第5章 本当と疑惑
第5章 本当と疑念
ゴールデンウィークが終わった最初の休日に、私達は山道を歩いていた。動き易い格好にしてきてと言われて、スニーカーにジーンズを履いてきたのが役立った。休日に45度くらいあるのではと思う程の急な坂を上る事は石崎君がいなければ一生無かっただろう。実際は大体15度くらいらしいが息も絶え絶えに上っている側としてはそんなことどうでもいい。45度だろうが15度だろうが、急な坂であることに変わりは無いのだ。
いつも通り堤防で待ち合わせをして、石崎君がラーメンを食べに行くと言うから喜んでついていけば、2時間延々と電車に揺られ、いつの間にかこんな終わりの見えない坂を一時間以上も上っていた。詐欺だ。ラーメン詐欺。動き易い格好とはつまりそう言うことなのだが、それでもこれは詐欺なのだ。
「もうちょっとだから頑張って」
ばてている私を見て笑いながら言われているのが悔しいが、今は不満をぶつける余裕がない。呼吸百パーセント。他に割く力などあるはずがない。
辺りは山。緑が多く、久しく手入れの施されていないコンクリートの坂が真っ直ぐに上へと伸びている。右を見ても左を見てもあるのは木。前を見ても後ろを見てもあるのは道。延々と伸びる坂に何度心折れそうになったか分からないが、その度に休憩を提案してキャラメルやチョコレートをくれるのだ。そこに飛びついてしまう私は石崎君の手の上で転がされているんだろうけど、あくまで石崎君の好意を断るのは悪いから受け取っているという気持ちを強く持つ。そう、私は食べ物で釣られているのではない。あくまで石崎君の好意を受け取っているだけなのである。
急に開けた所に出たと思えば、そこにはこじんまりとしたラーメン屋が建っていた。お昼時というのもあってか長蛇の列になっている。
「ラー、メン……着いたぁぁぁぁぁぁぁ!」
肺の空気を出し切る勢いでそう言うのを聞くなり石崎君は笑いだした。
「さすが三上さん、ラーメンしか見てないところがいいよね」
「え?」
石崎君が指さしていたのは私の左側。展望台になっていて、小さくなった街を一望できるようになっていたのだが、そんなものは言われるまで視界に入ってすらいなかった。
「な、何よいいでしょ! 私はラーメン食べに来たんであって、景色を楽しむためにここまで来たんじゃないんだから」
そうだ。私はラーメン食べに来たんだから!
「ははは、いいと思うよ。じゃあとりあえず並ぼうか。この分だと二時間以上はかかりそうだけど」
長蛇の列は店を囲むように長く伸びており、店の中にいつ入れるのか分かったものではない。それでもここまで来たのだから食べずに帰るという選択肢は無い。
「大丈夫! 何時間でも待てる!」
「さすが三上さん」
ガッツポーズをした私に石崎君がパチパチと小さく拍手した。
最後尾に並ぶと、1分もしないうちに後ろに別のお客さんが並んできた。そうして10分経つ頃には後ろに立派な列ができている。
「すごい人だね」
息を切らして坂を上がってくる人達を眺めながらそう言うと、石崎君は嬉しそうに言った。
「ここはいつも行列ができてるラーメンで、1回来てみたかったんだ」
「そんなに美味しいのかなぁ」
「俺も気になってたんだけどなかなか1人で来るには勇気が出なくて」
片道3時間以上もかけて1人でここにラーメンを食べに来るのはいくら食欲の化け物という私でも諦める。と、いうよりも近場のラーメン屋でいいかという妥協に負ける。
並んでいる間何もすることがないこともあって、幸運にも私は石崎君とただゆっくり話す時間を過ごす事ができた。
「そうなんだよ。ボールが転がってきたから投げてあげたんだけど、絶対野球してたよねとか言い出して、ピッチャーやってくれって頼まれて断りきれなくて、結局子供達が帰るまでピッチャーしてたことあったなぁ」
「そういえばずっと野球してたんだもんね。体って覚えてるもんなんだね」
「そうなんだよ。俺自身は覚えてないんだけど、実際投げてみたら思った通りの所に飛んで行くもんだからびっくりしたよ」
体だけが覚えている記憶と言うのは不思議な感覚なんだろうなと思う。自分は分からないのに体はしっかりボールの投げ方も、投げる軌道も覚えているのだから。明るく話すけれど、本当は心の奥底で辛さや悲しさを押し殺してるのではないかと心配になる。何が引き金になって今度また記憶を失ってしまうか石崎君自身も分からないのだ。
その時は私の事も忘れてしまうのかな。一緒に過ごしてきた時間も石崎君には無かったことになってしまうのかな。そしたら私は明日、石崎君にとってはじめまして、になるのかな。
「最近はストレスとかない? 全部無いってことは難しいと思うけど、記憶障害が起こってしまうくらい辛い事とか。話を聞くぐらいだけど、でもできる事なら」
「大丈夫。最近はそんなにストレスとかないし、記憶障害も無いし、何より三上さんとこうやって楽しい時間過ごせてるから問題ないよ」
不安ではないのだろうか。怖くは無いのだろうか。もう二度と記憶が消えない保障なんて無いのに。
「大丈夫だって。そんなに心配しなくても、三上さんの事は忘れないよ」
私の心を見透かしているのだろうかと思う時がある。あまりにも優しい顔でそう言うから、私は何も言えなくなってしまう。
「忘れないよ、絶対に」
声のトーンが急に低くなる。
「え?」
「だって、こんなに面白いのに忘れろって言う方が無理でしょ」
唐突に携帯の画面を見せられた。そこには子供の持っているパンダの肉まんをじっと見ている私が映っていた。
「ちょっと! いつ撮ったのそれ!」
「いやぁ、あまりにも物欲しそうで、つい」
つい、じゃなぁぁぁぁぁい!
画面を見ながらクスクス笑っている石崎君から携帯を奪おうとしたが、すかさず石崎君は腕を上げる。私が背伸びをしようがジャンプをしようが携帯にはかすりもしない。
「消してそれ! 今すぐ消して!」
「それは無理なお願いだなぁ。本当にばっちり撮れてるもんな」
私に届かないように高い位置から画像を見ながらそう言われ、恥ずかしさに顔が真っ赤になる。
石崎君との時間はあっという間に過ぎていった。ただ話しているだけなのに、それだけで私は幸せで、楽しかった。石崎君が笑っていて、私も笑っている。これだけで本当に嬉しくて、そうこうしているうちに私達は店の中に案内されたのだった。
店内に一歩入ると、熱気とラーメンの香りで満ちていた。厨房では白い蒸気が立ち上り、あちこちで注文する声と麺をすする音が聞こえている。スタッフは全員ラーメン魂と書かれた黒いTシャツを着ており、その誰もが額に汗を浮かべていたが、厨房の中で忙しく動き回る男性は汗で首元の色が変わっていた。ラーメンを運びに行く間にカウンターに次々出来上がったラーメンが並び、店員はノンストップで店内を行ったり来たりしていた。
「こちらの席どうぞ」
女性の店員が窓際の席に案内してくれる。その女性も頬には汗が伝っているが、全く疲れを見せない明るい笑顔で接客してくれた。
「頂上ラーメン2つでよろしかったですか?」
石崎君が私に一言かける前に答えた。
「はい、2つでお願いします」
それで良かったのかと言いたげな石崎君に、これでいいのと返しておく。この店のラーメンは頂上ラーメンというオリジナル一品のみ。このラーメンを食べるためにたくさんの人が連日時間をかけてここまでやってくる。こういった人気の所では絶対に1人前だけ注文すると言うのは当たり前の話だ。たとえ他の人よりも何倍も食欲があって、何倍も食べるのだとしても。
「やっぱり、三上さんだね」
「石崎君ってよく言うよね。やっぱり三上さんだーとかさ」
「いやぁ、やっぱり三上さんだなぁと思ってさ」
「何それ。私にどんなイメージ持ってるんだか」
石崎君はにっこりと笑った。
正直一体石崎君が私にどういうイメージを持っているのか知りたいが、それが食欲と常に葛藤する食欲化け物系女子みたいなイメージだったらちょっとショックだ。まぁ、もう女子とは言えない大人なのだが。
ラーメンは注文前より絶え間なく作られているようで、私達が頼んだ2杯も5分足らずで運ばれてきた。この店オリジナルの手作りチャーシューが3枚と、高く盛られたネギ、そして特製のスープに浸かっている極太麺。そして、「頂上ラーメン」と印字された海苔が添えられている。豚骨スープがベースなのか、湯気と一緒に舞いあがる香りに早くもお腹の虫が大合唱である。手を合わせてから食べると、何時間もかけてここまで来た努力が報われた気がした。
「美味しいね、これ」
「いや、これはもう美味しいなんてもんじゃないよね! なんかこう、ここまでこの一杯を食べに来る人の気持ちがやっと分かったって言うか、ここまで頑張ってきたからこそこの味が染みわたると言うか……。あーもうこれ家の近くにあれば毎晩仕事帰りにでも食べるのに!」
前から高らかな笑い声が聞こえてきてようやく今目の前にいるのが咲ではない事に気づく。
「あ……」
心の中に留めておくはずが、思わず出たその一音さえ口から出てしまっている。
「やっぱり、三上さんだよね。誘って良かったよ」
と、目に涙を浮かべながら大笑いされながら言われてもちょっと複雑である。やっぱりとはなんだ、やっぱりとは。それでも、誘って良かったと言われた事で不満に似た気持ちは消え失せた。石崎君が他の人ではなく私を誘って良かったと言ってくれているようで、私が特別なようで、嬉しさが勝ってしまうのだ。
紅葉が目の前を左右に揺れながら落ちていく。色づいた木々が立ち並ぶ山の中に伸びる自然の道。風に乗ってくる銀杏の匂い。踏みしめる度に靴を通じて感じる柔らかい土の感触。道を歩く。そうして開けた所には展望台がある。遠く、一面が深い青に染まった場所がある。海だ。展望台にはクジラを模したキャラクターの銅像が建っており、それは2メートル以上もある巨大なもの。音は無く、ただ何かに気づいたように景色が後ろへと回ろうとする。
―ダメ。
左へと進んでいく視界に、クジラのキャラクターが右へと消えていく。
―ダメ。見てはダメ。
否応なしに視界は真後ろを捉えた、その時、目の前に突然落ち葉が大量に飛んできて――。
「三上さん?」
耳元で聞こえた声が一瞬の間に私を現実に引き戻す。思わず足元を見るが落ち葉は無い。今目の前に広がっているのはミニチュアサイズの街。点のような車が動きまわり、家々が地面を覆い、遠くには山が並んでいる。海は、無い。
「大丈夫?」
石崎君が心配そうに覗きこんでいる。
「大丈夫。ちょっとぼーっとしちゃっただけだから。ほら、だって景色がすごい綺麗じゃない。思わず見惚れちゃった」
数歩進んで思い切り伸びをした。心配なんてかけたくなくて、自分がまた知らぬ間に夢を見ているのが怖くなって私は笑った。
どうして、振り向いちゃダメだと思ったんだろう。それに、今日の夢は今までと違って匂いから、感触から、本当にリアルだった。何故か、振り向くのが怖かったのよね。一体私どうしたんだろう。でも今はそんなこと考えるのはよそう。せっかく石崎君と一緒にいるんだから。
「本当に無理しないでくれよ」
「大丈夫だよ。石崎君だってそんなに心配しないで」
大丈夫。大丈夫。病気、じゃないよね。だってこんなに元気なんだから。大丈夫。少し疲れただけ。そうよ、今日は早く寝よう。
何度もそう自分に言い聞かせながら、展望台からの景色を笑顔で楽しんでいる反面、不安は募る一方だった。私は何か病気をしているのかな。本当は重大な病気をしていて、今はまだ自覚症状が少ない、とか……? 違うよね。違うよね。私、だって、夢を見ているくらいで。
「今日は、もう帰ろう」
私の不安は表情に出ていたのか石崎君は強くそう言った。
いつもの堤防に着く頃には辺りは夕焼けになっていた。私の体調を気遣ってペースを落として歩いたことで行きよりも時間がかかったせいでもある。心配なんてしなくて大丈夫だと言っているのに石崎君はまるで聞かなかった。山道も下りだから休憩なんてほとんど必要ないのに細かく休憩をとる時間を設けては私の体調を気遣った。石崎君は絶対に私の手を離そうとせず、手を伝ってくる温かさに不安も少しずつ消えていくようだった。
堤防には私と石崎君の二人の影が伸びており、川も煌めいていた。もう一日が終わるのかと残念な気持ちになりながら歩いていた時、不意に石崎君が視界から消えた。数歩進んでから後ろを振り向くと、石崎君はその場に立ちつくしていた。
「三上さん」
いつもと違う真剣な雰囲気で石崎君は真っ直ぐに私を見ていた。
「俺、三上さんが好きだ」
それはあまりに直球で頭がついていかない。一体今石崎君が何を言ったのかと脳内で再生してみる。
「いつも明るくて、食べる事が大好きで、それでいて優しくて、そんな三上さんと一緒にいると幸せでもっと一緒にいたいって思うんだ。だから、俺と付き合ってくれないかな」
心臓の音がはっきりと聞こえた。今まで気にした事も無かったのに、今はうるさいぐらいに大きくて、脚が震えてくる。
石崎君が、私を好き……?
あまりにも夢の様で、一瞬理解できなかった私だが、返事なんてとっくの昔に決まっていた。
「私も……私も、石崎君の事が好き。私で良ければ、喜んで」
その返事に石崎君は一瞬驚いた顔をした。余程私に断られると思っていたのか、数秒驚いた顔のまま動かなかった。そうして、その表情のまま涙が零れ落ちた。
「石崎君?」
心配になって少し近づくと気がついたように目を腕で擦り、手の甲を目に押しつけるようにして笑いながら泣く姿はどこか寂しそうにも見えた。
「ごめん。なんか、こんなにうまくいくなんて思ってなくて」
「石崎君って案外涙もろいの?」
「そうかも、しれない」
そう言って涙を流す石崎君の傍に私はいつもより近く寄り添った。私は支えられるんだ。いつもより近い場所で石崎君を支えられるんだ。恥ずかしさみたいなものは特に感じなかった。ただ、胸が一杯で、これ以上に無いくらい幸せだった。
石崎君が落ち着いた頃、ようやく実感の様なものが押し寄せてうまく石崎君の顔を見れなくなっていた。石崎君が私の彼氏だと考えるととても信じられなかったが、どこかいつもより近い距離がそれを実感させた。
「じゃ、じゃあ、私帰るね。私からも、連絡するようにするし、その」
言葉がスラスラ出てくれない。口がカラカラで、声も小さくなってしまいそうだ。
「石崎君からも、連絡を、あ、いつもしてもらってるんだけど、その」
腕が何かに引っ張られたと思ったその瞬間、何かにぶつかった。それが石崎君だと気づいたのは耳元で声がしてからだった。
「俺も連絡するよ、桜」
初めて名前を呼ばれて、心臓が凍りつきそうになる。脳が思考を停止している間に石崎君は体を離して手を振っていた。
「無理するなよ。じゃあ、桜、また来週」
好きな人から呼ばれる名前と言うもの程破壊力が大きいものはきっと無いに違いない。呼び返すのもまた勇気がいるが、私は何でもないように大きく手を振った。
「うん、また来週ね。圭太君」
その日、私達は恋人同士になったのだった。
オレンジに染まった公園のベンチに、圭太は座っていた。先ほどまでの事を思い出すと、堰を切った様に涙が溢れだす。
「なんで、俺は……なんでこんな事しなきゃならないんだよ……」
悔しさに似た感情がこみ上げて歯を食いしばった。次々に頬を伝い落ちていく涙をこらえきれずにいた圭太の傍に小さな影が歩み寄る。
「おにいちゃん、またかなしいの?」
その声に、圭太は涙を拭いて静かに顔を上げた。そこにいたのは以前も泣いている圭太を気遣ってくれた五歳程の少年だ。そっと隣に座った少年に圭太は言った。
「あぁ。俺が選んだんだ。俺が選んだのに、辛くてたまらない。この選択が合っていたのかも分からない。こんな事、しなくてもいいなら良かったのに」
少年は圭太の事情を理解できていなかったし、理解できる話をしてくれているのではない事も分かっていた。理解できないからこそ話しているのだろうとそれとなく思いながら、ただ傍で話を聞いてみる。あまりにも悲しげで辛そうな圭太をじっと見る。
「ごめん、意味分かんないよな」
圭太は少年に無理矢理笑顔を作る。
「ううん、いいよ」
「ありがとう。優しいなぁ。友達と遊んできたらいいのに」
圭太が言うと、少年は首を横に振った。
「もういっぱいあそんだよ。さっきもさよならしたの」
そう言って指をさした方向には人が通る度走って逃げ、時に牙を剥くので有名な黒い野良猫がいた。
「触れるのか?」
そう尋ねると、少年は嬉しそうに頷いた。
「なかよしなんだ。ここにきたらいつもすりすりしてくるんだ」
「それはすごいな。君は動物と仲良くなれるすごい力を持ってるみたいだね。俺にはできないよ」
それでここに来るのかと内心納得しながら、圭太は少年に尋ねた。
「君、名前は?」
「ぼくはこうきっていうんだ。おにいちゃんは?」
「いい名前だな。俺は圭太だよ」
「けいたおにいちゃん」
無邪気な表情に自然と頬を緩ませながら、圭太はこうきに言った。
「じゃあ、もう暗くなってきたから帰ろう。俺も帰るから、こうきも真っ直ぐ家に帰るんだぞ」
「うん!」
大きく頷いて返事してから、こうきは家に向けて走り出した。その姿を見送って、圭太もまた家へと帰って行くのだった。
こうきが家に帰ると、玄関で女性が仁王立ちしていた。髪を1つに束ねた仕事帰りの女性で、眉間にしわを寄せて怖い顔をしているが、こうきは特に気にしなかった。
「またこんな時間に帰ってきて、危ないでしょうが」
そう言って自分の事を見てくれるこの女性がこうきは大好きだった。遅い時は捜しに来てくれ、怒るけれど結局自分を第1に考えてくれるのが幸せだった。
「もう、こんなに遅くなるならこれからハンバーグ作ってあげないから!」
真剣に言っているが、こうきは嬉しそうに笑って足に抱きついた。
「えへへ、ごめんね、さきおねえちゃん」
咲もまた抱きついてくるこの少年に小さく息をついて抱き上げた。
「もっと遊んであげられる時間作るから、お願いだから早く帰ってきてくださいね、武藤光輝君」
「はぁい」
「咲、光輝、早くご飯にするわよ」
リビングから聞こえてきた声に、2人は歩きだした。
「また桜にドタキャンのこと謝らないといけなくなりそうね」
咲は前を走って行く弟光輝の背中を見ながらそう呟いた。