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繋ぐ日常  作者: 都 千乃
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Social 1

 昔に戻ってやりなおしたい、と初めて思ったのは、就活を目前に控えた大学3年生の夏のことだ。21歳。気が付けばなんとなく専攻した学問をこなし、お酒を飲んでなんとなく友達と騒ぎ、なんとなく始めたバイトをそこそこ続けていた。そこそこ名の通った大学に通っている筈で、それまで自分の人生はまあまあ上手くいっている方だと思っていた、のに。

 

 どうして急にそんなことを思ったのか。きっかけは些細なものかもしれない。自分でも分からない。

 

 付き合って1年の彼氏に振られた。初めての彼氏で、嫌われないように見た目も中身も磨こうと頑張っていたのに、試験期間中に会えなかっただけで飽きられたらしい。「冷めた」と一つ、連絡が来ていた。

 専攻しているドイツ文学は、好きだったけど、就活を目前にして人生の役に立つのかという疑問が湧いてしまった。答えが見つからなくて、そのうち意欲まで失った。単位は貰えるだろうけど、試験は納得のいかない出来だった。

 部活は弓道部に入っていたけど、2年生のうちにやめていた。もともとスポーツをやっていなかったから、大学に入ってまで上下関係にうるさい環境下にいるのに疲れてしまった。上手くもなかったし。


 全ての試験を終えた大学からの帰り道。そんな自分をぼんやり振り返っていて。

 電車の中で、制服の裾をまくって、暑そうに胸元の襟を引っ張る高校生を見たとき。大きくて汚れたスポーツバッグをどさっと置いて、日に焼けた肌をさすって大声で話す集団の声を聴いたとき。

 そうして、なぜかふいに、私は一体何をやってきたんだろう、と思ってしまったのだ。


 私の人生、そこそこ上手くいっているような気がしていた。友達もいるし、公立の高校大学と進んで周りからは「親孝行ねえ」とも褒められていた。バイトもそつなくこなしている。

 それなのに、何故なのだろう?




 手のひらに収まっている薄っぺらいスマートフォンを見つめる。世の中の流れはすさまじく速くて、私が大学に入った頃、この機械は最先端モノが好きな人しか持っていなかった。それがどうだろう、今では折り畳み携帯はガラケーと揶揄され、私もいつの間にか当たり前のようにこれを使っている。twitterやLINEも、最初は抵抗があったのに今では欠かすことの出来ない連絡手段だ。楽しげにお喋りをする学生たち以外は、殆どの人間がその無機質な物体を覗きこんでいる。

 ふと。先日立ち読みした雑誌に取り上げられていた話題を思い出した。

 Social Networking Serviceの中でも、最近注目を集め始めているもの。サイト名を検索欄に打ち込む。


 『―――ようこそ、Anetへ!まずはアカウントを作成しましょう!』



 得体のしれない、生ぬるい息苦しさ。友達に話すほどの深刻なものではないと思う。でもそれは、確かに私を悩ませていて。

 ネットの中なら、この世界に生きる何万という暇人が、気まぐれに拾い上げてくれるかもしれない。

 そのとき私が求めていたのは、私を知らない『誰か』だった。

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