交渉と氷華の剣姫
遅くなりました!
さて、会議が始まりました。
ちなみに、普通のクラン戦や同盟戦ならば運営も介入してきません。万が一の、対策としての運営介入ですからね。異常がなければ、動きません。ランクとか、戦力そして戦況が同じくらいならば。
ですが、今回は戦力差が圧倒的だった。そして、僕達の殆んどが生産クランである事。それと、運営側から見て理不尽な戦況を見過ごせなかったから。この3つが、大きな理由ですかね。あ、忘れてましたね。もう1つ、劣化蘇生薬の作り方を難しくし過ぎた事は許せてもです。一部の作れる人に、迷惑がかかる前に対応を出来なかったからでしょう。
本当に、ランク戦が決まってから対応するなんて。
本音を言えば、予想が出来たはずなのに遅い!って叫びたいです。本当に、運営さんしっかりお願いしますよ。本当に、大変だったんですから。
と言うか、お店に居る時に修正が入ったので思わず『今更ですか?』と呟いてしまいました。
マッキーさんは、修正報告を見て苦笑。トキヤさんも、同じく見てから『遅いだろ。』と呟く。グレンは、ケーキを運びながらも『だよな。』と頷く。
いけません、会議に集中しなければ……。
さて、進行は運営がするので考えますか。
「さて、まずは提案を出してください。」
すると、クロイツが言う。
「この試合、同盟のランク戦ではなくクランのランク戦にしないか?その方が、そっちの被害を最小限に出来るし。何より、いろいろ痛くないだろ。」
すると、運営は考える仕草をしてルイスを見る。
「うーん、私もそうすべきだと思いますが。」
「その提案は、良いと思います。まぁ、受けるか受けないかは別ですけどね。ですが、言い方が気にくわないです。何故、僕達が負ける前提で話しているんでしょうか?まだ、試合も始まっていないのに。運営さんも、負ける前提の会話ですし。何故?」
すると、運営さんは慌てたように言う。
「それは……、もう勝敗が決まったようなものですよね?だから、被害を押さえれられるなら………」
「仲介者である、運営が片方の肩を持っている。そう、認識しても?そもそも、相手が全員参加する前提で話していること事態がおかしいのですが。」
ルイスは、冷静に言えば運営さんは驚く。
「た、確かに……。その、申し訳ありません!」
「それに、もしガウェイン同盟が全員参加じゃなかった場合。クラン戦の方が、僕達にとって圧倒的に不利になります。それは、どう考えているのでしょうか?僕は、参加メンバーの提示を要求します。」
すると、クロイツが苦々しい表情をする。勿論、ルイスは暢気に笑って待っている。暫しの、沈黙。
「それは、ルイスさんも提示するんですか?」
運営さんが、沈黙に堪えられなくなったのか言う。
「勿論。言い出しっぺは、僕ですから当たり前ですよ。ただ、クロイツさんが呑めれますかね?」
ルイスは、さっきの仕返しとばかりに笑顔で言う。
「むぅ………、呑めない。それでは、ジョブがバレるし不利になるだろ。ルイス達は、かなり知られているけど俺達はそうでは無いんだぞ?」
「ほう……。」
ルイスは、ニヤリと笑う。
「べつに僕は、職業を明かせとは言ってないですよね?単純な話、人数と参加クランだけ教えてくださいと言っただけで。それに、仮に今から調べたとしても当日まで2日。とても、間に合いませんよ。」
クロイツは、観念したのかギブアップのジェスチャーをしている。そして、ルイスを見て苦笑する。
「分かった、降参だ。」
そう言うと、リストを出す。ルイスも、リストを出して交換する。そして、ルイスは嬉しそうだ。
やりました!参加クラン5、人数997人です。
うちが、975人なのでこのまま続行ですね。
「人数的には、変わりありませんし良いのでは?」
ルイスは、暢気に言う。
「確かに。」
「それなら、提案がある。いや、提案というよりはお願い……だな。大きく、3つ程あるんだが……。」
ルイスは、腕を組んでから椅子に深く座り直す。
「まずは、聞いてから判断します。」
「1つ目、脳筋戦にしてくれないか?」
※脳筋戦……ここでは、参謀による作戦なしの戦闘。
すると、ルイスは驚いてから笑う。
「却下。それだと、面白く無いですしね。」
「それに、ルイスさんが不利になりますが。」
運営も、これには黙っておれず言う。
「………そうか。」
「「そうです。」」
運営さんと、ルイスが真剣に頷く。
「2つ目、降参するからクラン戦を無かった事に出来ないか?真面目に、敵対したくないのだが。」
すると、ルイスは少しだけ意地悪な口調で言う。
「クロイツさんが、居ないとはいえ………あれだけ、僕達を見くびっといてですか?舐めプの状態で、3日も待機していた事。掲示板で、クロイツさんのメンバーが僕の事を馬鹿にしていた事とか。他にも、いろいろと有るのですが………聞きたいですか?」
「………本当に、申し訳ない!あんの、馬鹿ども!」
クロイツは、思わず絶叫しながら言う。
「それで、3つ目は?」
「例え、勝っても負けても互いに何もしない事にしたい。まぁ、上2つを断られるのは予想内だ。だがしかし、これだけでも呑んでくれないだろうか?」
ルイスは、考える仕草をする。運営さんも、少し遅れて慌てて言う。その声には、戸惑いが含まれる。
「ふむ………」
「え、それは反対です。一方的に、喧嘩を売られたのに報酬なしは周りが納得しないと思います。」
ルイスは、暢気に笑ってから言う。
「確かに。ですが、ここでクロイツさん達から報酬を取れば、間違いなく1つの同盟が消えますよ?」
「へ?」
運営さんは、キョトンとしている。
「別に、僕達はクロイツさん達の同盟を潰そうなんて考えていません。ただお仲間が、色々とやらかしているので此処でけじめを付けた方が、後先の対応が楽になるかなって思っただけです。このまま、仲間を放置すれば僕達よりも格上に喧嘩を売りかねない。そうなった時では、もう全てが遅いんですよ。それに、プレイヤーの繋がりが優しいものだけとは限らない。それは、十分に理解してますよね?」
「ああ。」
クロイツは、ルイスの言わんとしている事が理解できた。ルイスは、自分の名誉を踏みにじられても、クロイツの事を思って動いてくれているのだと。
「では、2日後に会いましょう。」
「…………では、これで会議を終わります。」
ルイス達は、その場で解散した。
その2日後、十分な準備が出来てないガウェイン同盟メンバーは敗北。ルイスは、報酬を奪う事なく何事も無かったかのようにホームへ撤退していった。
さて、やっと平和になりましたぁ~!もう、暫くはダラダラしていたいです。せめて、戦いたくない。
「お邪魔するわ。ここに、ルイスさんが居ると聞いて来たのだけど?あら、放火馬鹿じゃない。」
「は?あー、なるほど。あんたが、ユンゼか……。」
ルイスは、二人に挟まれた状態である。
「あら、放火馬鹿にしては良く知ってるわね?」
「それで、用件は?」
すると、ユンゼは剣を抜いて言う。
「ルイスさんの、相棒に相応しいのは私よ!」
「それは、ルイスが決める事だろ?」
ぬぅあー!此処で、喧嘩をするなぁー!
「ルイス、ヒロイン的な立ち位置だな。」
マッキーは、ケーキを食べながら言う。
「いいぞぉー、もっとやれぇー♪」
レンジは、笑いながら見ている。
「今なら、あの台詞が言えるんじゃないか?」
トキヤは、ニヤニヤしながら言う。
「僕に、言えとおっしゃいますか……。はぁー、まったく。2人トモ、僕ヲ巡ッテ争ワナイデ……。」
ルイスは、気の無い棒読みで台詞を言う。
「「だって、こいつが悪い!」」
「ここ、ホーム兼お店の中だって忘れてません?」
ルイスは、頭が痛そうに突っ伏す。
「…………マッキーさん、お願いがあります。」
「良いぞ。暫く、俺のホームに逃げてても。」
マッキーは、ニヤニヤしてるトキヤとレンジに呆れた視線を一瞬だけ向けてから。頭が痛そうに、突っ伏すルイスの頭を撫でる。ルイスは、顔を上げる事なく呻くような雰囲気でため息まじりに言う。
「ありがとうございます。」
「おうよ。ゆっくり、休め。」
マッキーは、珈琲を飲みながらこの状況をどうするか考える。そして、小さくため息を吐き出す。
ルイスは、ユンゼの事を苦手に感じているので避難させるのは確定だ。じゃないと、精神的にルイスがダウンしてしまうだろうしな。ダウンは、まずい。
何にせよ、暫くは自分のホームで美味しい料理が食べられるのは確定だな。なんて、思いながら。




