薄暗い廊下を少年と少女は、お互いはぐれないように手を繋いで歩いていた。
空いてる方の手に持った古いランタンで行く先をオレンジ色に照らす。辺りに聴こえるのは二人分の声と足音のみ。
「ここ、何処だろう?」
「迷っちゃったね」
廊下の向こうはいくら目を凝らしても暗くて見えない。
永遠に続いてるような錯覚さえ覚えるほどだった。
「早く戻らないとヒューイが数え終わっちゃうよ」
「でも出口がなかなか見つからないんだよね。あっち側は探しても何もなかったし」
そう言って自分達が入ってきた扉を見る。この場所も何回通ったか分からない。そして何度見ても状況は変わらなかった。
そこには扉は無い。
しかし、確かに扉があって二人はそこから入ってきたのはずなのだ。なのに今ランタンが照らすのは石造りの壁。
「どうして消えちゃったんだろう?」
押したり叩いたりしてみても壁はやはり壁だった。
このまま先に進めば、きっと出口があるかもしれない。
そう信じて歩を進める。
外に出られたら、待たせてしまっているだろう友人達に謝らなければ。
少女が足を止めた。
「どうしたの?」
少年が聞く。少女は廊下の先を凝視していた。
「誰?」
廊下の先に向かって問いかける。
しかし返事はない。
「誰かいるのか?」
少年はランタンを掲げ、少女の見る先を照らした。
人だった。
しかも仰向けに倒れている。
「寝てる?」
口にはそう出したが死んでるとも考えられる。それほどに倒れているそれが不自然に見えた。
何故こんなところに?
分からないことがあるのならば近寄ってから確かめればいいのに、足は縫い付けられたかのように動かなかった。
うぅ……
苦しそうな呻き声が石造りの廊下に反響しながら聴こえてきた。
少女と少年は互いに掴んだ手に力を入れさらに身を寄せ合う。
それが身を捩る動きを見せた時、
何か異様な臭いがした。
生臭い鉄の臭い。
先程から悪寒が止まらない。
少女は再度それに問いかける。
「貴方は誰なの?」