表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/29

もしかして:おちこぼれ

 その後しばらく人型になろうと頑張ったけど、やっぱり無理だった。

 何がいけないんだろう?

 ちゃんと人間の姿をイメージしてるんだけどな。


 ちょっと体の回りが銀色に光るけど、それだけ。

 性別が定まってないらしいから、女性と男性、両方の体をイメージしてみたけど、どっちもダメだった。


『まぁ時間はたっぷりあるんだから気長に頑張ってみなよ』


 なんて木の精霊(イルミール)は言うけど、せっかくなれるってわかったんだから、なってみたいじゃん?

 でもまぁ寿命が数百年あるらしいし、確かに焦る事もないか。


 いやいや、いつまたお肉食べられるか分からないから、人里に降りてお買い物しないと!

 第一の目標は人型になって人里でお買い物だ!

 あ、でもお金ないや。それも考えなきゃね。


『人型になれたらリンゴ売りに行ってもいい?』


 なんという他力本願。でもこれしか思い浮かばなかった。


『いいけど多分大騒ぎになるよ?』

『大騒ぎに? なんで?』

『この木にはね、』


「おーい! 犬っころー!」

「チビちゃーん」


 隊長さんとマリウスさんの呼び声がした。

 イルミールがチラリと声がした方を見た。流し目素敵。


『まぁいいや。あの人間たちは君を連れて帰るつもりらしいね』

『へ?』

『せっかくだからついて行ってみたら? あの旗はグラナードの王国騎士団のものだし、あの様子だと大事にしてくれると思うよ』

『でも……ペットは嫌だなぁ。だって首輪とかつけられちゃうでしょ?』

『ファッションの一部だと思えばいいよ。それに、神獣は王を決めないとね』

『それデミさんも言ってたけど王って? 国王さま?』

『デミさん? ああ、神か。でも違うよ。君だけの王だ』


 それって飼い主……?


『我から餞別をあげる。亜空間は使える?』

『亜空間?』

『まず、体の横に四角い箱をイメージしてみて』

『うん』


 二十センチ四方くらいの箱をイメージする。


『出来た? そしたらその箱の中を魔力で満たして。その中にはなんでも入るんだ。試しにこの葉っぱを入れてみて』


 イルミールから受け取った葉っぱを咥えて、箱の中にしまう。

 すると、葉っぱがスッと消えてしまった。


『消えちゃった』

『消えたんじゃなくて亜空間に仕舞われたの。今度は出してみて』


 簡単に言うよな~。箱の上部をずらすイメージをして頭を突っ込んでみる。

 そこは風も音もない、『無』だった。

 葉っぱは…あったあった。咥えて戻る。


『よく出来たね。亜空間は魔力が大きければ大きい程、広く使う事ができる。今の君はそうだな……あのテント位の大きさなら使えると思うよ。大人になったら人間の家位の大きさにできるかもね』

『おぉ~』


 ドラ○もんの四次元ポケットみたい。


『じゃあそこにリンゴを入れて。いっぱい持っていきな、役に立つはずだよ。それと、前に教えた薬草覚えてる? 途中見つけたら摘んでおきな。回復薬は人間には必需品だからね、その材料になる。その中は時間がないんだ。だからいくら持って行っても腐る事はない』

『ありがとう!』


 この体で薬草摘むの、なかなか大変なんだけどね。


『それと、間違ってもその中に生き物を入れちゃダメだよ』

『わかった、気をつける』

『それと自分で入るのもダメ。出られなくなっちゃうからね』

『そんな恐いことしないよ』

『ならいいけど。ほら早く行きな、君を子犬だと思ってるから本気で心配してる』

『じゃあちょっと行ってくる! すぐ帰って来るから!』

『王都は遠いから無理しなくていいよ。時間はたっぷりあるからね』


 転移の練習もしなきゃ。まだ教えてもらいたい事たくさんあるけど、あんまり待たせちゃいけない。魔法使えるって、もっと早く知りたかったな。

 

 イルミールにしばしの別れを告げると、木から降りて隊長さん目指して走り出した。


「きゃんきゃん」


 隊長さんに駆け寄る。


「どこ行ってたんだ? マリウスが心配してたぞ」

「隊長だって心配してたでしょう? 大男がオロオロして皆びっくりしてましたよ」

「大男で悪かったな」

「くぅ~ん」


 心配かけてごめんなさい! でも何か嬉しい。

 イルミールが言った通り、大事にしてくれそう。


「チビちゃん、私たちと一緒に帰りませんか?」

「寮が嫌なら、俺んちでもいいぞ」

「ずるいですよ隊長」

「きゃん!」


 王都行きます! 寮は分からないけど。


「よし、じゃあ出発するか」


 そう言うと隊長さんは、また私をひょいっと片手で抱き上げた。


「そんな乱暴にして!」


 マリウスさんが呆れたように言うけど、けっこう安定よくて気に入ってます。


「おとなしくしてろよ?」

「きゃん!」

「分かってんのかぁ?」


 もちろん分かってますが、ワクワクは止められません!

 転生して二ヶ月、初めての人里です!


ありがとうございました。

次の更新は9日の0時です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ