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華嫁(はなよめ)の定義  作者: 桜幕
第1章
13/33

12話 迎え



「そろそろイマリが召喚で着いている頃か……」


エストルダ大帝国第1皇子であるアランは相変わらずガウラの森で迷子中であった。

出口に向かっていると本人は本気で思っているみたいだが。


「しかし、出口がなかなか見えないな?知らず内に俺は奥まで森の中に進んでいたのかもしれん」


スタスタとアランは道を知っているかのように歩を進めているが、方向音痴のアランは全く違う方向に進んでいた。


バサリと葉が擦れる音がした。

アランは音が聞こえた方向に顔を向けると、バサバサと翼を羽ばたかせアランに近付いてくるソレにアランは良く知っていた。


「オニキスが何故?」


皇帝であるラインバード所有の黒竜だ。

彼が此処に来たという事は、ラインバードが黒竜に命令をし、自分を迎えに来たのだろう。


――――――いつもは迎えなぞ寄越す事ないのだが、緊急事態でも発生したか?


勢いよく向かってくるオニキスにアランは出迎える様に手を広げた。


「オニキス!!久しぶりだな?」


声をかけた瞬間、オニキスはスピードを緩めゆっくり低空飛行をしながらアランに近付くと、襟ぐりを唐突に口で噛みポイッと背中に放り投げた。


「オイッ!!随分な扱いだな?俺じゃなかったら落ちていたぞ」


アランは笑いながら空中でひらりと身軽に体を回転させ、オニキスの背中に着地した。

オニキスはチラリと目線だけアランに移して、すぐ前を向くと翼を広げ上空へと上がって行った。


「グルッ」


しっかり掴まっておれ、と言わんばかりにオニキスは鳴き声を出し上空で風の気流に乗りスピードをあげていた。

向かうはエストルダ城だ。






「戻ったか」


ラインバードは気配を感じたのか席から立ち上がった。

オニキスがアランを迎えに行ってから約1時間経っていた。

竜は翼を持つ種族では飛ぶ速度が世界一速いと言われている。

それにアランを見つけるのはオニキスにとって簡単だろう。アランを必ず見つけて連れて帰って来る事にラインバードは、疑う余地などなかった。ラインバードも想像を超える程、竜とは計り知れない不思議な力を身に宿しているとラインバードもそう考えるのであった。



「父上!只今アラン戻りました。一体どの様な用件で俺にオニキスを寄越したのですか?」


ヒラリとオニキスの背中から地面に飛び降りたアランは、城に到着した途端ラインバードに聞いてきた。


ラインバードはアランを見ながらふと考えた。

――――――イマリを可愛がっているのは兄弟の中ではアランが一番だろう。

そんな考えを持ちながらもラインバードはアランに簡潔に伝えた。


「カイル達には既に話している。お前を急ぎで城に戻らせたのは、イマリが違う国に召喚されたからだ。イマリは今、ルワリスタ国にいる筈だ。そして、イマリの状況はこれから探らせる所だ」


「今……なんて?」

「イマリは今ルワリスタ国にいる。お前も知っていると思うが、あの国は今は非常に危険な状態だ」

「父上!!!俺をルワリスタ国に向かう許可をお願いします。イマリの身が心配だ!イマリは知らない土地で泣いているのではないか?絶対に俺の事を待っているはずだ!!」

「落ち着け!全くお前達兄弟はイマリの事になると冷静さをかけるんだ?特にアラン!お前は次期皇帝としての自覚はあるのか?これ位の事でいちいち動揺などしていたら将来務まらないぞ!!」

「……しかし、父上はイマリの事を心配ではないのですか?」

「イマリはとても大切だが、それ以前に私はこの国の皇帝だ。まず、やるべき事を考えるのが必要だ。そう言った事でお前達に命ずる。やみくもにルワリスタ国に突入するのではなく、情報収集をしてからどの様な手段でイマリを助けるか考えるぞ」


ラインバードはその場に全て揃っている皇子4人に指示を出した。


「ダレンはノエルと共にこれらをまとめてルワリスタ国に送る為の転移魔法の準備をするんだ」

「カイルはエストルダ大帝国の貴族の中にルワリスタ国の上位の身分の者と懇意している者に近付き、裏のルートからルワリスタ城に入れるようツテを探せ」

「アランは正式にルワリスタ国に入国できるまで待て!私が使者を送らせ申し出をする。例えば、第1皇子が外聞を広げたい為と言って適当に用件を作ってな」

「……サイラスは作って欲しい物があるので後程言おう」


続けざまにラインバードは皇子達に言い終わった所で、後ろにいた黒竜オニキスが「グワッ」と鳴き声をあげた。


「どうした?オニキス、誰かきたのか」


オニキスと会話が唯一できるラインバードが声をかけていた。

グルッと声を出し、頭を地面に近づけていた。



オニキスの頭の上にはいつの間にか手の平サイズの真珠色をしたトカゲがチョコンと座って、赤い瞳でラインバード達を見ているのであった。


「何故、トカゲがお前の頭に……これはっ!!!」


ラインバードはトカゲの背中に描かれた朱色の花模様に気付いた瞬間、驚きで声を失うのであった。




 



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