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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
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18話 白竜




「……白い竜だと!?」

「まさかっ!!!聞いた事が無いぞ!白竜はくりゅうなど!?」

「本物なのか?」



ルワリスタ国の貴族達に招待された他国の来賓者達の声でその場は騒然としだした。

無理もない、現在竜の存在が確認されているのはエストルダ大帝国の黒竜に海を越えた先にあるドールア国の赤竜の2匹のみだ。

『まがい者』を守る様に周りに威嚇する真珠色の竜に殆どの者がその現実にまだ受け入れる事が出来ずにいると


「騎士共よ!!何を手間取っているのだ?サッサと『まがい者』達に火矢を撃てい!!!」


フレディ王子は弓を構えている騎士達に怒鳴りつけていた。

先程、伊万里達を狙って放たれた火矢は竜の体を覆っている鱗にて跳ね返されたのだ。

王子にとって『まがい者』である伊万里を処分する事が彼にとって重大だった。

多分、竜が現れたのは自分には良くない兆候だと感じとっていた所為かもしれない。


だが、次に放たれた火矢が伊万里はおろか白竜に一本も当たる事は無かった。


「俺は王子アレを殺したい気分なんだが……」


いつの間にか白竜の前に剣を片手に鋭い殺気を王子に向け飛ばしているエストルダ大帝国第1皇子のアランが立っていた。


「例えくそ程の価値の無い愚か者でも一応アレでも一国の王子ですから、今は我慢して下さい。アラン兄上」


同じく言葉使いは丁寧だが、話している内容は辛辣な単語を並べて話しているカイルがアランから少し遅れてきた。


「相変わらずアラン兄上の腕前は素晴らしいですね」


カイルは地面に落ちた矢を見ながら言った。

数本放たれた火矢を剣一振りで軽々と叩き切ったのはアランだ。

そのスピードの早さに周りの者達も息を飲むほど素早い動きだっただろう。


二人は牢屋から離れる時、カイルが気絶させた騎士の一人を起こし、お願い(又は脅しと言う)をして儀式が行われる場所まで案内をさせここまで来たのだ。

中に入った途端に最悪な状況になる一歩手前だった。

最初に放たれた火矢は白い竜によって守られたが、アランはすぐに行動に移し次の火矢を伊万里から守る事ができた。



二人のやり取りを驚愕した表情で見ている者がいた。


「何故、アラン殿が止めたのだ?それに側にいるあの者は兄上と呼んでいたが……もしや!エストルダ大帝国の別の皇子なのか!?」


フレディ王子は驚きの声を上げていた。

そんな王子の様子などどうでもいいという感じにキラキラした笑顔を浮かべたマリアが


「や―――ん!!!何?あのイケメン達!!!!お近づきになりた―――い!!」


隣にフレディ王子がいるのにお構いなしに声に出している。

マリアはイケメンに目が無い。

この異世界エスラルードに召喚されてから、日本では中々いないイケメンのフレディ王子だったので結婚する事に抵抗なかったが、フレディ王子も悪くない顔だがそれ以上にカッコ良く綺麗な顔立ちのアランとカイルに魅入ったマリアだったが、ふと頭によぎった。


―――今、フレディ王子はあの二人の事を皇子って言ってたよね?確か女官が隣のエストルダ大帝国の皇子が来るって浮き足立っていたあの噂の皇子の事よね?……『華嫁』の私はそっちの皇子の方がお似合いなんじゃないの?




フレディ王子はアラン達の行動に気を取られていた為かマリアの言葉など耳に入っていなかった。

そして、隣にいた筈のマリアの姿が無かった事すらすぐに気づかない程、彼は動揺をしていたのであった。






「真珠色の竜?」


私はどこかで見た事がある鱗の色に目をパチパチさせた。

死を覚悟した直後にこの白い竜が自分を守ってくれたのだ。


(ふぅ―――間にあって良かったんじゃ)


背中を向けていた竜が顔を私に向けた。

額には非常に見覚えのある朱色の花模様が入っており瞳は綺麗なルビーのような赤だ。

それにこの爺くさい口調の頭に語りかけてくるこの感じ……。


(それにしても、板に張り付けられたイマリの姿も中々そそるの?儂はSでは無いんじゃが、もうちっとスカートが短めで太ももサービスしてくれても良かったんじゃが……)


このセクハラ発言……間違いない。

姿が変わったり大きさが変わろうとも奴の中身は変わる事はない!!


「一言目がそれなの?このエロトカゲのセクト!!」


つい数秒までは緊迫した雰囲気だったのに、セクトの言葉に私は自分の今置かれている状況を忘れてつい大声を出していた。


(むぬぬ、今の儂はエロトカゲではなくエロ竜じゃぞ?)


エロトカゲ改めエロ竜セクトがふんぞり返っている様に見えるのは私だけだろうか?

……って、エロは認めるんかい!!!


(待て!また次の火矢が来る見たいじゃぞ?まったくあの者はイマリをこんな目に合わせている事が全て間違いだと言う事に気付いていないみたいじゃな)


セクトの言葉に私は


「そうだった……。私まだ殺されそうだったんだ」


不安な声を出していると


(大丈夫じゃ!ほれ、助けが来たみたいだぞ)


助けが来た?

私は思いもよらない言葉に正面を見ると華麗に宙に舞い火矢を切っていく男性に姿を目にした。

……まさか、彼がここにいるなんて!!

私は彼がココにいる理由に気付いた瞬間セクトを見た。


(約束は守ったぞ)


「ありがとう!!セクト……」


私は嬉しさのあまり笑顔でセクトに微笑んだ。

セクトにここまでの笑顔を向けたのは初めてかも知れない。

パタパタと照れたのかセクトの尻尾が揺れていた。


「アラン兄様!!」


すると、アラン兄様から離れてカイル兄様の姿を確認した。


「カイル兄様まで!!」


アランが火矢を止めた後で二人は何かを話している。

私は嬉しさと久しぶりに会う兄様達の姿にジッと見ていると彼らに近付いていく一人の女性の姿があった。

その女性はアラン兄様とカイル兄様を甘ったるい表情で見ている。

まるでいまから媚びを売る、そんな雰囲気だ。


「……なんでマリアが兄様に?」


白いウエディングドレスを着たマリアが二人の側に寄ろうとしていた。


―――馬鹿王子はどうしたんだ?馬鹿王子は?



思わず私が心の中で突っ込んだのは言うまでもない。





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