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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
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5話 第2皇子



豪華絢爛の装飾が施された部屋にて目に鮮やかなドレスを着た女性達がテーブルを囲んで会話を楽しんでいた。



彼女達は公爵家、侯爵家に嫁いだ者ばかりで身分は高い。

中には元王女という者もいて彼女達は社交界ではとても有名であり一目置かれていた女性ばかりが『貴婦人の会』と名前を付けられた特別に許された者だけが集まる会合であった。

その女性達の中に紛れて一人だけ異彩を放つ者がいた。

綺麗な琥珀色をした瞳の目尻は垂れており淡い金色の髪は非常に艶があり結んだままの唇は笑みを浮かべている。

鼻筋が通った整った顔立ちは甘い雰囲気を醸し出し見る者全てを虜にさせる様な魅力溢れる20代中頃の男性が女性達の中に一人混じっていた。


「カイル様の妹君から頂いた化粧水はとても素晴らしいですわ。肌の調子がずっといいのですよ」


鈴が鳴る様な声でカイルに話しかけてきたのは公爵夫人で今年30を超えたばかりだが、1年前から肌のトラブルに悩んでいたのを偶然に伊万里が耳にし、日本製の化粧水を与えた所みるみる内に肌トラブルが解消されたのであった。


「わたくしもずっと悩まされていた手の荒れがイマリ様がお持ちになった『ハンドクリーム』という物をつけだしてから、とても綺麗になりました」


侯爵夫人である彼女はその場にいた皆に手の平を見せながら話している。


「私も姫様から教わった化粧の方法で旦那様にお見せしたら、それまで愛人の所に入り浸っていたのが私の元に毎日戻って来るようになり、反対に私が他の男性に取られないかいつも心配をしているのですよ」

「確か貴方の旦那様であるキャラクエ侯爵は女性との噂が絶えない方でしたね」

「フフッ、それが今では嘘の様に私一筋ですのよ!これも全て姫様のおかげです」

「わたくしもイマリ様のおかげで悩みが解消されましたし本当に感謝しきれないですわ」

「あら?それを言うなら私もお礼を言いだしたらキリがないわですわ!」


貴婦人たちが伊万里の事で褒め称えている様子をカイルは満足した表情で彼女達の会話を聞いていた。

――――――着々と僕の天使イマリはこのエストルダに受け入られていて本当に嬉しいよ。

カイルは伊万里をここで絶対必要な存在にさせる為に気付かれないように彼女達と接触できるようにキッカケを与えた。

彼女達に気に入られ味方にすれば伊万里はここでかなり過ごしやすくなる。

もし、何か問題があった場合彼女達は全面的に伊万里を保護し守り危害を与える者に容赦ない攻撃をしてくれるだろう。

そして伊万里が異世界エスラルードであちらの世界ではなく異世界エスラルードに根を降ろしてもらうには彼女達の協力が必要不可欠だ。

男性には分からない女性の悩みは母親のリンダでも事なきことを得る事ができるが、話や相談ができる相手は多いほどいい。

それも伊万里をかなり気に入り可愛がってくれる権力ある女性の方が都合がいいだろう。

カイルは数年前から先を読み伊万里の存在を彼女達に教え知り会わせた。


伊万里がこの世界に持ち込んだ化粧水に化粧セットなど、帝国のある研究機関に持ち込まれ分析されエストルダ大帝国で生産出来る様になった。

今はまだ貴族の婦女子達の中で出回っているがその内に民やエストラルダ大帝国以外にもこれを流通させるつもりだ。

そうすれば国庫は潤い提供者である伊万里の貯金も溜まる。



いつだったか彼女が

『何もしていないのにお小遣いをもらうのは申し訳ない気がする。でもお金が無いと買い食い出来ないし‥…』

最後は可愛らしい事を言っていたがお金をカイルが払う時毎回申し訳なさそうな表情をしていた事に気付いていたカイルが彼女が気兼ねなくお金を使える様に、同じ物を異世界エスラルードで作れないのか提案をしたのだ。

伊万里も『女性の肌や化粧の悩みはどこの世界でも共通よね!!』と、快く承諾していた。


化粧水など売ったお金は結構溜まっている。

伊万里に教えたらさぞ驚くだろうな?カイルはビックリした表情の伊万里の顔を想像していると


「カイル様、いつになったらイマリ様を社交界デビューさせるのですか?」



伊万里の存在はまだ一部にしか知らせていない。


伊万里がここ異世界エスラルードで生きていくと決断した時にエストルダ皇帝ラインバードの皇女として大々的にお披露目をするので今は何とも言えない状態なのだ。


だが、伊万里がここで一生生活する日を夢見てカイルは根回しをするのであった。



しかし、ここまで気に入られるとは思っていなかったカイルは本日召喚される伊万里の事を思い浮かべた。

―――天使イマリの味方が増えるのはいいけど私との時間が減るのは勘弁してほしいな……

明らかに彼女達はイマリが滞在中に会いたがるだろう。

只でさえ家族との伊万里争奪戦に頭を巡らせているのに、将来のためとはいえこの先の展開にカイルは少し苦笑いを浮かべた。



「カイル様は私達と話している時でさえ妹君の事を考えているのが分かりますわよ」

「サラ様にはすぐばれますね」


サラと呼ばれた女性は『貴婦人の会』の会長であり他の者を取り仕切っている。

一番伊万里を可愛がっているのがこの女性だ。

公爵夫人で日本製の化粧水を初めて使用したのがサラであり、周りの仲のいい貴婦人にこの事を教えたのも彼女であった。

元王女というのも彼女の事だ。


「カイル様が浮かれているのも仕方がありませんね。私も妹君に会えるのを楽しみにしていますのだから‥…。彼女はとても可愛らしいので会うだけで癒されますもの。それに新たな『萌え』に会えるのが非常に心待ちしてますわ」


彼女の言葉に周りの女性達もそわそわしている。

多分、化粧関係以外の事で思いだしているのだろう。


――――――まさか母親の他に天使イマリの趣味に賛同する者が増えるなんてね



『貴婦人の会』 

またの名を

貴腐人きふじんの会』




名誉会長であるエストルダ大帝国皇妃のリンダが発足したのがこの会が出来た所以であった。





和やかな雰囲気の中を勢いよく扉をノックし、慌てた様子で男性騎士が部屋に入ってきた。


「一体何事だ?」


カイルが尋ねると騎士は姿勢を正し大きな声で



「カイル様!!お忙しいところ恐縮ですが、皇帝よりカイル様を緊急お呼びするように言っておられます。直ちに薔薇園に向かう様にとの事です」




ただ事ならない様子にカイルは訝しながら眉をひそめるのであった。















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