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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
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7話 マリア




「待ってたわ」




部屋に入ると豪華なソファーでゆったりと寛いでいたマリアに声をかけられた。

私といえば騎士に両腕をとられ拘束されている状態だ。

壮年の男性と王子は一緒に来ていない。

彼女に視線を移すと服装が変わっている事に気付いた。

――――――順応早すぎません?


彼女の姿は異世界エスラルードの貴族の女性が着る今流行りのデザインをしたドレスを身に着けていた。

しかし、そのドレスを誰がチョイスしたのかかなり趣味を疑ってしまう。

血の様な真っ赤なドレスに金糸で豪華にあしらい、レースも無駄に多く使われ、見ているだけで目が痛くなりそうだ。

髪も綺麗に整えられているが、金や宝石がたっぷり使われたゴージャス過ぎる髪飾りもマリアには、正直言って全く似合っていなかったが、口には出さず私が黙っていると、勝ち誇った表情で私を見てきた。


「キャハッ!!そんなに私を見て羨ましい?」



――――――全然羨ましく無いっす!!!チョー趣味悪いよ!!



……口に出せないのが辛い。

私は状況が状況なのでマリアに反論しない代わりの心の中で叫んだ。

ちらりと口が悪くなるのは仕方が無いと思う。


「ねぇ……面白いと思わない?同じ日本から召喚されたのにマリアとあなたとのこの歴然とした差!!マリアは『華嫁』であなたは『まがい物』だって!!笑っちゃうよね?」


クスクスと何が可笑しいのかマリアは笑っている。

この子は一体何が言いたいのだろうと訝しんでいると


「王子様はマリアの事を『華神』って言う神様が遣わした乙女だと教えてくれんだけど、いわゆる聖女扱いなのかな?それとも巫女とか?それって凄い事じゃない?だって皆マリアの事を崇拝するんだよ!これからの事を考えるだけで興奮しちゃうよね?だって『華嫁』のマリアにみんな逆らえないし、マリアの天下よね!!反対にあなたは『まがい者』で可哀想……」


おいおい……口元笑ってるし!!

絶対に可哀想と思ってないでしょうに!!

この子は私に何が言いたいんだ?自慢をする為に私を呼び出したのか!?

「……性格悪いって言われない?」


さっき口出しをしないと決めたのに、あまりのマリアの性格の酷さと馬鹿さ加減に呆れて思わず呟いてしまっていた。

マリアといえば私の言葉がしっかりと聞こえたらしく、不機嫌な表情をして


「ちょっとカチンと来たかも……。そんな事をマリアに言っていいの?折角あなたにとって良い話をしてあげようと思ったけど牢屋に入りたいようね」

「……はいっ?」

「王子様が言うには、マリアにはそれぞれ専属の召使いをつけてくれるって教えてくれて、それだったら同じ日本人のあなたにもマリアの召使いになって貰おうかなって呼んだんだけど、マリアに歯向かう生意気な人は要らない」


頭が痛くなりそうだ。

牢屋生活も嫌だけどこの子の召使いも勘弁してほしい。

……いや、まだ彼女ばかの相手より牢屋生活の方がマシかも……と、考えている私は何だかんだで混乱をしているのかもしれない。



「あなたにこれ以上用は無いから牢屋に行って頂戴」




マリアが一言告げると騎士の行動は早く私は牢屋へと連れて行かれた。





  *




「マリアはあのまがい者の女を牢屋に入れたそうだ」

「その選択は正しいかと存じます」

「フッ、我もそう思うぞ。マリアに女を召使いにしたいと懇願されたその時は許してやったが、後から考えると『まがい者』が側にいると『華嫁』であるマリアが穢れてしまう」


王子と男性はある部屋にて密談していた。


「そなたのお蔭でやっと『華嫁』が手に入った。それも我好みの美しい者をな?これで王位継承権は我の物に完全になる。我の花嫁になる者が『華嫁』であれば、異議を唱える者はいない筈……例え王であろうとな?」

「……彼の方は今、床に伏せておりますが」

「それをそなたが言うのか?少しずつ王の飲み水に気付かれない様に少量の毒を盛り、王の体を弱らせ寝たきり状態に仕向けたルワリスタ国直属の魔術師のそなたがな?」


王子は目を細め皮肉混じった口調で言うと


「命令を下したのは貴方様でございます」

「ああ……そうだ。それもこれも王が我に王位継承権をさっさと与えないからだ。正妃の息子のアレが成人を迎えるまでは決定しないと戯言をいうから、黙らせたのだ」


お互い視線を交わしながら笑みを浮かべた。



ルワリスタ国には二人の王子がいる。

側妃から産まれた今年21歳になる第一王子のフレディ王子。

そして、正妃から産まれ今年11歳になったばかりの第二王子のミシェル王子。

二人の父親であるルワリスタ国王は第二王子のミシェル殿下が成人を迎える16歳になってから二人のどちらかに王位継承権を与えると言いだしたのが数か月前の事だ。






「アレは牢屋に入れたままか?」

「はい、殿下のご命令通りに」


王子は少し考え、男性に命令を下すのであった。






「『まがい者』の女をアレがいる牢屋に入れろ。さすれば、不幸がアレに降りかかるかもしれないからな」





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