分からずプリームスは首を傾げてしまった。

上級学部の生徒が下級学部を見下しているのは、バリエンテ達の話から把握している。

しかしバリエンテ、イディオトロピア、そしてノイーギアの3人を個別に認識して突っかかって来るとは何とも納得がいかない。



「どうやら君達は何かしでかしたようだな? フフフ・・・差支え無ければ事情を聴きたいのだが」

プリームスは興味が湧き悪戯顔を浮かべた。

他人の諍いは得てして面白いと言う物である。



バリエンテは嫌そうな表情をしたが、

「う~む、まぁ俺達もプリームスさんの立場を加味して近づいた訳だしな」

直ぐに諦めたような顔になりそう言った。



ノイーギアも頷く。

「そうですね、下心があった訳ですし・・・私達の立場と状況を全てお話ししておいた方がよいでしょう」



イディオトロピアは申し訳なさそうな顔をプリームスへ向けた。

「ごめんね、プリームスさん。実は部外者である貴女に私達の状況を知って貰って、少しでも下級学部の待遇改善に利用出来たらって考えていたの」



プリームスは露骨に嫌そうな顔をした。

先程まで他人事として楽しもうと思っていた事が、自分に降りかかろうとしているのだから。

しかしお人好しであるプリームスは捨て置く事も出来ないのも事実であった。


溜息をつきプリームスは諦めたように告げる。

「分かった、取り合えず話を聞こう」



3人の表情が一斉に明るくなった。



バリエンテ達の話によると、初めは団体に所属出来ない事で上級学部の生徒と演習場で揉めたとの事だ。

その後何度も放課後にバリエンテ達は演習場に通いつめ、折衝を重ねたが上手く行かなかったらしい。


そしてしつこいバリエンテ達に業を煮やした中級学部の生徒が、力づくで排除しようとした。

これが致命的な要因になる。


そもそも傭兵ギルドに所属していた戦闘の玄人が、学生などに後れを取る訳も無くコテンパンに中級学部の生徒を伸してしまったのだ。

大事にならない訳も無く、お互い10日間の停学となってしまった。

しかし状況を精査した理事長のエスティーギアは、それ以上両者に罰を課す事は無かったという。



「成程、両者痛み分けと言う訳か・・・理事長も卒なく処理したものだな」

とプリームスは呟き少し考え込んでしまう。

何か引っかかったのだ。


無理に下級学部での待遇改善をしようとせず、さっさと中級へ進学すれば良いのだ。

そうすれば学部外活動にも参加が可能になってくるだろう。



「何故、中級へ進学しない? まさか規定の修学を修めていないのか?」

プリームスは至極真っ当な疑問を3人にぶつけた。



頭をボリボリ掻いて困った表情を浮かべるバリエンテ。

「いや、下級学部の修学状況は問題無い。問題無いのだが・・・」

何だか話しにくそうな様子だ。



これにはイディオトロピアが答えてくれた。

「中級学部の生徒と暴力沙汰になったのが原因で、講師に目を付けられちゃって・・・。私達の中級学部受け入れに猛反対しているのよ」



しょんぼりとしてしまうノイーギア。

「こんな荒くれ者は受け入れられない、授業が破綻するって理事長に講師陣が詰め寄ったそうです。そもそもの原因は中級学部の生徒ですのに・・・私達は降りかかる火の粉を振り払ったに過ぎません」



頭を抱えてしまうプリームス。

思ったより状況が悪そうだからだ。

ここでプリームスが理事長代行権限を発動させ、この3人を中級学部へ進学させても根本的な問題は解決しない。

生徒間の(わだかま)りが残り、一層状況を悪化させるかもしれない。



そもそもがこんな浮世離れした学園内に、バリエンテ達のような現実主義な生徒を混在させる事が間違っているのだ。

恐らく他にも似たような諍いが多かれ少なかれ起こっているに違いない。


そしてこの問題を解決するのは生徒が学ぶ制度に合わせるのでは無く、多種多様な生徒に対して学ぶ環境を合わせる必要があるとプリームスは考えた。



『部外者であり、関係者でもある私が何処まで首を突っ込んだら良いやら』

そう思い、プリームスは本人たちに確認する事にした。

「君達は結局のところどうしたいのだね?」



3人はそんな問いを投げかけられるとは思っていなかったのだろう。

少し驚いた様子を見せた。

そしてバリエンテはハッキリと言い放つ。

「俺は最悪、退学でも良いと思っている。だが俺達のような境遇の生徒に何か残してやりたい」



プリームスがイディオトロピアとノイーギアを見やると、2人も頷いた。

何ともお人好しな事か・・・。

プリームスは呆れそうになるが、これが人間の良い所なのだと納得もする。

しかし下手をすれば共倒れにもなってしまう。

だからこそより強く余裕がある者が手を差し伸べるべきなのだ。



「妙案がある、1つ乗ってみないか?」

プリームスが小悪魔な笑みを浮かべて言い放つ。



少し逡巡してしまう3人。

それはプリームスの人柄をまだ完全に捉えきれていないからだ。

ひょっとしたら良い様に弄ばれ、取り返しのつかない結果になるかもしれない。


『だが藁をも掴む思いでこちらから接触したのだ・・・何を今更戸惑うか!』

バリエンテは意を決したようにプリームスを見つめる。



「俺達では行き詰っていた所だ。乗らせてもらおう!」

そう告げたバリエンテの表情からは迷いは微塵も感じ取れなかった。



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