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封印されし魔王は隠遁を望む  作者: おにくもん
第四章:魔術師学園
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105話・理事長代行とその他準備

結局、拠点を迷宮最下層へ定める案は有耶無耶になってしまう。

これに関しては極端に急いでいる訳では無いので、プリームスとしては先ずは当面の問題からである。



当面の問題とはエスティーギアから請け負った魔法学園理事長の代行の事だ。

兎に角、何をして良いのか分からないプリームスは唸り込んでしまった。

「う~む、理事長代行は何をしたらいいのだ? 結構責任のある職務だろう?」



これにはアグノスが丁寧に答えてくれる。

「基本的には魔術師学園へ入学したい人間の精査です。それから魔術の才能がある人間を、市井から保護し国外への流出を防ぐのも仕事です。学園の基本方針は魔術師の育成、保護、そして無用な魔術の流出ですから」



「ふむ、成程・・・詰まる所、人選と才能の保護か。だがそれだけでは無かろう? 王妃は随分と忙しい様子であったしな」

とプリームスはアグノスへ尋ねた。



少し考え込むアグノス。

「そうですね~、母が忙しいのは魔術の研究を平行で行っているのもあるのですが・・・やはり学徒に対する教育内容の更新ですね。でもこれはプリームス様が関与する必要は無いかと思います」


更にこめかみに指を置いてアグノスは、

「後はですね~、迷宮の管理による各所との連携です。これは王国のみならず傭兵ギルド、商人など多岐に渡りますので結構面倒ですね」

と思い出しながら告げた。


そしてウッカリしたとばかりに「あっ!」と声を漏らすと続ける。

「一番重要な事を言い忘れていました。新たに発見された危険度の高い魔術や魔道具の確保と封印です」



封印と言う言葉に何とも嫌な思い出があるプリームス。

実際は封印では無かったのだが・・・。

そう思いつつ相槌を打つ。

「確かこの国は魔術を兵器として認識していたのだな。ならばそれは当然の事だな」



その言葉にスキエンティアが皮肉めいた事を言いだす。

「それを言ってしまうとプリームス様は、正にその対象では? 故に王妃様が理事長代行に、プリームス様を据えたように思えてなりませんよ」



フィエルテが苦笑いしながら言った。

「それは暗にプリームス様の危険性をご自身で認識してもらう為・・・。そう言う訳ですか・・・回りくどいですね」



スキエンティアは少し感心するような声音で続く。

「いやいや、人とは口で言っても中々理解できない事もある。プリームス様はそもそもがこの国どころか、この世界の住人では無いのですから。手早くこの世界の常識を知ってもらう為に、王妃様はそうされたのでしょう」



そんな2人のやり取りを聞いていたプリームスが、考え込む様に瞳を閉じた。

「成程、聞くよりは体感する方が早いか。なら・・・」



プリームスのその様子に首を傾げるアグノスとフィエルテ。

しかしスキエンティアは何か察したのか、嫌そうな表情を浮かべる。



そして意を決したように目を開くと、

「この学園の生徒になってみるか」

などとプリームスは言い放ったのだ。



「ええぇ?!」と驚くアグノス。



フィエルテも驚いた様子でプリームスへ尋ねる。

「しかし理事長としての業務は大丈夫なのですか? それに理事長が生徒と言うのは周りも困るのでは・・・」



「そこは基本的に伏せておこう。私が理事長代行なのは、一部の教職員にのみ伝えておいてくれれば良い」

と他人事のように言うプリームス。



アグノスが心配そうにプリームスを見つめた。

恐らく強大な魔力と魔術の英知を持つプリームスが、年端も行かぬ生徒達に混ざる事を懸念しているのだろう。


いくら魔術の才能ある選ばれた人材とはいえ、それは雲泥の差どころでは無い筈だ。

プリームスは350年を生き抜き、100年もの歳月を魔術研究に費やした元魔王なのだから。



そう思ったプリームスは、アグノスの心配を払拭するように笑顔で告げた。

「生徒達の前では基本的に魔法は使わぬ。それなら生徒の自尊心を傷付ける事は無かろう?」



同調するように頷くスキエンティア。

「それがよろしいでしょう。それにプリームス様の使われる魔法は規格外な上に、固有魔法ばかりですから。他人に悟られれば無用な諍い呼び寄せるだけです」



プリームスやスキエンティアが言う事は尤もなのだが、根本的な事を皆忘れているとフィエルテは思った。

「お立場はどうされるのですか? 身元が不明では怪しまれるのは確実かと」

そう心配になってフィエルテはプリームスへ尋ねる。



「あ〜」

といかにも忘れていたと言わんばかりの顔をするプリームス。


それにはスキエンティアが直ぐに提案をした。

「やれやれ、お忘れたったのでしょう? でしたら他国から留学してきた貴族辺りで良いのでは?」



少し慌てた様子でプリームスはアグノスへ同意を求める。

「スキエンティアがこう言っているが問題ないだろ? なぁアグノス?」



するとアグノスは怒ったように言い放った。

「私が危惧しているのは、そんな事ではありません! プリームス様は美しいですから、生徒達は皆魅了されます。きっと好きだの惚れたのだの言ってプリームス様に迫るに違いありません!! それが心配で心配で・・・」



『ええぇ、心配する所はそこなの?!』

その場に居た一同は皆、内心で同じ突っ込みをするのであった。




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