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ツヴァイ
「君は、頭がいんだね。人間が怖くないのかい?」
みいっ、と返事をするみたいに鳴いた瞬間、白い翼を左右に大きく広げ、広げたかと思うと、僕のすぐ傍に降りてきた。
急な展開に一瞬怯んでしまったが、立ち所に目と心を奪われた。
「君、すごく大きいね。それに、変わった顔をしてる……」
初めて見る鳥だった。
ツルでもないし、ハクチョウの類でもない。
何より僕を驚かせたのは、人間味のある豊かな表情であった。何かを考えているような、そんな不思議な眼をしている。
「そうだ、君にいいものをあげよう」
僕は、リュックから昼飯の残りを取り出し、鳥に差し出した。
「これ、菓子パンっていうんだ。美味しいよ」
鳥は橙色の嘴を器用に使いパンを丸ごとひとつ飲み込むと、確かな足どりで僕に近づき、青い瞳をきらきらと輝かせて、
「ありがとう」
と、はっきりとした口調で礼を言ったのだ。
「驚いたな、君は人間の言葉が分かるんだね?」
「ええ、少しなら」
白い鳥は、不安げにそう答えた。