私はヤマダ
少々 えー? となる閑話です。
次話の前書きにあらすじを入れておりますので、読み飛ばしても大丈夫です。
タイトルは忘れちゃったけど、乙女ゲームをやってた。
ヒロインの名前が変でも、無料だったから。
先ず最初に王子をクリアして驚いた。会うだけで、好感度がどんどん上がる。特に何もしてないのにハッピーエンドになった。
そのエンドが、王子が卒業パーティーで断罪を行い失敗。しかしそれで身分を落とし、ヒロインと『ちょっと貧乏だけど子沢山で愛ある楽しい生活』を送るのだ。
乙女ゲームにそんな現実的な幸せ求めてねーし。
ならばと会う回数を減らしてノーマルエンドを迎えれば『私には婚約者がいるので、君の気持ちには答えられない』という。
普通だな。普通そうだな。でもなんか好きでもない奴からフラれた気分になるのは何でだろうな!? 敢えて接触減らしたのに、簡単に好感度上がる奴から言われたからだろうな。あとヒロインが勝手に告白したからだろうな。
そこは選択肢出そうや。
バッドエンドでは、政略で好きでも嫌いでもないが子爵家の嫡男と結婚して、貴族として普通に幸せに暮らす。
バッドエンドが一番いいんじゃないのか、これ。
イベントも、なんか違う。
きっかけは全てヒロインの運の悪さとドジ。 落とした本を拾って貰うのはいい。でも落ちた時に、偉人のおっさんの肖像画に落書きしたページが開かれてなくてもいいと思う。(この時はのちに見覚えのある肖像画に喜び、同じように落書きをして、さらに『すいませんすいませんバストアップ体操しててすいません』と吹き出しを付けたのを見られるとは思いもしなかった。)
しかもこれ好感度が上がる訳じゃないのだ。上がったら寧ろおかしいけど。……まさか上がったご褒美じゃないよね。
でも一応イベントをこなしてスチルを集めた。公爵令息のリチャードと、幼馴染のロバートの分も。
コレクター気質で、空白が許せないんだよ。
基本的に皆んな会うだけで好感度が上がる事もあって、やる気が起きない。
でも何とか繰り返して全部埋めた、と気を抜いたところで意識が無くなった。
声が聞こえる。
一人の声が反響してるのか大勢なのか分からない、不思議な声だ。
『未だ現れない』
『実験の準備は整っている』
『何処まで人を理解出来たか』
『確認しよう』
何だろう。怖い。虫ケラにでもなった気分だ。
物陰に潜んでいて、人に見つかったら潰されちゃう、そんな感じ。
『他の箱庭の要因は』
『揃っている。後は』
『居る』
『居る』
『居る』
『クリア者が出た』
『早速送ろう』
意識が途切れた。
次に気付いた時は、既にヤマダ・スットンだった。
私が産まれた時、何故か親族含めて全員一致で『ヤマダ』に名前が決まったそうだ。
誰かおかしいと思えよ。
長じて聞けば「これより相応しい名前は無いだろう」と父に言われた。母も、うんうん頷く。その当時はまだ生まれてなかった弟まで頷いている。
そんな父も、スットン伯爵とは呼ばれない。スットン卿の一択だ。うっかりすると家族までそう呼んでしまう。
名前の強制力、強すぎだろ。
はっきりとした強制力は、今のところ名前でしか確認出来てない。
幼馴染に三つ上のロバートはいるが、私が学校に入る前に別の女性と結婚している。
相手は花屋の色っぽい姉ちゃんだった。
私の容姿は可愛いとは思うけど、正直ティーンエイジャーにしか見えない。普通そっちを選ぶよね。くそっ。
でもこれなら平穏に学校生活が送れるかも知れない。
という願望を抱いてたんだよねー。
―――???のヤマダ設定会議―――
『行動 思考を観る為』
『試練を与えよう』
『運の調整』
『乗り越えられるか』
『加護を付ける』
『何に』
『人は名と愛を大事にする』
『愛される名にしよう』
『何が愛される』
『普遍的なもの』
『多くの場所で』
『長く使われる』
『ヤマダ』
『ヤマダ』
『ヤマダ』
『変わらぬものの安寧を』
『変化の観察を』
『不意をつく』
『意表をつく名』
『判らない』
『それは実験で得るもの』
『では似た意味の言葉』
『素っ頓狂』
『名ではない』
『敬称で卿』
『では』
『スットン卿』
『停滞を打ち破る』
『高揚を』
『容姿は』
『どの生き物も』
『幼な子は愛され易い』
『そのように』
これによりヤマダの父であるスットン卿、ジョセフ・スットンは、意外な提案で困っている友人や領民などを助け、お祭り気分にさせてしまう人物として、とても愛されることになる。
『ヤマダの加護』
『半分に』
『また人を理解した』
『成果を祝おう』
何か書き忘れているような…。
6/18 思い出したので、少し書き足しました。
ヤマダは運が悪いという意味合いです。