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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
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15話 進まない状況

「やはり牢屋に入り込んでイマリを助け出すのか難しいか?」

「そうですね、牢屋には二重三重と魔法がかけられていて侵入はおろか脱出も難しいと聞きました」

ラインバードがカイルに問うとあまり良くない返答が返ってきた。



伊万里がルワリスタ国の召喚に巻き込まれてから、既に一週間が経過している。





皇帝ラインバードが皇子達を招集し、それぞれに命令を下した次の日の朝にエストルダ大帝国皇帝宛にルワリスタ国から伝書鳩を使い書状が届いた。

異世界エスラルード伝書鳩でんしょばとは鳩といっても日本の公園にいる鳩より2倍の大きさがあり、飛ぶ速度も異世界エスラルードでは鳥類の中で一二を争うだろう。

また伝書鳩として便利な能力を持っており各国で利用されている。

地図を広げその場所に指示を出せば、必ず目的地に飛び手紙又は書状を届ける事ができる。

それが初めて行く土地でも伝書鳩は迷う事無くその場所に向かう事ができると言う。

この伝書鳩はその国のトップ……王族同士のやり取りして使われる事が多い。


その王族専用の伝書鳩がある内容を携えた書状を抱えエストルダ城に飛んで来たのだ。



――――――ルワリスタ国第一王子と『華嫁』の婚姻式の招待状



「短すぎないか?」


ラインバードが届けられた書状の封を開け目で通した瞬間、側にいたカイルに話しかけた。

無理もない。

通常王族の婚姻式は準備期間を入れて最低1ヶ月はかかるものだ。

10日後など通常あり得ない事なのだ。


「それ程、華嫁を王子の花嫁にする事で第一王子はルワリスタ国の貴族や国民に確たる地位をアピールし、知らしめる為でしょう。これは調査で分かった事ですが、あの国は王位継承を受け取るには在位している王からの口頭で伝えないと王位継承権を継ぐ事ができないそうです。ここだけの話、王の体は毒で侵されているそうですが死に至るまででは無いそうです。そして、調べにより犯人は第一王子ではないかと報告に上がってました。しかし、何故王子が王に毒を盛った動機は不明の為、只今調査しております」


カイルの報告を聞きながらラインバードは第二皇子の仕事の早さに感心をした。

―――昨日、動く様に命令を下したはずだが、もしかしたら元々間諜をルワリスタ国に潜入させていたのだろうか。

次期宰相候補と名が上がっているカイルの有望さに将来の期待を内心親心ながら褒め称えた。

表情こそは表に全く出さずにだが……。


「……そうか、引き続きカイルは情報を集めろ」

「畏まりました」

「タイミング良く婚姻式の招待状が届いたから、この式にアランを私の名代として参加させよう。こちらから動く手間がなくなったな。だが、10日後とは長いな……。日数をかけずにイマリを救出したいが、その辺も当たれ」




調査の結果、冒頭の二人の会話に戻るのだが思いの外、事が進まない事態にラインバードは黙り込んだ。

一週間も経つと伊万里の精神状態が不安だ。

出来るだけ早く助け出したかったが、色々動くとなれば婚姻式があるその日がチャンスかもしれない。

王子や『華嫁』も婚姻式に気を向け、牢屋にいる伊万里の事など忘れるだろう。

少々手荒に動いてもすぐにはばれないだろう。

その考えに思い立つとすぐさまカイルに伝えた。


「婚姻式の当日にイマリを助け出す。それまでに他の皇子にも私が与えた命令を全て終わらせるようもう一度伝えろ。特にサイラスに限っては例の物を遅れぬように完成させろと念を押しておけ!!」

「例の物とは?」

「それでサイラスには十分伝わる」

カイルの問いに少し口角をあげ笑むラインバードに

――――一体何を作らされてるんだ?サイラスは……

日に日にやつれている姿を見せるサイラスにカイルは少し疑問を抱いた。

サイラスが制作であんな姿を見せる時は大抵、難度の高い物を作らされている時だ。

すぐ下の弟を哀れに思いながらもカイルは自分に与えられた仕事をする事に改めて気を引き締めた。

ラインバードもそうだが、カイルも伊万里が心配だった。

実はもう少し簡単に物事が運ぶと思っていたカイルだったが、こんなに事が進まない状況にカイル自身苛立ちがあった。

例え真珠色したトカゲが黒竜のオニキスを通してラインバードから伊万里が大丈夫だと聞いていても、事態は突然変わる場合がある。

カイルはずっと心の奥底にそんな不安があった。

まさか、その不安が当たっているとはこの時のカイルは思いもしなかったのだが。





ラインバードはカイルと別れた後、竜舎にいるオニキスの住処に足を運んだ。


「まだ、そこにいるトカゲは眠っているのか?」


オニキスが横たわっている横の藁の上で目を閉じたまま微動だにしない真珠色のトカゲに目線を移しながらオニキスに声をかけた。


「グルッ」

「……そうか、目が覚めるのは婚姻式当日か」


不思議な事にオニキスはトカゲが起き上がる日を知っているかの様にラインバードに答えた。

ラインバードは何かを確信した様子で



「私の考えが正しければイマリは……」


先の事をふと考えたラインバードは親が子を心配する表情になっていた。




オニキスはそんなラインバードを静かに見つめたままだった。







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