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ドライ
「やっぱり君は、頭がいんだね。そうだ、名前を教えてよ」
「マルカ、マルカよ」真珠のように白い大きな翼をさっと広げ、
「あなたは? あなたはだあれ?」
と質問を返してきた。
「僕は、高倉っていうんだ。分かる? た・か・く・ら」
「たかくら、高倉ね。覚えたわ」
「マルカ、よろしくね」
ふと僕は、腕時計に目を遣った。
「っあ、もう行かないと。ごめんよ、マルカ」
「どこへ行くの?」
マルカは首を傾げる。
「仕事に戻るんだ。ほら、あそこに大きな工場が見えるだろ? 僕はそこで働いているんだ。だから、もう戻らないと……」
「そう、わかったわ……」
「マルカ、明日もここで会おう。約束だよ」
雪道を走り急いで工場へ戻った。
作業前の衛生チェックを済ませ、製造工程を終えたかまぼこの検品ラインに入ると、頭はすぐにマルカのことでいっぱいになった。
美しい鳥マルカ、不思議な鳥マルカ。
ただひとつ、どうしても気になることがある。