『おざなり』『なおざり』 おざなりにするのはまだ良いけどなおざりには絶対しちゃいかん
僕は今日もパソコンと向き合って小説を書く。
言葉は生き物だ。
人の心を動かす魔物と言ってもいい。
だが、ただの文字の羅列でもある。
それをどう調理していくのか、それが小説家に求められるものだ。
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『なんで俺がテントをはらないといけないんだ。あー適当にやろ』
『こら、なおざりにやってはいけないぞ』
『そうだぞ。ちゃんとやらないと後悔するんだからな』
先輩達に言われて、僕はしぶしぶ作業を続けた。
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「よし」
「ふぇーっくしょん! いやいや、よしじゃないでしょ」
一段落して満足した僕にくしゃみをしながらレッコンが文句をつけてくる。
「どこが問題なのさ?」
「ちょっとちょっと、なおざりをその使い方をするのはダメだよ」
「え? なおざりって適当にって意味じゃないの?」
「あってるよ。あってるけどこの場合は『おざなり』の方がいい」
「おざなり? なおざり? 音が似てるけど……」
「良く似てるし意味も似ているよ。でも少しだけ違いがあるんだ」
レッコンは鼻水をかみながら教えてくれる。
そして、どこからかホワイトボードを取り出して
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『おざなり≒なおざり』
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と記入した。
「君がつかった『なおざり』は『おざなり』と同じようにいい加減なのは変わらないよ。
でも、そのいい加減の意味が違うんだ」
「どう違うのさ、レッコン」
レッコンはホワイトボードに書き足す。
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『おざなり』
いい加減でも処理をする。手を抜くが最後までやる。
例)おざなりな仕事で客を怒らせてしまった。
※仕事を最後までしているが手を抜いたことで相手を怒らせている。
なおざり→いい加減に聞き流す。適当に避けて通る。
例)なおざりに苦情を聞いた為、重大な損害に繋がった。
※苦情を聞き流し、最終的に何もしなかった。
『おざなり』と『なおざり』の違いは『行動をする』か『行動をしない』かの違い。
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「微妙に違うけど、こんな感じに使い分けされているんだ」
「へえ……知らなかった」
「そう、知らなかった。でも君は知らないことをたぶんあってるだろうとして調べなかった。君は小説を書くことは『おざなり』にやったかもしれないけど、言葉の意味を調べるのは『なおざり』だったね」
「うぐ……」
レッコンの言葉に僕は反省をするのだった。
小説家は調理が大事だと言った。
なら言葉は調味料。
調味料選びも大事なことだ。
「これからは気をつけるよレッコン」
「いいってことよ」
そうして僕は再びパソコンへと向き直るのだった。
レッコン→lexicon→語彙目録≒辞書




