4ー見学する
読んでくださり、ありがとうございます。
短いのですが、何度書き直しても纏まらないので、投稿してしまいます。
前回のあらすじ
ヤマダ・スットン はラッキーネーム☆
ヤマダ自身はアンラッキー!
兄は当然受け入れられた。
というか、今までに無い受け入れ方をされた。
ハッキリ言うとアイドルになった。
社交界では、まず無い扱いだ。正直ドン引く。これが若さか……。
アイドルになった兄は、最初の授業で騎士の心得を説いた。
「騎士にとって一番大事なものは何か。それは馬だ」
その日は特別授業となり、参観する親の気分で皆と一緒に見学していた私は、内心アワアワしていた。それは騎士の前提条件で、もっと違う事があるだろうと。
しかし兄のインテリ腹黒眼鏡外見効果が漏れなく発揮され、見落としがちな事を教えてくれると評価された。
次に大事なものは体力だった。
「対象者より先にへばる者が警護出来るのか!? ずっと立っていたら倒れる者が守れるのか」
そして学年問わず、延々と走らされていた。
理念や精神性は二の次どころか、気配すら感じられない。
これも基本の大事さを教えられたと好評だった。死屍累々といった感じで地面に倒れながら、そうした張本人を讃える光景は、不気味でしか無かった。
ちなみに、命を預ける相棒は肉だった。
……お肉は美味しいね。
「あんな素敵なお兄様がいらっしゃるなんて、いいなあ、いいなあ、羨ましいなあ」
男爵令嬢のカーラに絡まれるようになった。彼女は "大人可愛い" といった雰囲気の女性で、何とヤマダの取り巻き、ブーの婚約者だ。
「カーラさんにだって、カッコいいお兄様がいるでしょ」
気さくで、エスコートもスマートに熟す青年だったはずだ。
「そうですよ。夜会でお会いした事ありますけど、人気ありましたよ」
サンドラも同意する。
「うちの兄様も悪くないですよー。でもサイモン様! 毎日見たい〜」
クネクネ悶えてる。
「あ、結婚すれば毎日一緒ですね! アイリーンさん、どうですか、私と姉妹になりませんか!」
「ならなくていいかな」
「それは『なってもいい』ってことですね! いやん、どうしよう! 私とサイモン様の、愛を育む手伝いをしてくださいね。私、良い妻になっちゃうと思うんですよねえ。うふふ、そしたらアイリーンさん、居づらくなっちゃうかなあ? でも大丈夫ですよ! 私は優しいからちゃあんといだだだだだだ、ギブ! ギブ!」
五月蝿いハエを静かにさせるには、アイアンクローがいい。
実は私も脳筋寄りだ。
こうして私が力で黙らせても
「サイモン様がいらっしゃるところに居合わせたら、ちゃんと紹介してくださいよお」
結構普通に受け入れられている。
というか、君は婚約者いるだろう。
ここは、ゲームの存在した当時の日本人に優しい仕様なのかも知れない。
正式な場で無ければ、言動については、意外に自由度が高い。
偶に転生者じゃないかと思う人もいる。
例えばリチャードの友人、ダグラスだ。彼はヤマダの名を呼ぶ時に、一瞬微妙な表情を浮かべるのだ。
他にもマナーやしきたりなどに、疑問を感じる人もいる。前世が西洋人かも知れないなと思う。
ただ皆ハッキリとした記憶がある訳ではないようだ。
私は以前、兄に前世の記憶があると告げた事がある。
しかしこの国には、輪廻転生や前世といった概念が無いので、上手く意図を伝える事が出来なかった。
「サイモン。私、生まれる前の記憶があるの」
「腹の中に居た時の記憶か? 凄いじゃないか」
「お腹にいる前に生きた人生の記憶よ」
「? 天国に居た時という事か?」
「そうじゃ無くて、私は別の人間だった記憶があるの」
「別の人間だったら、お前じゃ無いだろう? それは別人だろう? 何の関係があるんだ?」
話した相手が悪かったのか、私の説明が悪かったのか。どうでもよくなり「うん、ホントだ。何の関係もないね」と答えた。
その時は理解は得られなかったが、最近ヤマダがその理解者になり得るのでは無いかとにらんでいる。
切っ掛けは、リチャードがヤマダの落とした本を拾った事だ。
その後「バストアップ体操って何だ? 中興の祖がする事なんだろう?」とダグラスに聞いているのを耳にしたのだ。
果たして彼女は同士となり得るのか。
告げるべきか否か、悩んでいる。
どうしたら文頭を一字空けられるようになるのでしょうか。謎です。
※謎が解けました。