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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
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22話 罪と罰




お父様は茫然と立ちつくしている馬鹿王子の方に振り向き


「貴殿には確認したい事があるんだが先ずはダレン!!ルワリスタの魔術師をここへ」

「了解っと」


ダレンはお父様に言われ指をパチンと鳴らした。

すると、壮年の男性が突然私達の近くに現れた。

その男性は両足手首を縄で括られ苦悶に満ちた表情をしている。

彼の顔に見覚えがあった。

召喚されてすぐに私の事を他国のスパイと勘違いした男性だ。

あれから顔を見る事は無かったが、どうしてお父様はこの人を?


「この者には貴殿の罪をダレンの魔法にて自白させた。貴殿は実の父親であるルワリスタ国王にそこにいる魔術師に毒を盛るよう命令し、それならまだしも自分の弟である第二王子を冤罪ででっち上げ処刑を行おうと命令を下したのは貴殿だな?」


お父様が馬鹿王子に向かって言葉を放つと


「我はそんな命令を出していない!こやつが勝手に行動した事だ。それにミシェルの処刑を行おうとしたのはミシェルはいずれ我を脅かす存在になるとこやつが言っていたからだ!!我は何一つ悪くない。我は騙されたのだ。それに『まがい者』であったその女が実は本物の『華嫁』だった事も我には知る由が無かったのだ!!」


大きな声で言い訳しだした馬鹿王子の姿に私は呆れかえってしまった。

明らかにその態度は自分が犯人だったと言っているようなものだ。

仮にも王子なのだからもう少し冷静になれよっと、思ってしまった。


「あいつ馬鹿?」

「……ダレン、思っても口に出さないように」


ダレンの率直な言葉にカイル兄様がたしなめていると


「……情状酌量の余地なしだな」


お父様は一言呟き右手を上げた。


「既にルワリスタ国王には許可を取っている。第一王子並びに『華嫁』と名乗るこの者達をひっ捕らえよ!この者達の裁きはエストルダ大帝国皇帝である私に委ねられている」


その言葉をかわきりに、騎士が闘技場に数十人は言ってきた。

彼らの姿に今まで私が会った騎士とは雰囲気が違う事に気付いた。

牢屋まで私を連れていった騎士や処刑を行おうとした騎士は、はっきりいって騎士の服を着た粗暴でならず者の集まりに見えたが、今この場に現れた騎士は精錬されて正統派の騎士に思えた。


「王専属騎士団は兄上によって拘束された筈……」


ミシェル君がはりつけの状態のままだが、感嘆の声を上げていた。

んっ?はりつけ


「ああっ!!!ミシェル君、まだその状態だったんだ!!!ダレン、彼も助けて」

「え――――――、彼を助けても僕には何の得にもならないんだけど。あっ、そうだ!僕のほっぺにイマリがキスをしてくれたら助けてあげてもいいよ」

「……ダレン、怒ってもいい?」

「イマリ、ひひゃいよ」


緊迫した場なのに、ふざけた事を言いだしたダレンに私はダレンの頬を引っ張っていると、アラン兄様が


「アイツを助けたらいいんだな?」

「アラン兄様!」


アラン兄様の動きは華麗だった。

軽く助走し剣でミシェル君の両手足に縛られていた縄を切り、上から落ちてきたミシェル君を難なく受け止めていた。

はりつけから助け出されたミシェル君もアラン兄様の動きに驚いていたが、すぐに気を取り直し


「彼らは王の命令によって動くルワリスタ国の王専騎士団です。彼らが解放されたという事は王‥…父上の意識が戻ったと言う事です」


マリアと馬鹿王子は抵抗を見せているが、王専騎士団により取り押さえられ縄で括られていた。

ミシェル君はそんな馬鹿王子を見て悲しい表情を浮かべたが、それも一瞬だった。



「ちょっと!!!同じ日本人として私を助けなさいよ!!!どうして私がこんな目に合わないといけないのよ!!」

「我はルワリスタ国第一王子なのだぞ!我は王の次に身分が高いのだから騎士風情で我に触るな!!」



私は彼らに同情する気持ちなど無い。

それほど、彼らの私に対する仕打ちは酷かったと思う。

彼らの行く末はお父様の手によって裁かれるので、後は任せる事にした。

王専騎士団によって拘束された馬鹿王子とマリアの叫びに耳を傾ける事無く……。










ルワリスタ国第一王子とマリアのその後は、ラインバードの命によりサイラスが作らされたある機械により姿を変えた。

いや、精神が入れ替えさせられたのだ。

サイラスの技術とダレンの魔力による融合の結晶だ。


数日後牢屋の中に入れられたフレディ王子とマリアの精神状態はまるで動物を相手にしているようだと、見張りの騎士が言っていた。

ルワリスタ国の町はずれのある馬小屋に馬と鹿という珍しい組み合わせの動物が一緒のスペースの中でいつもケンカをしているという。



サイラスは自分の兄弟や皇帝であるラインバードが伊万里を迎えに行っている頃、エストルダ城の研究室で疲れのあまり倒れていた。

彼はここ一週間以上制作したのだ。


「いくらあの国の王子が馬鹿だからといって、王子を馬や鹿と精神交換できる機械を作れなど鬼畜過ぎます。父上……」


サイラスは溜息交じりに呟いた。

伊万里はこの事を一生知る事は無いだろう。














***



闘技場の騒動の中、招待された来賓者の席から離れる者が2名いた。

その姿は黒いローブで全身を隠している。


「……主よ、もう宜しいのでしょうか?」

「『華嫁』は本物だった……だが、エストルダ大帝国の者であるならば、手を変えた方がいいだろう。アカギ、国に戻るぞ」




その日の夜、ルワリスタ国の国境の森から赤色の竜が暗闇の空へと人知れず飛び立っていた。











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