『火蓋が切られる』『幕を切って落とす』 大御所過ぎるぜ、この誤用はよ……!!
「戦う描写って難しいなー」
僕は頭の後ろで手を組み、背もたれに体重を掛ける。
上手く書けない時、そう言う時は書けるところから書けばいい!
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戦場の空気は張り詰めている。
僕の号令一つで、戦いが始まるだろう。
士気は高い。
僕は大きく息を吸う。
吐き出すは戦いの開始の合図。
『総員突撃!!』
『『うぉぉぉぉぉッ!』』
こうして、戦いの火蓋が切って落とされた。
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「誤用ッくっしょん」
レッコンの謎くしゃみが炸裂する。
どうやら、また何処か誤用してしまったらしい。
「今回は何処を誤用してるの?」
「今日は素直だね」
「そりゃそうだよ。これだけ誤用してるとね、自分でもまずいなって思うし」
「なるほどなるほど、そう言う考えは大事だよね」
レッコンはいそいそとホワイトボードを取り出す。
うん、機嫌が良さそうだ。
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『火蓋が切られる』
火蓋が切って落とされるのは誤用。
火蓋が切られるは、火縄銃の安全装置である火蓋を開くことを意味している。
この『切る』は『開く』という意味で使われており、火蓋を開くことで何時でも撃てる状態にすることから、転じて物事を始めるという意味、
よって『戦いの』がつくことでこれから戦いが始まることを表現している。
誤用の原因は歌舞伎用語にある『幕が切って落とされる』との混同であると考えられる。
※一度だけ、わざと戦いの火蓋が切られるという表現をした人を見た事がある。戦闘開始!の後即終了という展開で、肩透かしを表現していた。分かる人にだけ分かる表現だと作者の方が言っていました。
『幕を切って落とす』
元々は歌舞伎用語。
物事を華々しく始める、という意味がある。
例)全国大会の幕が切って落とされた。
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「あー、混じっちゃったのか。両方知ってる言葉で似たような意味だもんね」
「そう、誤用はこう言う所から始まるんだ。それは仕方のないことだよ」
「でも、仕方ないで止まっちゃダメなんだよね?」
「そうそう」
僕はレッコンと一緒に口元を緩めたのだった。




