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フュンフ
午後十二時ちょうど、チャイムが鳴るのと同時に、僕はご飯も食べずに工場を飛び出し、灯台へと足を向けた。
崖の上にひっそりと聳えるレンガ造りの灰色の塔が見えてくると、
「マルカぁ、おーい、マルカぁ」と大仰に叫んだ。
僕の声に気づいたマルカは、みいっと鳴き傍に降りてきた。
「こんにちは」
ぴんっと白い尾羽を立てて挨拶をする。
「やあ、マルカ。元気そうだね」
僕も手を挙げて挨拶を返す。
「そうだ、いいものを持ってきたんだ」
リュックからかまぼこの入ったタッパーを取り出し、マルカの前に広げて見せた。
「なあに、これ?」
マルカは、宙に浮いたような顔をする。
「これはね、かまぼこっていうんだ。魚だよ、分かる?」
「さかな?」
小首を傾げ、海の方を見る。
「そう、魚だよ。おいしいから食べてみて」
マルカは白い羽をたたんだまま、嘴を器用に動かし飲み込んだ。
澄んだ青い眼をぱちぱちさせて、なにやら考えている。
「どう? かまぼこは美味しいかい?」
僕は、優しく訊ねた。