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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
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19話 真偽




「あの……貴方達はエストルダ大帝国の皇子様達ですか?」


鈴が鳴る高めの声で話しかけてきた女性にアランとカイルはお互い一瞬目を合せ、女性を見た。

ウエディングドレスを着ている事から彼女が例の『華嫁』だとすぐに理解した。

だが、何故ここにいるんだ?と疑問に思っているアランをよそにカイルは優しい声で、彼女に話しかけていた。


「ええ、そうですが……貴方は?」


分かっている筈なのにカイルは彼女が何者か気づいていない振りをする。

それにカイルがこの様な声色を出す時は何かを探っている時だ。

カイルの柔らかな笑みに顔を赤らめながらその女性は


「私の名前はマリアって言うんです!!私『華嫁』でこの世界に召喚されて、勝手にフレディ王子様の花嫁にされそうになって困っているんです。どうか助けてくれませんか?」


潤んだ瞳で上目づかいにマリアはカイルを見つめた。


――――――私のコレで落ちない男はいないわ


日本では幼い頃から美少女だったマリアは男性にちやほやされ、異世界エスラルードに召喚されてからもフレディ王子から常に甘い言葉を囁かれ、その他の者達は皆マリアを敬いかしずいていた。

蝶よ花よと育ってきたマリアには自分の事を拒否する男などいる訳ないと絶対的な自信があった。


そんなマリアにカイルは微笑みながら


「貴方と一緒に召喚された女性は、同郷とお聞きしましたが何故、はりつけにされているのですか?貴方は王子の『華嫁』で、かたやもう一人の女性は処刑とはどうしてそんな事態になったのか教えてくれませんか?」


マリアはカイルが何故そんな質問をしてくるのか理解できなかった。

自分の事には触れず別の女の話題……それもフレディ王子がその女の事を『まがい者』と言いこの国を滅ぼす最悪な魔女を――――――

マリアは確信した。

―――彼らは国が違うから『まがい者』の事を知らないんだわ。

―――それだったら私が教えてあげないと!!はりつけされているあの女は火で処刑しないと国が滅ぶから皇子様方が気に病む事はないんだと!

そうと決まれば早く伝えた方がいいと考えたマリアはカイルの腕に触れながら


「皇子様、はりつけにされてるあの女性はこの世界を滅ぼす『まがい者』なんです。凶悪で最低な魔女でもあるので早く処刑を行わないと私達の身も危ないの!!だから皇子様は『まがい者』の事など気にかける必要は無いです!!それに『華嫁』である私にも『まがい者』の存在は良くない事なの!!」


――――――だから私しか興味を持たないで?


マリアはここまで言えば、目の前にいる皇子がどれだけ『華嫁』である自分の存在が大切な事に気付くだろう……と心の中で勝ち誇っていた。





「……聞きましたか?アラン兄上」

「俺は生まれて初めて女を殴りたいと思ったぜ……」

「……えっ?」

「その汚い手を放しなさい」



カイルはマリアが触れていた部分を腕で振り払った。


「貴方もイマリをあんな目に合わせた一人であるのは、聞かせて頂きました。同じ世界から来たのならば普通助け合うはずなのに、ルワリスタ国の第一王子と一緒になりイマリを火刑で処刑する事に賛成とは貴方が『華嫁』である筈が無い」


きつい口調でカイルはマリアに言い放った。

カイルも、そしてアランもマリアの事を到底、話で聞く『華嫁』とは信じられなかった。



マリアと言えば、突然厳しい眼差しで見てくる二人の皇子をあり得ないと言わんばかりに彼らの顔をみた。

それにマリアを『華嫁』では無いと疑っているのだ。

生まれて初めて自分を認めない相手にマリアはカッとなり


「私は『華嫁』よ!!!!だってフレディ王子様が召喚した私に『華嫁』だと言ってたもの!!その証拠に黒髪黒目に異世界人が『華嫁』みたいじゃない?見なさい!!私はおとぎ話通り全部ソレを持ち合わせているわ!!!そうでしょ?フレディ王子様!!」


突然、マリアは周りに聞こえる様に叫び出した。

最後は視線をフレディ王子が立つ場所の方向を見て同意を求めていた。




フレディ王子は、いつの間にはマリアが自分の側から離れエストルダ大帝国の皇子の側にいた事に驚いた。

だが、マリアが彼らに何を話しかけているのかフレディ王子まで声が届かない。

会話は聞こえない為、静かにやり取りを見ていたのだが、急にマリアが大声を出し初めて会話の内容が分かった。

どうやらマリアはエストルダ大帝国の皇子達に本物の『華嫁』で無いと疑われているらしい。

フレディ王子はアラン達は自分より格上の相手だが、マリアの事を疑われた事に怒りを覚えた。


「私のマリアは本物の『華嫁』だ!!マリアを疑うと言う事は私にも侮辱に値する事なので、例え大帝国の皇子であろうとも私は許さんぞ!!騎士共!!!彼らを取り押さえろ!!!」


フレディ王子の言葉にカイルは溜息をついた。


「ここまで考えなしの馬鹿王子だったとは、イマリも色々大変だったんだろうね」

「お前は落ち着いている場合か?イマリを助けるのが先だ!!」




そんなやり取りをしているとカイルとアランの頭上に黒い影がかかった。






「白竜に引き続き黒竜までも!?」

「待て!!!黒竜と言えば確かエストルダ大帝国の……」


再び周りにいた貴族や来賓者達が騒めきだした。

周りの声にカイルとアランは空を見上げると、黒竜のオニキスがこちらを目指して降りてきている。

背中には人を乗せた状態で……。


……人?


「父上!!」

「ルワリスタ国に来るとは聞いていなかったぞ!!」


カイルが背中にいた者の姿を確認すると大声をだし、それを聞いたアランも驚いた。





オニキスの背中に跨って颯爽と現れたのはエストルダ大帝国の皇帝ラインバードその人であった。






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