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フィア
翌朝、僕は入島に向かう船の中でひとり物思いにふけっていた。
マルカは、僕の妹に似ている。
二年前、僕が高校を卒業した春に交通事故で亡くなった、美鈴にどこか似ているのだ。
なにがどう妹と似ているのか、頭の中で美鈴の記憶とマルカの風貌を照らし合わせ、たくさん考えてみたが、結局なにも分からなかった。
なんとも形容しがたい、この不思議な感覚。
蜜柑色の太陽が昇り始めたころ、入島に到着した。
僕は『山岡水産第一工場』行きのバスに乗り込み、一番後ろの席に腰をおろした。
マフラーを外し、頬杖をついて窓外の景色を見る。
灯台に行けば、またマルカに会えるだろうか。
マルカには、訊きたいことがたくさんある。
今はまだ、名前くらいしか知らないけど、もう少し話をすれば、なにか分かるかもしれない。
バスは最北端を目指し走行を続ける。
コンビニ、レストランなどは港付近に集中していて、ここまでくるともう工場か併設されている社員寮しか視界に入らない。
どこまで行っても同じような風景が続き、似たような建物が間隔を空けて並んでいる。