初イベント初試合
『さーて、始まりました第3回タッグバトルコロシアム予選!今回も、楽しい展開を希望しますね。実況放送は、運営の星とユキタでお送りします!』
ほぇー……、3回目なんですね。まぁ、初めてのイベントなので予選からスタートです。勿論、温存予定なのでメインは回復でしょうかね。
「本戦は、ヤバいけど予選だし気楽に行こう。」
「了解、回復メイン?」
僕達は、最低限の言葉で会話することにする。
「うん。俺が、斬る。」
「了解。」
僕は、頷いてから座る。
「温存予定。」
「カードは?」
すると、グレンは驚いて僕を見る。
「え、有るの?切らない方針で。」
「了解。」
僕は、暢気に頷いてから黙る。
『さて、星さん今回の注目タッグは?』
『やっぱり、イベント初登場である薬屋ルイスと2回目登場の業火のグレンのタッグでしょうか。攻撃職最強と生産職最強、まさかの夢のタッグですよ。運営達も、大興奮で狂喜乱舞でしたね。』
おや、僕達の話題のようですね。注目、されるのは嫌ですね。目立ちたくないです………。
それより、観戦者が予選なのに多くありません?
「やっぱり、観戦は多いよなぁ………。」
グレンは、苦笑してから僕を見る。ん?初登場な人は、他にも居るので僕が原因ではないはず。
「そうですね。」
なので、暢気に返事をしたのですが………。
「お前なぁ……、知らなかったのか?」
「ん?えっと、何がでしょう?」
僕は、キョトンとして首を傾げる。すると、グレンは困ったように笑ってから僕に言う。
「うーんと、前線プレイヤーであるβプレイヤーとベテラン達がお前を気にしてるんだよな。だって、お前はβ時代に生産職最強の男と呼ばれていたんだぞ。その影響力は、かなり凄まじいって事くらい分かってんだろ?おまけに、お前は実力を隠して表に出てこない。つまり、分かるよな?」
「それは………。」
ルイスは、思わず言葉に詰まってしまう。
うーん、一応は事情があってなんですけど。それでは、理由になりませんね。まさか、カードをばらすにはまだ早いですし。出来れば、使いたくないですからね。バレたら、勧誘が凄いでしょうし。
僕は無意識に、深いため息を吐き出してしまう。
「………まぁ、それだけは理解しといてくれ。何となく、お前に事情があるのは察したからさ。」
「……………一応、理解しました。」
今の僕では、本戦で勝ち抜けられません。
予選が終わって、2週間後に本戦があるのらしいです。なので、早めに試練を終わらせてしまいましょうか。恐らく、最短で4日でしょうね。
そして、固有スキルと種族スキルそして指輪でしか解放されないスキルを獲得しなければ。そして、種族の鎖を解放して少しでも強くならなければ………。まぁ、時間が許す限りは全力で強化しましょう。
グレンに、迷惑はかけたくありませんし。何より、僕も感覚を取り戻さなければ………。
まずは、予選ですけどね。
「ちなみに、本戦のベスト10にはシード権が渡される。もれなく、次回にご招待って事だな。」
「なら、タッグを解消すれば良いのでは?」
すると、グレンは苦笑してルイスを見る。
「えー、次回も一緒に出ようぜ!」
「そもそも、ベスト10に入れるかも不安ですが。」
ルイスは、暢気に言って確かにと笑うグレン。
『さて、ついにやって来ました!ルイス・グレンVSゴッポ・ネネのタッグバトルです。ルイスさん、初イベント初試合です。タッグバトル、スタート!』
「さーて、いっちょ殺るか!」
「えっと、よろしくお願いいたします。」
グレンは、気合い充分で僕は挨拶だけします。
「わーはははっ、私の強さに恐れおののけ!」
「ゴッポさん、恥ずかしいです。」
これは、とても濃いキャラが来ましたね。グレン、笑いを堪えるのは良いのですが………。間違いなく、堪えきれてませんね。まぁ、分かりますが。さてさて、僕は下がって回復準備をしましょうか。
『おや、ルイスさんが下がりましたね。』
『どうやら、ルイスさんは後衛みたいです。』
「わーはははっ、【気合いの一撃】!」
「そいっ♪そんで、スキルカウンター発動。倍返しで、お返しだぜ貰っときな。【業火聖剣】!」
ゴッポの【気合いの一撃】に、合わせるようにグレンの通り名の代名詞であるスキル【業火聖剣】を放つ。勿論、火力はグレンが上なのでゴッポのスキルは打ち消されゴッポは大ダメージを受ける。
「水よ、彼の者の傷ふぎゃっ!?」
「【ホーリーアロー】、【慈悲の涙】」
『まさかの、グレンのカウンターアタック!そしてだ、息を合わせたかのような敵の回復妨害。流石、最強コンビ。動きに、無駄がない!』
『流石、最強コンビなだけはあるなぁー。』
「ルイス、強化詠唱!」
「了解。破棄する?」
「出来れば、詠唱もお願いする。」
「偉大なる、7人の神々よ。その、神業で脆弱なる我らに慈悲を与えたまえ。【神々の恩恵】!スキルブースト発動、効果上昇。」
『うわぁー、素晴らしい!補助スキルである、カウンターやブーストを使いこなしている!』
『しかも、使い方が上手過ぎる!まさに、グレンさんに鉄壁の防御力と破壊的な攻撃力を与えたようなもの。これは、グレンさんのスキルカウンターも有りますし手も足もでませんね。』
補助スキル
スキルを使用したとき、そのスキルを強化したり効果を上げたりするお助けスキル。使い方が、とても難しい。そして、組み合わせを間違えると不発だったり誤爆したり自分の不利になる。初心者は、使えないが初心者が解除されると使える。
ベテランクラスが、良く戦闘で使用している。βテスターは、補助スキル以外も使うのだが。
『それにしても、最強コンビはかなり温存してますね。本気を出せば、ステータス的に瞬殺なはずなのですが。もしや、シードプレイヤーにカードを見せない作戦でしょうか?ルイスさんも、回復に回ってますしね。ルイスさん、攻撃はしないつもりか?』
『みたいですね。』
余計な事を………。まぁ、予選ですし温存ですけど。さて、後はあっちが攻撃したらグレンがカウンターで仕返しすれば勝てますね。でも、相手は動かないってことは………タイムオーバー狙いかな?
補助スキルには、効果時間が決められているスキルが有ります。補助スキルは、成長させるとスキル時間が伸びます。ちなみに、グレンのスキルカウンターが180秒。僕の、スキルブーストが360秒。
2人は、この効果が切れるのを恐らく待っている。
やっぱり、グレンのスキルカウンターが切れた。まぁ、ダメージは通らないし大丈夫だけど。
「うははははっ、回復役を狙うぞ!」
なるほど、僕を狙いますか。でも、そう簡単にグレンが通してくれるでしょうか?おや、囮ですね。ネネさん、遠距離攻撃ですか。受けてたちます!
「グレン、下がって【聖結界】。おや、固有スキルで補助が不発ですか。補助スキル妨害は、厄介ですが育ててないので確率発動みたいですね。ほぼ、運しだいって感じでしょう。警戒は、必要なし。隣のエルフ、ネネさんは固有は無しだと予想。」
「その根拠は?」
グレンは、楽しそうに振り向いて聞いてくる。
「もう、発動させないと勝ち目は無いですから。」
僕は、含みを込めて満面の笑顔。スキルには、キャストタイムが長く直ぐに使えないスキルがある。さて、キャストタイムがそろそろ終わります。
「なら、任せる。俺も、少しは温存したい。」
「では、【聖なる滅び(ホーリーフォール)】。」
全滅完了。何だかんだ、強いスキルを使ってしまいました。でも、それなりにゲームしてる聖職者なら使えますし良いでしょう。まぁ、ホーリーフォールは聖職者では不人気スキルなんですけどね♪
これで、使う人が増えたら面白いですよね。逆手に取って、人気スキルで潰すのも有りかも?
まぁ、そう簡単には行かないでしょうけど。
『おっと、ここで大技キター!?そして、効果は絶大でしたぁー!』
『回復役で、待機が長い短所をスキルキャストで潰して来ましたね。これは、斬新だ!つまり、回復やバフを与えつつ魔法攻撃スキルを待機させてた事になりますね。今まで、無かった発想です。前まで、キャスト中に他のスキルを使うなんてしませんでしたからね。だって、キャスト中にスキルを使うとキャストが伸びますから。ですが、最後に使う事を計算して最初から使ってたならヤバいですよ!』
まぁ、計算して使ってましたよ。でも、言わないで欲しかった。まったく、面倒ですね………。
「ルイス、お疲れ様。」
「グレン、少しでも温存は出来ましたか?」
すると、グレンはサムズアップ。良かった、温存は出来たようですね。さて、観戦しま………
「何で、お前がイベントに居るんだ?ルイス。」
グレンは、ルイスの腕を引っ張る。剣が、空を斬る音がしてグレンは低い声で怒りを現す。
「おい、危ねぇじゃんか!」
「何だ、てめぇ………ぶっ殺すぞ?」
ルイスは、深いため息を吐き出したのだった。勿論ですが、まだカメラは僕達を写していたので………。
『おや、面白い展開になりそうですね。』
『ルイスくん、今なら正当防衛になるよ。』
運営……、完全に楽しんでますね?
「仕方ない、グレン……」
「ん?」
グレンは、キョトンとしている。
「先に、観戦室に戻ってください。」
「でも……」
「また、イベントに付き合ってあげますから。」
「よし、先に戻ってる!」
嬉しそうに、走り出すグレンを見送る。そこで、ルイスの雰囲気が冷たいものに変わる。
「ねぇ、馬鹿タカ。君、モルモットにされたいんですか?今なら、新薬のモルモット募集中ですよ。」
すると、さっきの威圧感が消えてピシッと姿勢を直すイワタカ。そして、完全に怯えてしまっている。
『おやぁー?何か、ルイスくん、雰囲気が………えっと、どっちがロールでしょうかね?』
『今のが、ロールだぜ。ちなみに、俺が頼んで炎天神楽に居たときさせたロール。なお、炎天のベテランクラスはルイスにロールされると絶対に全面降伏します。というか、ベテランクラスはルイスを激怒させた過去が有りもはやトラウマなんじゃないかなと?って、元炎天神楽リーダートキヤが解説しとくぜ。ちなみに、ルイスは悪くないからな。』
トキヤは、苦笑しながら実況室に入り解説する。
『なるほど、ありがとうございました。』
「すみません!その、ルイスさんに会えたのが嬉しくてつい………。でも、ロールやめたんですね。」
「ロールしないと、ちょっかい出すんですか?ならば、覚悟しておいてください。僕は、ロールしてなくても怖いですよ。ちなみに、トキヤさんとレンジさんが言ってた事ですから………ね?」
すると、青ざめ逃げ土下座している。
「本当に、すみませんモルモットだけは!」
「いや、そこに怯えてたんですか?」
思わず、ツッコミを入れてしまう。
「え?」
え?じゃない!まったく……
「あの、ロール時代にモルモットにされた事はないですよね?僕は、そういうの好きでは無いですし。やっても、ゴーレムに追いかけさせたりノルマを増やすくらいでしたよ。しかも、ゴーレムは動きが遅いから毎回のごとく逃げ切れたですよね?」
「はい、毎回ギリギリでしたが!」
なるほど……。何か、複雑な気分です。
「そうだ、何で炎天の勧誘を断ったんですか!」
「気に入らないから。知ってます?奴は、僕が助けている初心者にPKを送ったんですよ。これは、炎天の方針に逆らう行為です。それが、リーダーなんですよ?貴方は、それでも今の炎天に居ますか?」
すると、会場がざわめく。
「なるほど、ベテランまとめて抜けて来ます。出来れば、トキヤさんかグレンさんがクランを創ってくれたら嬉しいですが。そっちは?」
「それは、無いですね。2人とも、僕のお店で働いてますし。勿論、狩りには行ってるようですが。」
すると、目を輝かせるイワタカ。
「ルイスさん!」
「嫌です!クランは、創りません!」
ルイスは、心底嫌そうに言っている。
「でも、期待してます。だって、トキヤさんも会場に居るんでしょ?なら、クランの話をしたら絶対に食いつくはず。ルイスさん、ここは腹を括って……」
「とにかく、創りませんから。ほら、解散解散!」
イワタカは、残念そうに去った。ルイスは、深いため息を吐き出したのだった。
あー、疲れました。癒しが欲しいです。観戦室で、リルとソルをもふもふして癒されましょう。