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自己紹介

閲覧ありがとうございます。本日二度目の更新です。

 えーと。


 何故、狼ちっくな生き物、なんて言い方をしたかと言うと。



 第一に、生まれた時から一人だったから。

 あ、一人じゃない。一匹か。


 犬とか狼って群れで行動するじゃない?

 普通は犬でも狼でも、生まれたての時は母乳を飲んで、シモの世話も母親にしてもらうだろう。

 でも、私は気がついたらこの森に独りでいた。


 ものすごく綺麗な湖のほとりの、ものすごく大きな木の下。

 幸い湖の水は飲めたし、住み処にしてるめちゃくちゃでっかい木に宿ってる精霊に木の実を貰えた。

 お肉も食べたかったけど、人間だった時の記憶が邪魔をして、小動物を狩る事は出来なかった。

 火も起こせないしね。



 そして第二に、目が見える。いや犬でも狼でも見えるけど。


 そうじゃなくて、色がわかるのだ。

 湖の水面に映る私は、銀色の子犬だった。いや子狼。

 そして土の茶色も、湖の青も、空の青も、植物の緑も、木の実の赤も、人間だった時の記憶のままの景色が見える。


 じゃあ夜はどうかって言うと、これもまた見える。

 体感で真夜中な時間になっても、夕方かな? くらいの視界。

 今が白夜だってんなら話は別だけど。



 第三に、まぁもう言っちゃってるけど、人間だった時の記憶がある。


 これはねぇ、大きいと思うんですよ。

 人間だった時の記憶がある犬。いや狼。

 めちゃくちゃレアじゃないですか? あ、そうでもない?

 まぁでもそのせいで狩りが出来ないんですけど。


 元々人間だったのに、獣になってるなんて……っていう感傷はそもそもなかった。なんか、こういうもんなんだって、ストンと納得したんだ。だったら狩りも出来たらいいのにって思ったりもしたけど、出来ないもんはしょうがない。


 人間だった時の『私』の記憶は、正直曖昧になってる。

 男だった時もあるし、女だった事もある。違う人生を歩んだ記憶が遠くにある、とでも言えばいいのか。


 ここに来る直前は、日本人の女だった。ごくごく普通のOLやってた筈。

 何で人生を終えたかは思い出せない。当時の名前も。

 生活の事は覚えてるけど、自分の事は思い出せないっていう中途半端な記憶喪失みたいな感じ。

 でも、何故か大事な人に裏切られた絶望感てやつが、心の奥にあるんだよね。

 思い出しても楽しくなさそうだから、敢えて思い出さないけど。



 で、第四に、身体能力の高さ、かな。


 犬とか狼の生態を詳しく知ってるわけじゃないけど、ふわふわの毛と湖の水面に写る姿からして、成獣ではないだろう。この短い手足で疾風(はやて)のように駆け抜ける事が出来る(当社比)。特にジャンプ力なんてすごいの! 自分の体高の5倍は跳べる。


 木登りだってお手のもの。

 一回、このとんでもなく大きな木がどれだけ高いのか興味があって、頂上付近まで登ってみた。

 ビルの四~五階くらいの高さかな? もっと高いかも。


 で、落ちた。

 ちょっと足を踏み外してね。

 身体能力高いんじゃないのかって?

 まぁ、子犬くらいの大きさ(多分。比べる物がないからね、よくわかんない)だしね、どこまでも続く山脈と樹海のような景色に見とれてしまって……。


 ツルッとね。


 さすがに恐かった。咄嗟に体をひねって足から着地したとしても、骨の一本や二本逝っちゃうんじゃないかと……。


 でも、無事だった。


 途中、枝や幹に打ち付けられる事もなく、地面につく直前に風に押し上げられた。

 ふわっと風に包まれて、すとん、と10.0の見事な着地でした。


 あれ? これ、身体能力じゃないんじゃない?

 ま、いいか。



 そんなわけで、多分私は銀色の狼ちっくな生き物の子供なんじゃないかなぁ?

 と、結論づけました。



 そんな私の日常は、朝日の出と共に起床。

 湖の水を飲んで、お天気が良ければそのまま水浴び。

 木の精霊に貰ったリンゴのような木の実を食べる。私が知ってるリンゴの味とは違うけど、甘くて美味しい。見た目は桃剥いたら中から真っ赤なリンゴが出てきましたぁみたいな感じだし、名前がないらしいから勝手にリンゴって呼んでる。


 トイレは湖から遠い場所に穴掘ってします。

 元人間としての尊厳?

 そんなもんでお腹は膨れんのですよ。


 そして昼間には湖の精霊や森の妖精たちと遊んで、彼ら(彼女ら?)の噂話に耳を傾ける。

 あっちの野うさぎが出産したとか、そっちの木の実が食べ頃だとか。精霊はご飯食べないけど。

 湖に住んでる魚食べていいよって言ってくれるけど、さすがにこの手じゃ捌けないから無理。醤油があれば頑張れる。かも。


 そうそう、精霊や妖精たちは基本穏やか。見た目はほわほわしてる玉。いつもふわふわしてる。

 ほわほわは見た目のイメージで、ふわふわってのは物理的にね。

 精霊は人化したり念話したり出来るけど、妖精は出来ないんだって。


 そんな彼らも、嫌いなものがある。

『人間』だ。もちろん全部の人間じゃないけど、無闇に森や湖を荒らし回ったり、貴重な石を大量に持ち帰ったりする人間がいるんだって。


 そうして昼寝をしたら夕方まで森の中を探検したり、リスや兎と仲良くなったり好き勝手遊んで、その辺の木苺を食べたりリンゴ食べたりして暗くなったら木の上で寝る。


 以上。



 そんな平和で、ちょっと退屈でもある生活を多分二ヶ月くらいしてる。

 近くの洞窟の中の岩壁に、爪で正の字を書いて何日経ったか確認してるんだ。

 意味はないんだけどね。


 この爪も考えられない位切れ味が鋭い! しかも何故か仕舞える。仕組み? そんなん知りません。


 ついでに身長の高さも記録してたけど、悲しい事にあんま変わんないんだよね……



 そんな私の日常を脅かす出来事があった。




 そう、人間が来たのだ。



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